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原子力政策への警鐘

2012年1月19日 11:10

 国の原子力政策が間違いだったことは、東京電力福島第一原子力発電所の事故が証明したはずだった。
 しかし、「脱原発」は政治舞台での掛け声だけ。原子力安全委員会や経済産業省原子力・安全保安院は、原発再稼動を進める姿勢を鮮明にしはじめた。
 
 社会保障と税の一体改革しか眼中にない野田首相は、原子力政策については役人に任せたきりで、何の発言もしていない。
 
 原発再稼動についての判断が求められるなか、原子力政策について分かりやすい説明と明確な指針が示されるべきだが、期待薄の状況だ。
(写真は川内原子力発電所)

遠のく「脱原発」
 政府が、原発は40年で廃炉という方針を打ち出しながら、一転して20年延長の特例を認めると言い出した。原子力政策の迷走ぶりを象徴するような結論だ。なぜ「20年」なのかについても詳しい説明はない。
 
 問題は、玄海1号機のように40年を間近に控えたものと運転開始からたいして経過していない原発とでは、終着点が違いすぎる点だ。
 例えば玄海4号機は1997年に運転を開始しており、延長が認められれば2057年まで稼動することになる。45年後ということだ。
 
 工事が止まっている大間原発(電源開発株式会社)などの建設が進めば、日本の原発はこれから先60~70年も動き続けることになる。「脱原発」は極めて実現性のない話となってしまう。政府は「脱原発」を明言していたはずではなかったのか。
 
 結局、誰も責任は取らないというのがこの国の原子力行政の有様なのである。

役立たず「SPEEDI」に三下り半
 原子力行政の迷走は、原子力防災指針の改定作業でも明らかとなった。
 
 原子力安全委員会の作業部会は18日、原発事故の際の住民避難に資するという目的で開発・運用されてきた緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」を、信頼性が低いため使わないとする見直し案をまとめたという。「SPEEDI」に三下り半を突きつけた形だ。
 
 120億円以上の税金をつぎ込み、毎年10億円近くの予算を計上して運用してきたシステムを「信頼性が低い」と断定したわけで、費消された血税はすべて無駄だったことになる。が、この問題でも誰かが責任を取らされるわけではない。

 国民の目の届かぬところで、無責任な原子力行政が行なわれてきたことには唖然とする思いだが、そうした事例はほかにもある。

忍び寄る「放射性廃棄物」
 クリアランスレベルとは、「人体に影響しない」とされる放射性物質の濃度のことだが、国が原子力発電所などで発生する廃棄物について、含まれる放射性物質の濃度を確認する制度がある。
 
 「クリアランス制度」と呼ばれるもので、平成17年に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)の改正(改悪だろうが)にともない、制度化された。
 
 経済産業省原子力・安全保安院のホームページには次のように紹介されている。
《放射性物質の放射能濃度が極めて低く人の健康への影響が無視できることから、放射性物質として扱わないことを「クリアランス」といい、その基準を「クリアランスレベル」といいます。「クリアランス制度」とは、原子力発電所の解体などで発生する資材等のうち、放射能濃度が極めて低いものは、法定された国の認可・確認を経て、普通の産業廃棄物として再利用、または処分することができるようにするための制度です》。

 クリアランスレベルは、年間に受ける線量を10マイクロシーベルトで区分するもの。つまりこれ以下なら、「核のごみ」を再利用したり、産廃処分場に捨てることを認めるというものである。

 使用済み核燃料の最終処分地も決まらぬまま、増え続ける「核のごみ」。全国の原子力施設から出る低レベルの放射性廃棄物は、ドラム缶に入れて青森県六ヶ所村の貯蔵施設に搬送されているが、これももうじき満杯になるとされる。
 
 クリアランス制度とは、捨て場のない放射性廃棄物に国がお墨付きを与えて、ばら撒くことを容認するような話なのだ。
 
 処分にかかる費用が安易になる分、原発事業者である電力会社が助かるのは言うまでもない。福島第一原発の事故後にこうした法改正を行なおうとしても、到底できない相談だっただろう。

 九州電力が有する玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)と川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)から出る「核のごみ」もまた、その処理で同社を悩ませていることは明らかだ。
 
 実情については昨年、「玄海原発、使用済み核燃料の危機」、「原発と産廃処分場」などで報じた。
 
 鹿児島県薩摩川内市で同県が産業廃棄物の最終処分場の建設を強行している背景には、クリアランス制度の成立があったことが見逃せない。
 川内原発の近くに管理型の処分場を作れば九電が助かるのは事実。しかも同処分場の運営は事実上鹿児島県なのだから、受け入れ拒否という可能性もない。

 「原発は安全」などという話は誰も信用しなくなったが、同様に「年間10マイクロシーベルト以下なら影響なし」とするクリアランス制度の前提にも疑義が生じている。
 生活の中で受ける線量に、余計な放射線を加えるのだから、1+0ではなく1+1。「影響がない」などと断定できるはずがないのだ。

 玄海原発や川内原発の付近にある産廃処分場だけでなく、各地にある処分場にもいずれ「核のごみ」が搬入される可能性がある。
 国民は国の「大丈夫」を信用するのだろうか・・・。



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