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鹿児島・薩摩川内産廃処分場 事業収支の杜撰さ露呈
県部長、根拠文書持たずに答弁 ― なめられた県議会

2014年4月21日 06:00

 薩摩川内市で建設が進められている産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)をめぐり、所管する県の部長が、事業収支を問うた県議会での質問に対し、根拠となる文書を保有せぬまま、答弁を行っていたことが明らかとなった。
 100億円を超える大型公共事業に対する県の杜撰な姿勢は、HUNTERが行った同県への情報公開請求の過程で判明。同県議会で質問に立った二人の県議は、「事実なら議会軽視。事実関係を調べる」などと話している。
(写真手前が鹿児島県議会棟、中央が県庁舎)

県議会質疑受け情報公開請求
 2月26日、鹿児島県議会平成26年度第一回定例会で代表質問に立った自民党の吉永守夫県議(鹿屋・垂水市区)が、県政の諸課題について質問。その中でエコパークかごしまの建設問題を取り上げ、収支見込みについて県の見解を質したのに続き、翌27日には遠嶋春日児県議(県民連合・薩摩川内市区)が、産廃搬入料金と施設運営維持費、施設運営の採算性などについて県の答弁を求めていた。

 これに対し、処分場事業を所管する県環境林務部の新川龍郎部長は、まったく同じ文章を読み上げる形で、次のように答えている。
『管理型最終処分場にかかる料金等についててございます。処理料金等については、県環境整備公社が検討を進めており、公社としては、処理料金の平均単価をトンあたり19,000円とし、埋立期間15年で60万トンの廃棄物の受け入れにより、約114億円の収入を見込み、また支出は、公社の運営費や施設の維持管理費約54億円、建設費の借入金返済約59億円、合計約113億円を見込んでおり、現時点では収支はおおむね見合うものと考えております』。

 この県側答弁に出てくる「トンあたり19,000円」の根拠は何か――議会で県議の質問に答えた以上、所管部署が数字に合致する資料を手元に置くのは当然。見解を質した県議から詳しい算出根拠を提示するよう迫られた場合、説明できなくなるからだ。もちろん、常識的に言って、根拠もなく答弁するとは考えにくい。HUNTERは3月3日、県議会での質疑を受け、鹿児島県に情報公開請求を行った。請求したのは「鹿児島県が保有するエコパークかごしま(仮称)の事業収支に関する文書」である。

見当たらない答弁根拠
 約1か月後、鹿児島県が開示したのが、次の2件、たった21枚の文書だった。

  • 「立地可能性等調査業務委託報告書」のうちの『6. 概算事業費及び事業採算性の検討』部分13ページ
  • 「公共関与による産業廃棄物管理型処分場に係る基本計画・基本設計策定業務委託報告書」のうちの『第3章 事業収支検討』部分8ページ

第3章 事業収支検討 右の写真にあるとおり、数字の大半は黒塗り。事業試算がまともに行われたかどうか、検証することはできない。鹿児島県では、説明責任を果たすため隠してはならない記述を非開示扱いにすることが常態化しており、県民の知る権利など保障されていない。

 じつはこの2件の文書は、つい最近になって作成されたものではない。県が地元住民らを圧殺してエコパークかごしまの建設工事を強行着工したのは、平成23年10月。2件の文書は、それ以前の計画段階で作成されたもので、事業費総額も、工事内容も、現状とはかけ離れている(この点については後述する)。

 すると「トンあたり19,000円」で計算された事業収支は、いつ策定されたのか?なぜ県議会質疑に見合う公文書が開示されないのか?

