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永田町ってどんなとこ?

2018年7月11日 09:47

8af47d3e1469444682567b07fd6704149c314769-thumb-230xauto-24414.jpg ある国会議員の事務所に、中学校の生徒たちから多くの質問が届いたというので、拝見させてもらった。
 その中から、いくつかの問いをピックアップしたところ、国会内にある銀行や国会図書館に関することなど、大人でも疑問に感じるテーマばかり。興味深い内容のものに絞り込んで、永田町の議員会館にで20年以上の勤務経験を持つ政策秘書氏に回答をお願いした。

◆国会内にある銀行は?
 りそな銀行だけです。「衆議院支店」と「参議院支店」2二店舗とATMコーナーが3カ所。利用者の9割以上が議員秘書ら国会関係者という特殊な店舗です。
 前身の旧大和銀行が虎ノ門支店の出張所として店舗を設けたのが始まりですが、なぜ大和だったのかは、「50年以上も前の話なので、細かな経緯は分からない」(衆議院支店長)とのことです。
 特別な店舗であることから、ATMの横にある両替機からはいつも新札が出てくるし、「新券専用」のATMもあります。今ではほとんどお目にかかることもない2千円札にも両替可能です。
 現金引き出しの際も、一日の限度額を超えそうなときは職員に通行証を見せて、一時的に「上限解除」もしてもらえます。至れり尽くせりの対応ですが、融資で融通が利くことはありません。

◆国会図書館ってどんなところ?
 原則18歳以上であれば誰でも閲覧できますが、本は借りられません。国会図書館は、基本的に日本で発行された全ての書籍、雑誌などを収集し保存しています。また市販流通している本だけでなく、学術論文やCD、地図なども収集・保存しており、蔵書数は2,570万点以上です。
この国会図書館が、唯一貸し出しをするのは国会議員に対してだけです。貸し出しだけでなく、要求する内容に合致した書籍や論文のページを探し出して、プリントアウトして持ってきてもらえます。また各議員事務室では、国会図書館経由のネット上で全国紙の記事を昭和初期から現在まで全てを、いつでも読むことが出来ます。

◆赤絨毯の値段は?
 国会議事堂に敷かれている「赤絨毯」の長さは、衆議院と参議院を合わせて4,600mあります。毛足が7mmほどあり、寿命は4~5年と言われています。価格は一坪あたり7万5千円ほど(入札により年度ごとに異なる)となっています。

◆秘書の待遇は?
 特別職の国家公務員としての公設秘書(政策・第一・第二)の3人は国の定められた規定があり年齢や勤務年数によって600万円から1,200万円ほどに定められています。
 一方、私設秘書には規定がありませんので、議員の政治団体か政党支部が給料を支払います。月額20万から30万くらいの額が多いと思います。ここは格差があります。
 労働基準法からすると国会議員の事務所も、秘書などのスタッフを1人以上雇っていれば、事業所として届け出なければいけません。私設秘書の場合、労災保険の加入はもちろん、現行で(1)週労働時間が20時間以上、(2)31日間以上の雇用の見込みがあれば、雇用保険に加入しなければならないのですが、法定通り行っている事務所はほとんどありません。「働き方改革」を唱えている国会議員が、一番法律を守っていないのです。

◆国会用語とは?
 国会には国会内だけに通じる不思議な言葉があります。例えば「前向きに検討する」という言葉。あれは言葉だけで、やる気がないことに使われていると思われがちですが、実際には検討し、調整しているのです。もし、前向きにも検討していない場合は、「対応は困難である」という言い方をします。以下、代表的な国会用語を紹介しましょう。

【つるし】
 法案が委員会に付託されないで放置されている状態のこと。野党が審議入りに反対する場合に「つるし」たり、「つるしをかける」ことがある。つるされた法案の付託を決めることを「つるしをおろす」という。

【あげる】
 法案を委員会や本会議で可決すること、もしくは国会で成立させること。

【お経読み】
 法案を審議する前に大臣などがその法案の内容を説明することを指す。原稿を棒読みすることからこの名がついたとされます。説明者は政府提出法は大臣、議員立法なら提案者。重要な法案はまず本会議でお経読みし、それから委員会でもお経読みを行う。重要度の低い多くの法案は委員会でのみ行う。ちなみに衆議院では本会議でのお経読みを趣旨説明、委員会でのお経読みを提案理由説明と呼び分けます。参議院では一律に趣旨説明といいます。

【禁足(きんそく)】
 国会における「禁足」とは、国会周辺に国会議員を待機させることを意味します。通常は各党の国会対策委員会から所属議員に対して「禁足」の指示をします。
禁足は、重要法案や予算案の審議や採決にあたり、全議員を確実に本会議に出席させるため、国会周辺で待機させます。具体的には、30分以内に本会議場に戻れる範囲内で待機していなくてはいけません。ときには深夜まで議員会館の事務所や国会図書館、院内の国対控室などで待機します。

【朝立ち】
 なんとなく卑猥なイメージがある言葉ですが、政治の世界ではクリーンな意味で使われます。「朝夕の出勤時間帯などの人通りの多い場所で、有権者に向けて街頭演説する」こと。政治家に「今日朝立ちしたよ」と言われても、それは決してセクハラではありません。

【寝る】
国会の本会議や委員会で寝ている国会議員という意味ではありません。野党が審議拒否をすることを指します。

【パー券】
「パーティー券」の略です。政治家が政治資金を集める目的で開催する宴会に、参加するための券を示します。

【実弾】
 弾丸のことではありません。ずはり「現金」を意味します。昭和の世界では選挙期間中に現金が配られることが多かったのですが、現在でもなくなったわけではありません。当然「公職選挙法違反」です。

【善処します】
 何もやる気はないが、そう言うと相手が怒る場合に使われます。

【粛々と】
 反対意見などは聞かずに進めていく。政策の悪い点が明らかになっても、脇目もふらず予定通りに進めていく時に使われます。

【可及的速やかに】
 全くやる気がないわけではないが、そんなに急ぐ必要はないと判断された時に使われる。「ご指摘の対策は可及的速やかに実施してまいります。」などと使われます。

【鋭意努力します】
 考え方は理解できるものの、実現不可能だと判断した場合に使われる。

【諸般の事情に鑑み】
 反対意見がいろいろ出されるので、とりあえずは慎重に進めるポーズを示さないといけない場合に使われます。「諸般の事情に鑑み、○○については引き続き協議してまいります。」など。

【誠に遺憾】
 悪い事態が起こった時、自分は悪くないが一応は謝っておいた方が批判されずに済む場合に使われる。「このような事態を招き、誠に遺憾に存じます」など。

【喫緊の課題】
 大したことではないと分かっているのに、相手が重要だと声高に主張する場合に使われる。「○○議員が言われたことは、喫緊の課題だと考えております」など。

【重く受け止める】
 悪い事態が起きた時や批難された時、真剣に耳を傾ける姿勢を示しておけば丸く収まる場合に使われる。「このような事態を招いたことを、重く受け止めています」など。

【記憶にない】
 本当はよく覚えているが、都合が悪い事実について答えなければならない時に使われる常套文句。後々、真相がバレても「あ、思い出した」と言えば済むので便利。ただし、信用は失う。

【嘘つき右翼】
 もちろん、安倍晋三さんのことを指しますが、これは一部でしか使われていません。あしからず。



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