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告発隠しに官・業馴れ合いと族議員の暗躍
〈民主党―霞ヶ関〉癒着の実態

2012年6月28日 10:50

 総務省の業務委託をめぐる疑惑は、ただの入札妨害にとどまらず、必要性の低い業務を作り出して天下り先への便宜供与を続けている霞ヶ関の実態を浮き彫りにした(参照記事→「隠蔽された入札妨害」・「天下り法人税金収奪のカラクリ」 )。
 しかし、事実関係の解明を担うはずの民主党は、いったん入札を止めながら官僚の言いなりになって事業を継続させてしまう。
 増税に向かって突き進む永田町だが、約束した税金無駄遣いの根絶は掛け声だけだったということだ。
 本シリーズの最後にあたり、天下り法人「一般社団法人 テレコムサービス協会」(以下、『テレサ協』)と総務省の間に存在した入札価格漏洩問題の経緯について記しておきたい。(写真は総務省の正面玄関)

詳細な内部告発
一般社団法人 テレコムサービス協会 平成22年4月。民主党関係者や一部のメディアにテレサ協に関する内部告発が行われた。同党議員が事業仕分けの事前調査に入ることを受けてのことだったが、暴露されたテレサ協内部の話は驚くべきものだった。
 データの使いまわし、総務省との癒着、委託を受けた相談業務の税金無駄遣いの実態・・・。
 最大の問題は入札価格の漏洩が常態化しているとの指摘だったが、実際にそばで会話の内容を聞くことのできた人間にしか分からない内容である。

 告発者は当時、次のように話していた。
『民間企業しか知らなかった私が、この団体に所属してからは、驚き、唖然の連続でした。
 納税者の一人として、初めて、税金がどのように使われているのか初めて把握できましたが、税金無駄遣いの実態に怒りを感じます。
 談合は当然のこと、委託業務の金額などは官僚と協会との事前の打ち合わせで決定され、形式的に入札が行われています。事前に総務省の担当職員からテレサ協の金局長に入札価格を知らせる電話があるんです
 業務委託の金額にしても、民間が手掛ければ、半分、いえ3分の1ぐらいの予算でまかなえるのに、官僚たちは「予算があるから、この金額で」・・・。
 マスコミはこぞって、癒着や天下り、税金の無駄遣いだと大騒ぎしていますが、官僚や天下り先の団体にとっては他人事なんです。
 協会はこれまで、総務省から様々な 高額な業務委託を受けてきましたが、成果物は薄っぺらな冊子1冊です。使ったデータは使いまわしですよ。これが何千万円の仕事の成果物?民間企業ではありえないことです』。

族議員暗躍、そして隠蔽
 告発が行われた後、ある政府関係者を通して当時の原口一博総務大臣に「入札妨害」の事実があることが伝えられる。
 この後の総務省政務3役の動きは早く、関係者を呼んでの事情聴取や省内での調査が行なわれたことが分かっている。
 その結果、同年4月に入札が行なわれ、6月4日に開札を待つばかりとなっていた同省が発注する公益法人絡みの業務委託契約の"開札"をすべて止めたのである。

 問題はその後の動きだ。7月の参院選で民主党が惨敗した直後、ひとりの副大臣(同年7月に参院議員を引退後、9月まで副大臣)が、関係者に開札実施を働きかける。
 結果、内閣改造のドサクサに紛れて、止められていた天下り法人への便宜供与が再開されてしまう。調査結果も明かされぬまま、すべてが隠蔽されたのだ。

 問題の副大臣は元NTT職員。情報労連をバックに参院議員に当選していたという経歴を持つ。NTTの関連企業はテレサ協に常任理事を送り込んでいるほか、数社が会員となっている。監督官庁である総務省とのつながりも強い。
 民主党関係者の間からは次のような声が上がる。「族議員が動いたということ。原発に関して電力労組が再稼働を強要してくるのと同じ。しょせん労使一体で、自民党時代と何も変わらない。危機感を持ったテレサ協と総務省の役人が、業界出身の元副大臣に開札の実施を働きかけたとしか思えない。原口さん(元総務相)や他の政務3役は『こんな業務委託はなくしてしまえ』と言う考え方だったんだから。内閣改造後、新しい大臣や副大臣が事実関係を把握する前に片付けたということだ」。

官・業の馴れ合い
 下の文書は、この時の「インターネット上の違法・有害情報対応相談業務」の入札結果である。
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 政府調達に関する改革が進む中、さすがに一者応札はまずいと思ったらしく、民間企業にも応札させている。しかし、民間企業の応札金額とテレサ協の応札金額にはご覧の通りかなりの差がある。
 前稿で述べたとおり、現在進行形で事業を行なっているテレサ協から仕事を取ることなどはじめから不可能な話で、あくまでも"お付き合い"だったと見られる。総務省と業界団体との馴れ合いの産物だ。

これは犯罪だ! 
 結果的に見て、勇気ある告発が無駄な事業の削減につながることはなかった。民主党も見て見ぬふりを決め込んでいる。
 その証拠に、平成23年度の行政事業レビューでは「インターネット上の違法・有害情報対応相談業務」が取り上げられたが、公表されたレビューシートには告発された入札妨害の疑いについての記述も反省の弁もない(→「平成23年行政事業レビューシート」)。

 それどころか同業務の成果を自賛した上、《平成23年度公共サービス改革基本方針を踏まえ、当該施策の更なる効率的な予算執行のため、複数年度契約等の検討を含む市場化テストの実施を予定している》と宣言。単年度ごとの入札をやめ、テレサ協への無駄な公金支出をより安全な形で継続させるための道筋をつけていた。

 総務省によるテレサ協への業務委託には大きな問題がある。ましてや国の調達において入札価格を漏らすことは犯罪である。そのことを指摘する内部告発を無視し、事実関係を隠蔽した総務省や民主党は"共犯"ということになる。

 政権を担って3年間。民主党は犯罪行為を容認したあげく、国民への負担だけを押し付けるつもりらしい。



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