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問われる野党第一党の覚悟

2015年12月 3日 09:20

民主党 安保法成立までの過程で下がり続けていた安倍内閣の支持率が上昇し、不支持が支持を上回っていた状況が逆転。先月28、29の両日に実施された共同通信の世論調査では、支持率が10月の前回調査から3.5ポイント上昇し48.3%に、不支持率は40.4%という結果になった。
 原発再稼働や米軍普天間飛行場の辺野古移設強行、さらには安保法と民意を無視した政権運営が続く中、国民の所得は増えずに物価だけが上がるという最悪の事態。息苦しい現状を招いておいて「1億総活躍」はなかろうが、安倍政権の支持率は回復しているというのだから首をかしげたくもなる。
 来年夏の参院選をにらんで各党の動きが加速しているが、野党第一党の民主党に、“一強”を打ち崩すまでの展望はあるのか?

悲しい現状
 残念ながら、野党第一党の民主党には、まったく期待が持てない。同党の顔は岡田克也氏。政治経験も豊富で、まじめそうな政治家だが、面白みに欠ける。大向こうを唸らせるような発言をするわけでもなし、政局の節目で賭けに出るようなマネもできない。失礼を承知で言うなら地味。決して悪いことではないのだが、“代表が岡田氏だから民主党の候補に1票”という気にはなれない。

 幼稚な政権運営で国民の期待を裏切ったツケは重く、民主党の党勢は回復するに至っていない。おそらく、来年の参院選でも状況は同じ。多少の議席増は見込めるにしても、民主単独で安倍政権の暴走を止めるのは無理な状況だ。

 安保法の国会審議を通じて感じたことだが、同党のパフォーマンスに走る体質は相変わらず。安保法反対を唱えてはいたが、政権を追い詰めることができず、最後は議場でのプラカード戦術に走ってしまった。テレビ映りばかりを気にする民主党議員の姿勢に、げんなりさせられた国民は少なくなかったろう。当然、支持率は上がらない。

 東京都内の女性経営者は、「民主党に期待する」としながらも厳しい見方を示す。

 ―― はっきり言って、いまの民主党には魅力がない。政権奪取への意気込みも感じないし、集団的自衛権や憲法に対する考え方を巡って、見解をまとめることさえできていない。安保法反対と叫んでいたが、本気だったのか疑わしい。岡田さんは平時には良い代表かもしれないが、ケンカの大将には不向き。大阪市長のような迫力に欠ける。ただ、安倍さんに対抗できる党首候補を探そうとしても、党内に適任者がいないのも事実。民間からあっと驚くような人をスカウトするしかない。それくらい思い切ったことをやらなければ、民主党は再生できない。あと、労組依存に区切りをつけることも、真剣に考えるべきだ。

 “ごもっとも”と肯かざるを得ない。民主党の問題点を、正確につかんだコメントだ。そもそも、民主党に本気で安保法を廃止する意思があれば、政府与党による強行採決直後、一斉に議員辞職して野に下ればよかった。そうなれば全国各地で補欠選挙。安保法の是非を巡っての論争をどれだけ政権が嫌がっても、避けられない状況になっていたはずだ。民主党の議員たちには、政治家としての覚悟がない。では、そんな彼らに生き残る道はあるのか?

大阪維新を支える橋下人気
 先月行われた大阪ダブル選挙では、大阪府知事選、大阪市長選で橋下徹大阪市長が率いる政治団体「大阪維新の会」の候補者が圧勝。橋下氏の人気が衰えていないことを証明する形となった。だが、橋下人気は大阪限定。他の都道府県で維新への期待が高まっているわけではない。福岡県内のある地方都市に住む男性会社員は次のように話す。

 ―― 橋下人気は大阪だけでしょう。私の職場は福岡市にありますが、同僚との会話で安倍首相は出てくることがあっても、橋下さんや維新が話題になることなどありません。正直、都構想なんて大阪ローカルの話。九州には何の関係もない。福岡の維新の議員さんたちは大阪にくっついちゃったらしいですが、橋下さんの知名度に頼ろうという魂胆がミエミエ。誰のための政治なのか、分かっていないんじゃないですかね。

 鹿児島市内の男性公務員は、「大阪の有権者は寛大」だと笑いながら、橋下維新を突き放す。

 ―― 何回「都構想」を争点にすれば気が済むのか。府知事と大阪市長を維新で占めたからといっても、府議会、市議会で維新が過半数を有しているわけではなく、またドタバタの繰り返しだ。大阪だけの騒ぎで済めばよかったが、政党交付金を巡って仲間同士で醜い争い。結局、国政の場も混乱させている。すべてを主導しているのは橋下さん、引退の話も嘘に決まっている。こんな無責任な政治屋が率いる連中なら、鹿児島にはいらない。

 他都市では不評ばかりの橋下氏だが、選挙結果が示す通り大阪での人気は絶大。この勢いを凌駕する政治家が出てくるとは思えない。良くも悪くも、橋下氏の個性が人を引き付けてきたことは確かで、彼をを神輿に担いだ「維新」は、一定の勢力を保つだろう。選挙の勝ち負けは、組織トップの顔次第ということだ。

民主党に覚悟はあるか  
 政権支持率が高いのは、首相にしたい政治家がいないからだ。いわば消極的評価の結果。前出の女性経営者が言う通り、もし国民的人気を得られるような人物が民主党の代表に座ったら、同党の支持率は上がり、安倍政権の支持率は下落に向かうだろう。要は「顔」次第。大阪で維新が府知事選、市長選を勝ち抜いたのと同じ理屈だ。「代表が変わっても、中身が変わらなければ意味がない」という意見もあろう。しかし、思い切った策を打たねば同党の再生は不可能。党首を外部から招請して、すべてを委ねるくらいの賭けに出るしかない。民主党に、そうした芸当ができるかどうか・・・・・・。



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