事業試算、開示請求後に入手???
 念のため、所管の県環境林務部 廃棄物・リサイクル対策課に確認したところ、担当職員がとんでもないことを言い出した。議会答弁の裏付けとなったのはエコパークかごしまの事業主体である「鹿児島県環境整備公社」の事業試算で、県が作成したものではない。HUNTERが情報公開請求で求めた内容は、「県が作った事業収支」であり、公社の事業試算は開示対象外と判断したのだという。つまり、“県が議会答弁で使ったのは環境整備公社の収支見込みで、県が作成したものではない。だから開示しない”という論法だ。

 しかし、HUNTERが請求したのは、前述した通り「鹿児島県が保有するエコパークかごしま(仮称)の事業収支に関する文書」。事前に行った電話でのやり取りでも、県作成であれ公社作成であれ、県議会答弁で出てきた以上、根拠となる文書を保有しているはず。従って、そのすべてが開示対象であることを明確に伝えていた。開示請求の「補正」に応じたこともない。隠ぺいやごまかしばかりの鹿児島県を相手にしている以上、やり取りの記録保存も完璧だ。強く抗議して県議会答弁での根拠の有無を追及したところ、およそ次のような展開となった。

 ―― 県議会での答弁で、新川部長は「トンあたり19,000円」と明言している。開示された文書のどこにもその数字は出てこない。部長答弁は何に基づいたものか?
 県職員:公社がやった事業収支だ。

 ―― ならば、公社が作成した「トン当たり19,000円」での事業収支があるはず。なぜ開示しないのか?
 県職員:口頭で確認した数字なので、文書がない。

 ―― 鹿児島県は、県議会での質問に対し、裏付けとなる文書やデータも持たずに答弁を行っているのか?
 県職員:文書はある。公社からもらっている。

 ―― なぜ開示された文書の中に、公社が作成した事業試算がないのか?
 県職員:(HUNTERの)開示請求の時点で、該当する文書はなかった。その後に、公社から入手した。

 ―― 県議会質疑は2月だ。その時点で新川部長は答弁の根拠となる事業試算を持っていなかったということになるが?
 県職員:口頭で確認している。

 話にならない。今度は、公社が作成した事業試算はあるが、情報公開請求が出された時点では、「なかった」と言うのである。すると、県議会質疑という重要な局面において、担当部長は「口頭」で聞いただけの内容を垂れ流したことになる。裏付けなしの答弁だ。他県はもとより、市町村議会でも起こり得ない異常な事態と言えよう。

質問した県議の話
 この事実をどう見るか――実際に議会質問を行った二人の県議に話を聞いた。

吉永守夫県議の話
 正式なコメントは、自分で確認してからということになるが、事実だとすれば、議会軽視。あってならないことだ。

遠嶋春日児県議の話
 事実とすれば失礼な話。議会軽視もはなはだしい。根拠文書がないと正確な答弁はできないはずだ。議員の質問に対し、その場だけの話をしたことになり、これを許せば不適切な先例をつくることにもつながりかねない。まるで、九電が川内原発の基準地震動を算出した時、『エイヤ』でやったというのと同じ類の話だ。もともと処分場事業は全体がいい加減。産廃の搬入予定量も、ごまかしているとしか言いようがない。事業収支については、改めて県に資料提出を求めたい。

信頼性ゼロの事業収支
 もともとエコパークかごしまの事業試算は、信頼性ゼロだ。計画段階で作成された収支予測は、都合のいい数字を並べたものだった。

 当初試算は、民間業者に丸投げされており、前述の「事業収支検討」では、景気や周辺の産廃施設の整備状況などによって変化する経営環境などを無視し、形式的な試算に終始している。

 下は、「事業収支検討」の中に記載されている産廃の処理料金ごとのケース設定だが、埋立期間を15年とし、トンあたりの平均処分料を1万7,000円、1万8,000円、2万1,000円とする3パターンと、埋立期間10年で1万8,000円/tとしたパターンのわずか4つのケースでしか収支を計算していない。埋立期間10年の場合の試算はひとつしかなく、同15年の想定でもなぜか2万円/tのケースが省かれており、まともな試算とは言い難い。

事業採算性の検討ケース


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 実際の埋立期間は15年となっているため、ケース4を除外し、ケース1から3までを注視してみよう。ケース1は、1万7,000円/t。この場合だと《毎年度損失を計上する結果》となり、《建設費にかかる長期借入金の返済財源が確保できない》ため、《毎年度借入金で運営資金を調達する》という状況になるとしている。簡単に言えば、赤字になるから税金で借金や運営資金を賄わざるを得ないということだ。

