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鹿児島・メディポリスに重大問題発覚

2012年11月30日 12:35

 昨年8月、伊藤祐一郎鹿児島県知事が、平成20年の知事選で同県が補助金や貸付金を支出している「財団法人メディポリス医学研究財団」の理事長から、100万円の寄付金を受け取っていたことを報じた(参照記事⇒「伊藤鹿児島県知事に疑惑の100万円」。
 賄賂性が疑われる寄付を行っていたのは、一部上場企業「新日本科学」(本社:鹿児島市)の永田良一社長だったが、同社と永田氏が理事長をつとめる「メディポリス医学研究財団」には疑惑がつきまとう。
 鹿児島県指宿市にある同財団の陽子線がん治療施設「がん粒子線治療研究センター」への巨額な公費支出をめぐる伊藤知事と永田氏の関係、財団の中核企業である新日本科学による医薬品の前臨床試験における実験動物虐待と実験データ改ざん・・・(参照記事⇒「医薬品動物実験企業に虐待・データ改ざんの疑い浮上 」)。
 一連の問題について、「メディポリスの闇」と題して報じてきたが、メディポリス―新日本科学グループが、国際問題になりかねない業務をおこなっていることが明らかになった。詳細を配信するにあたり、これまでの報道についてまとめた。

公費支出60億円 
gennpatu 1864410473.jpg メディポリス医学研究財団への県や国からの公費支出額は60億円に上る。当初判明していた補助金や公的融資の総額52億5,955万7,481円の内訳は次の通りだった。

【放射線利用・原子力基盤技術試験研究推進交付金】
平成18年度~平成23年 → 交付金総計:28億5,955万7,481円

【県単融資】
平成20年度~平成22年度 → 貸付総額14億円

【ふるさと融資】
平成20年度~平成22年度 → 貸付総額5億円

【企業立地促進補助金】
平成24年3月に交付額決定 → 交付金額5億円

 これとは別に「放射線利用・原子力基盤技術試験研究推進交付金」を利用した平成23年度からの乳がん研究に対する補助金11億円が加わることも分かっており、全体の支出額は60億円に膨らむ。
 伊藤知事は、会見などで公費支出額を40数億円と明言していたが、いつの間にか20億円も増えた形だ(上右は会見時の資料。赤い矢印はHUNTER編集部)。

前臨床めぐり動物虐待とデータ改ざんの疑い
 メディポリスの中核企業「新日本科学」は、前臨床試験といわれる医薬品の動物実験を主業務にしているが、ここにも重大な疑惑が持ち上がっている。
 元正社員の証言によれば、動物実験が行われていた鹿児島市内の同社本社内で、実験用動物の殺処分にあたり、会社幹部が生きたビーグル犬の皮を剥いだり、いきなり首を切断するなどの行為が行われていたという。事実なら明らかな動物虐待である。

動物実験用のサル この元社員や別の同社OBからは、実験データ改ざんについての告発も飛び出している。
 例えばマウスを使った実験では、同社幹部の指示により、投与した薬物で50匹死んだとしても10匹などと過少に記入。データ改ざんを行っていたという。
 元社員らは、ピルや風邪薬など多くの医薬品前臨床に関わったとしており、実験を依頼した製薬会社名や実験の受託費もハッキリと記憶していた。こうした改ざんが常態化していたため、耐え切れなくなって辞めた社員は少なくないという。
 データ改ざんが事実なら、これまで市販された薬の信頼性が根底から揺らぐことになる。

 じつは、こうした証言を裏付けるようなことが、海外で発覚している。
 今年5月、イスラエルの裁判所が新日本科学に輸出される予定だった子ザルの出荷停止を決めたとされ、原因が新日本科学グループの「SNBL U.S.A」内での動物虐待だったことが海外の動物愛護団体によって公表されている。
 ネット上では、SNBL U.S.Aの元従業員による施設内で撮ったと思われる映像も流されており、海外での同社への評判が極めて厳しいものであることが分かる。
 同社の施設内には、実験用のサル4,000匹が飼育されているとされ(新日本科学の公表資料による)、さらなる虐待への疑念が持たれているという。実験用のサルに関しては、メディポリスの敷地内に飼育施設を設置していたことが分かっている(参照記事⇒「陽子線がん治療・保養施設に「動物実験用サル」を大量飼育」。

 動物虐待・実験データ改ざんの告発内容等について、度々新日本科学側に事実確認を求めてきたが、同社からは一切の反論や説明はなく、事実上の取材拒否となっている。

 新たな疑惑は、「メディポリス医学研究財団」の中に組み入れられている「シーピーシー治験病院」の薬の臨床試験に絡むものだ。下は同財団のホームページの一部だが(赤い矢印はHUNTER編集部)、ここに問題を示唆する記述があった。

ボランティアパネル

つづく



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