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岩本農水副大臣の民主支部に政治資金規正法違反の疑い
領主書保存怠り 報告書記載内容に疑問

2012年8月 2日 12:40

 岩本司農林水産副大臣(参院福岡。当選2回)が代表を務める民主党支部が、政治資金規正法で義務付けられた領収書の保管を怠り、同法に抵触する事務処理を行っていた可能性が高まった。

 福岡県選挙管理委員会に対し、民主支部の少額領収書を開示請求してわかったもので、領収書代わりに選管に提出されたETCカードの使用明細の中には、当該年の前の年の請求分が混在していた。
 平成21年と22年分の政治資金収支報告書の記載内容自体が信頼性を欠く状態となっており、真相究明が求められる事態だ。

少額領収書の中にETCの利用明細
 HUNTERが福岡県選挙管理委員会に開示請求していたのは、岩本議員が代表を務める「民主党福岡県参議院選挙区第一総支部」の平成21年と22年の“旅費交通費”のうち、1万円以下の支出を証明する少額領収書だ。

 21年分が260件、22年分として211件分の少額領収書が開示されたが、その中にクレジットカード会社が発行した高速道路でのETC利用状況を示す「利用明細」が51件(枚数で80枚、金額で計80万5,056円)分含まれていた。

 総務省が公表している政治資金収支報告の作成マニュアルでは、クレジットカードの月次利用明細書は、《口座振替予定額の通知であり、領収書等に該当しません》、とした上で、クレジットカードの利用により物品を購入した場合の会計帳簿や収支報告書への記載について次のように例示している。

 (1) まず、物品を購入した時点で、当該支出相当分を支出に計上するとともに、同額を収入(その他の収入)に「金銭以外のものによる支出相当分」として計上。
 (2) その後、カード会社に支払った時点で、その分を支出に計上。

 また、記載の理由を明らかにするために、当該支出の内訳の記載にあたっては、備考欄に「クレジットカードによる購入」である旨を記載することが望ましいとしている。

 カード会社に支払った時点で、現金が支出されているが、支出の相手方がカード会社であるため、最終的に政治資金の使用目的が不明となってしまう。そのため、カードを利用した時点でいったん支出として記載しなければならないが、現金による支出ではないため、経理上は同額の収入を計上しなければならない。同額を相殺するという考え方だ。
 これは、政治資金規正法の会計帳簿や収支報告書が、《基本的に現金の流れを記載しつつ、政治資金の収支の状況を明らかにするという2つ目的を有している》(同マニュアルから引用)からに他ならない。

 一方で同マニュアルは、ETCカードを利用した場合の簡易記載について、次のように示している。

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 岩本氏側が提出したETCの利用明細書は、1万円以下の支出である「少額領収書」の一部となっており、上記の簡易記載の考え方に基づいてはいない。2年間で51件の明細書のうち、39件分は支出が1万円を超えるものだからだ。
 マニュアルに従えば、1万円を超える支出である39件分の支出は政治資金収支報告書に記載されていなければならない。

 それでは、前述したクレジットカード利用時の処理方法を取っているかというと、これまた収支報告書への記載は一切なく、杜撰な報告だったことは歴然だ。

前年の支出分が混在
 話がややこしくなるのは、平成21年分よ22年分の少額領収書の中に。それぞれ「前年」のものと見られるETC利用明細が存在したことだ。
 つまり、平成21年1月1日から12月31日までの支出の中に、平成20年に支出したと見られる利用明細のものが、同様に平成22年には21年の利用明細が入っているのである。(下はその一部。一部黒塗りと赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

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 開示された少額領収書に間違いがなければ、「民主党福岡県参議院選挙区第一総支部」の収支報告は間違いである可能性が高くなる。

 少額領収書は、政治資金収支報告書の中の「その他の支出」として一括処理されて記載されており、その金額が違えば、全体の支出金額や繰越金といった項目の金額まで事実とは異なる報告がなされたことになるのだ。

通らぬ言い訳
 少額領収書のコピーをとる時点でミスがあった可能性もあり、開示を実施した福岡県選挙管理委員会に確認を求めたところ、数日経って岩本氏側の驚くべき釈明が明らかとなる。

 県選管に対して、岩本氏側はこう説明したという。

  • カードの使用明細に記されている支払日は確かに当該年の日付だが、その日には支払っておらず、翌年になって銀行振り込みした

 この説明が通用するかというと、世の中はそう甘くない。
 ETCカードの使用明細書には、カードの名義人が明記されている。確認可能なカード利用者は、岩本氏本人とその夫人、さらにその身内とみられる3人ほどだ。個人情報保護のため黒塗りされてはいるが、カードの決済銀行や口座が記されているほか、銀行口座からの引き落とし日もしくは支払期日が明記してある。
 支払期日はいずれも当該年内の日付であり、これを数ヶ月、あるいは数十日遅らせて銀行振込みしたとは考えにくい。

 岩本氏が政治活動をする上で、数千円から百万円単位の支払いまでをクレジットカードで行っていたことが明らかとなっており、事故扱いになるような決済を続けることなどできなかったはずなのだ(参照記事→「牛丼にちゃんぽん、コーヒー代も政治資金で支払い」。岩本氏側の説明は、明らかに信憑性を欠いている。

政治資金規正法上の問題点
 岩本氏側の説明を証明し、政治資金規正法に則った収支報告とするためには、銀行振り込みを行った際の「振込み証」なり、カード会社発行の領収書が必要だ。
 しかし、県選管の問い合わせに対し、岩本氏側は振込み証が不存在であることを申し立てているという。
 廃棄したと言うつもりだろうが、そうなると領収書の保存義務違反ということになる。もっとも、ことの経過からして、初めから“なかった”と見る方が自然で、この場合は虚偽記載に問われかねない。

 いずれにしろ、岩本氏側が提出した「民主党福岡県参議院選挙区第一総支部」の収支報告書は、何らかの修正がなされるか、支出を証明する書類が提出されない限り、政治資金規正法の規定に抵触する状態が続くことになる。

監査制度の形骸化
 国会議員関係政治団体の政治資金収支は、法で定められた政治資金監査人による監査を受けているはずだ。適正な監査を受けたはずの収支報告で、こうした間違いが起こることはあり得ない。

 しかし、現実には今回の岩本氏のケースの他にも、自民党・古賀誠元幹事長陣営の政治資金処理をめぐる疑惑が明らかとなっており(参照記事→「古賀誠議員側 政治資金監査に重大問題」 )、監査制度の形骸化が懸念される事態となっている。



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