 ケース2の1万8,000円/tでようやく利益が確保され、借金の返済が可能となり、ケース3の2万1,000円/tだと高額な収入が確保できるという。しかし、この料金設定には無理がある。

 九州管内の産廃業者にあたってみると、管理型処分場におけるトンあたりの平均的な処理料金は1万2,000円程度。安いところでは1万円前後の処分場もある。高いと言われる佐賀県の公共関与型処分場「クリーンパークさが」だが、そのホームページ上に掲載されている処理料金を見ると、鹿児島との大きな違いに気付く。一部を抜粋すると次のような料金設定だ。

有機性汚泥         17,600円/t 焼却・溶融
下水汚泥(含水率85%)  17,400円/t  焼却・溶融
下水汚泥(含水率20%)  17,500円/t  焼却・溶融

無機性汚泥・建設汚泥   7,700円/t  埋立処分
その他の汚泥        16,000円/t 埋立処分
上水汚泥           16,000円/t 埋立処分

 これに対し、鹿児島県の「エコパークかごしま」(仮称)におけるコンサル業者の事業収支試算のうち、産廃の種類ごとの価格設定はこうだ。

価格設定

 佐賀では、焼却・溶融処分となる有機性汚泥が1万7,600円/t。これに対し鹿児島県の想定は3万円/tという法外な金額を設定している。佐賀で埋立処分にされる無機性汚泥7,700円/tに対し、鹿児島はその2.5倍以上の2万円/t。これほどデタラメな想定はあるまい。

 その他の公共関与型処分場における料金設定も同様だ。財団法人山口県環境保全事業団が設置し、宇部興産コンサルタント株式会社が管理運営一式を受託している山口県の公共関与型処分場「宇部港東見初広域最終処分場」は、平成20年から供用を開始しているが、現在のところ汚泥は1トンあたり8,000円となっている。九州以外だと、同じく公共関与型で土地代などが高い横浜市中区にある「南本牧廃棄物最終処分場」の処理料金を見てみると、建設汚泥なら1万3,000円/t、その他の汚泥でも1万5,500円/tとなっている。どの公共関与型と比べても、「エコパークかごしま」の業者試算と同じ水準の処理料金は見当たらない.鹿児島県の事業試算は、虚構と言っても過言ではあるまい。

問われる答弁の根拠
 最大の問題は、今年2月の県議会で担当部長が答弁した「トンあたり19,000円」が、もともとあった信頼性ゼロの事業試算の延長線上にあるとみられることだ。今回開示された「公共関与による産業廃棄物管理型処分場に係る基本計画・基本設計策定業務委託報告書」の記述には、建設費用について86.1億円とあるが、これは計画段階の数字。その後、事業費総額がまったく違うものになっていることを忘れてはならない。

 特定建設工事共同企業体(JV:「大成・植村・田島・クボタ」)との間で結んだ当初の契約金額は77億7,000万円(税込み)。しかし、エコパークかごしまの工事をめぐっては、処分場予定地を含めた周辺地域が豊富な地下水に恵まれていたことから、工事現場で湧水が多量に噴出。工事が難航し、昨年1月には予定の工期や工法では完成しないことが明らかとなって計画の大幅変更に追い込まれている。新たな処分場の完成期限は、当初予定の平成25年8月から1年以上延長されて平成26年9月。これにともなう追加工事費が18億7,920万円も積み上げられており、契約金額は96億4,920万円に膨らんでいる。着工前の事業収支が役に立つ状況ではないはずだ。「トンあたり19,000円」の根拠が問われるのは言うまでもない。

 杜撰な事業収支のせいで泣きを見るのは誰か――もちろん、このデタラメな事業を強行した伊藤祐一郎という独裁知事でもなければゼネコンでもない。赤字の補てんを押し付けられるのは、他ならぬ「鹿児島県民」。県になめられた形の議会が、黙っているとは思えないが……。



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