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天下り法人税金収奪のカラクリ
〈民主党―霞ヶ関〉癒着の実態

2012年6月27日 10:55

 国が外部に委託する業務に関し、現役官僚が入札価格を教えればもちろん犯罪である。

 平成22年、天下り法人への業務委託をめぐって"入札妨害"との指摘を受けた総務省は、政務3役の指示でいったん開札を中止しながら数ヵ月後に再開。疑惑をうやむやにしたまま、結局は官僚の既得権益が守られていた。

 民主党と霞ヶ関の癒着を示す事実だが、入札妨害の疑いが持たれる総務省の業務委託とはどのようなものだったのか。
 同省が「一般社団法人 テレコムサービス協会」(以下、『テレサ協』)に委託している「インターネット上の違法・有害情報対応相談業務」について詳しく見ておかねばならない。
 国の業務委託で税金が垂れ流されていることを理解するには、極めて分かりやすい事例だからである。(写真は総務省がある中央合同庁舎第2号館)

巧妙な仕掛け
 テレサ協が総務省から委託を受けている「インターネット上の違法・有害情報対応相談業務」とは、テレサ協内に設置された「違法・有害情報センター」で、インターネット上の違法・有害情報に関する事業者等からの相談を受け付け、対応をアドバイスしたり関連情報を提供するというものだ。

 総務省がこの相談業務を正式に国の事業として実施するようになるのは平成21年度からだが、そこに至るまでの過程を見れば税金収奪のための巧妙な仕掛けが施されていたことが分かる。

 伏線となったのは平成19年度に総務省がテレサ協に業務委託した「インターネット上の違法・有害情報への対応状況に関する調査研究」と、翌20年度の「インターネット上の違法・有害情報への事業者による対応の実態に関する調査研究」である。(下は契約書。黒塗りはHUNTER編集部)

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 委託事業の名称をわずかに変えているが、HUNTERが総務省への情報公開請求で入手した省内の決済文書によれば、調査目的はまったく同じ。調査研究項目を少し変えただけの話で、無理やり天下り法人への仕事をひねり出した形だ。

 いずれも随意契約で、「インターネット上の違法・有害情報への対応状況に関する調査研究」(平成19年度)の契約金額は588万円。「インターネット上の違法・有害情報への事業者による対応の実態に関する調査研究」(平成20年度)には1,102万5,000円の公費が投入されている。

 このふたつの業務委託の仕様書に調査方法が指示されており《事業者による違法・有害情報への対応に関する相談窓口の設置》と明記されていた。つまりこの時点で、平成21年度から総務省の事業となった「相談センター」の前身をテレサ協内に設置させていたのである。

 これを受けたテレサ協側も、より大きな予算の獲得に向けて動きを加速させる。
 平成20年1月、テレサ協内部にプロバイダ等の事業者からの違法・有害情報に関する相談・問合せ等を受付ける「事業者相談センター」を開設。相談を受ける対象は「社団法人電気通信事業者協会」、「社団法人テレコムサービス協会」、「社団法人日本インターネットプロバイダー協会」、「社団法人日本ケーブルテレビ連盟」の総務省関連4団体のいずれかに所属する事業者だったが、同年4月から対象を拡げ、4団体に所属していないプロバイダ等の電気通信事業者からの相談・問合せも受付けはじめる。ただし、この相談受付はテレサ協の単独事業である。

 平成21年6月、総務省は相談受付業務を国の事業とすることを決め、「インターネット上の違法・有害情報対応相談業務」の入札を行なう。しかし、これまでの流れで明らかなとおり、既にテレサ協内に事業の骨格が出来上がっており、他の民間企業が応札しようにもノウハウがない状態だ。当然、「一者応札」がまかり通ってしまう。
 この年の契約金額は3,699万7,800円。平成19年度の調査委託契約と比べると6倍の税金投入額で、ここまでは筋書き通りだったということになる。総務省とテレサ協は、まんまと税金収奪に成功したわけだ。

調査研究業務の委託→業務の拡大→更なる税金投入。典型的な天下り先に対する便宜供与のカラクリである。

胡散臭い業務の実態
 ここで、「インターネット上の違法・有害情報対応相談業務」の内容を確認しておく。
 関係者によれば、実際に相談を受け付ける職員は2名で、難しい案件は弁護士に回答を求めるのだという。しかし、HUNTERが入手した同業務の見積書によれば、その他の人件費も計上されている。記述は次のようになる。

【平成21年】 センター長、副センター長、専門相談員2名、実務アドバイザー1名、法務アドバイザー2名

【平成22年】 相談員3名(内1名は統括)、実務アドバイザー1名、法務アドバイザー2名

【平成23年】 相談員3名(内1名は統括)、実務アドバイザー1名、法務アドバイザー2名

 法務アドバイザーとは弁護士のことで、欠かせない人件費であることが分かるが、奇妙なのは「実務アドバイザー」が毎年必要になることだ。
 統括役は別として、相談員2名はセンターの設立当初からの勤務であることが分かっている。しかし、仕様書によれば、相談員には「技術、制度等の専門的スキルを有し、適切なアドバイスが可能」であることを求めており、実務アドバイザーが毎年必要になるというのは明らかに無理がある。

 同仕様書では実務アドバイザーについて「専門相談員の指導。育成及び対象事業者から寄せられてくるインターネット上の違法・有害情報に関する相談への対応について助言を行うとともに、相談内容の集計・分析及びそれに基づく政策への反映について助言する」ともっともらしく述べられているが、週2日(午前9時から午後5時まで実働7時間)テレサ協に来て相談員の指導を行うことが主たる仕事だったという。
 つまり、2名の相談員は指導を受け続けなければならない程度のスキルしかなかったということだ。取材の過程でも、2人の相談員が専門的な知識を有する職に就いていたという事実は認められなかった。

 この点について、内部告発した人物は次のように話している。「2人は素人でした。何も分からないまま、相談センターの職員に採用されたんです。2人を総務省に紹介したのが実務アドバイザーを務めている女性。その人が2人に仕事を教えているのです。つまり、ある宗教みたいなグループに属する人たちが総務省とテレサ協を稼ぎの場にしているということなんです」。

 この実務アドバイザーは、ネット関連の民間企業の代表者として知られるが、週に2日の仕事で月数十万円の報酬を得ていることのほか、総務省と深いつながりがあることも分かっている。
 国の業務委託が、恣意的に作り出された可能性をうかがわせており、胡散臭さが増すばかりだ。

 最大の問題は、3,700万円もの税金を使ったこの相談業務が、金額に見合う仕事ではないことだ。告発者はこう話す。「相談といっても難しいものは弁護士に聞く。事業者を対象としているため個人的な相談は断っていたんですから件数自体が少ない。日に2~3件。相談ゼロの日も少なくなかった。テレサ協は相談件数を過大に公表しているだけ」。

 この点についてテレサ協側に確認したところ、対応した事務局長は「平均して1日5件程度は相談がある」と言う。それにしても1日5件の相談受付で月給数十万円とは呆れてものが言えない。税金詐欺と言っても過言ではない実態だ。さらに詳しく業務内容を検証してみたが、到底委託金額に見合う仕事とは思えなかった。
 次の文書は、相談センターがメールで受けた相談に関するものだが、程度が知れるというものだ。(赤い矢印はHUNTER編集部)

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つづく



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