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引退の古賀誠元幹事長 後継に秘書・藤丸氏が急浮上
土壇場表明 狙いは公募回避と院政

2012年11月16日 09:30

古賀誠元幹事長 先月22日、古賀誠元自民党幹事長(衆院福岡7区)が周囲に引退を示唆していることを報じた。正式表明がないまま衆院解散を迎える形となったが、17日土曜日、大牟田市内のホテルに後援会関係者を集めて引退を告げる。
 その場で紹介されるという後継者として急浮上したのは、古賀氏の公設秘書・藤丸敏氏である。
 策士で知られる古賀氏のこと、じつは後援会の引き締めをねらった一芝居ではないかと見る向きもあったが、ここに来て藤丸氏擁立が現実味を帯びはじめた。
 土壇場になっての引退表明と後継指名。その裏には、公認候補の「公募」を避け、院政を狙う古賀氏の思惑が透けて見える。(写真は古賀氏の公式サイトから) 

引退表明は17日
 古賀氏の引退が取り沙汰されはじめたのは、自民党総裁選後、自身が率いてきた「宏池会」代表の座を譲り、一気に求心力を失ったあたりからからだった。周辺に、次期総選挙への不出馬を明言したとされるのもその頃で、複数の証言を得たHUNTERは、先月22日に『自民・古賀誠元幹事長 周囲に引退示唆』を配信していた。

 以後、自治体副市長や古賀氏の秘書、県議など後継候補の名前が浮かんでは消えるといった状況となっていたが、当の古賀氏は地元福岡7区内の細かな会合にも顔を出すなど、引退話を打ち消すかのように精力的な活動を続けていた。

 いったん沈静化していた引退話だったが、解散風が強まった今週はじめ頃から再び永田町や地元政界で騒ぎが再燃。17日には大牟田市内のホテルに後援会関係者らを集め、古賀氏自身が正式に引退を告げることが明らかとなった。
 地元紙が古賀氏引退を報じた15日には、早くも後継者と目される人物の名前が急浮上している。

表裏一体
 福岡7区の後継として確実視されているのは、古賀氏の公設秘書・藤丸敏氏。長年古賀氏を支えてきた“金庫番”と目される人物である。

 「表裏一体」。古賀元幹事長の事務所の内情を知る関係者の大半が、藤丸秘書と古賀氏の関係をそう語る。
 古賀氏にまつわる利権の交通整理―すなわち建設業界の仕切り役として知られており、様々な公共事業の陰に藤丸氏の動きがあったと証言する建設業者は少なくない。

 県南のある建設会社社長はこう語る。「藤丸秘書の力は絶大。私らのような弱小企業は鼻水も引っ掛けてもらえない。業界を集めて何かと指示を出すのは藤丸秘書で、古賀先生ご自身ではない。なんとか藤丸秘書に食い込もうとしても、会ってもらうことさえ難しい」。

ふたご.jpg 今年2月、都内で「第58回JA全国青年大会」が開催された。大会終了後の夕方、平河町のホテルで、JA福岡県青年部による県選出国会議員との意見交換会および懇親会が開催されたが、古賀誠元幹事長も秘書とともに参加していた。
 懇親会がお開きになった直後、古賀氏の秘書の指示で衆院七区内のJA青年部メンバー数十人らが向かった先は銀座。恒例行事となっているクラブ接待だったが、その一部始終をHUNTERの記者が確認していた。この時、JAのメンバーを引率したのが藤丸秘書である。(参照記事⇒『古賀誠元幹事長側にクラブ接待の疑い』) 

 その藤丸氏、最近になって選挙区入りし、古賀氏とともに会合に出席するなど後継指名を意識した動きを顕在化させていた。「藤丸後継」を、この頃から視野に入れていた県政界関係者は少なくない。

院政
 古賀氏が藤丸秘書を後継者に指名する理由について、県政界関係者は次のように解説する。
「古賀さんは『総選挙には出馬しない』と言っているだけで、政界を引退するのではない。6億円ともいわれる政治資金を保有しており、そのカネは政治塾に使うことになっている。HUNTERの先月の記事は正確だったと思うよ。ただ、あらゆる意味で影響力を残すことが必要なわけで、そのためにはもっとも近い人間を後継にする必要があった。古賀さんの息子も藤丸を推したんじゃないかな。藤丸は古賀家のすべてを知っているからね。古賀家を守れるのは藤丸だけだから。院政を敷くということだね」。

狙いは公募回避
 一方、衆院解散の時期になって引退を表明する形となった古賀氏の手法を厳しく批判する声もある。

 自民党は、引退する議員の後継者を選ぶ場合、「公募」を原則と定めている。しかし、解散が決まってからの引退表明となった福岡7区については、これから公募して候補者選定をする時間の余裕はない。
 強固な地盤を誇ってきた古賀氏だが、隠れた敵は少なくない。候補者公募となり複数の人間が名乗りをあげた場合、古賀氏の影響力排除を目論む勢力が、意外な人物を7区の公認候補に据える可能性があった。
 こうした事態を避けるため、正式な引退表明をギリギリまで引っ張った可能性は否定できない。策士と呼ばれた古賀氏なら、十分考えられることだ。

20121116_h01-02.jpg ある自民党関係者は、憤りを隠さない。
「古賀さんが仕組んだ公募回避策だ。自民党は世襲批判をかわすため、次の選挙区支部長を決める際は『公募』を原則としてきた。選考の結果、二世にバトンタッチすることになっても、公募で決めたという事実を残すことが重要。古賀さんはその原則さえ無視している。自分の影響力を残すためであることは明らかで、やり方がきたない」。

 古賀氏は、誠橋(おぼろ大橋・福岡県八女市上陽町)、誠道路(有明海沿岸道路)、誠駅(新幹線・筑後船小屋駅)と、その名を冠されるような大型公共事業を次々と実現してきた大物政治家だ。引退にあたっての身の処し方としては、いささか“せこい”と言うしかなさそうだが・・・。



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