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野田政権の暴走 

2011年11月 9日 10:50

 成すべき事を成さず、広範な議論という民主主義のプロセスも無視してTPP交渉への参加や増税に前のめりとなる首相には、国民の声など聞こえていないようだ。

 東日本大震災の復興や、福島第一原発事故の収束が待たれるなか、将来への不安ばかりをかきたてる政治手法には、民主党内からも「国賊」との批判が上がっている。

 野田政権の暴走はどこまで続くのだろう。

是正されぬ「税金の無駄遣い」
 フランス・カンヌで行なわれたのG20(20か国・地域)首脳会議という国際外交の舞台で、消費税率を10%へと引き上げることを明言した野田首相だが、10日にはTPP交渉参加を表明するという。
 いずれの問題も、国民の賛同どころか民主党内における合意さえ取り付けておらず、米国追従の姿勢が鮮明になるばかりだ。

 そうしたなか、会計検査院は7日、平成22年度における国の歳入・歳出決算および政府関係機関の収入・支出決算についての検査結果を公表した。
 不適切であると指摘された収入・支出の総額は計4,283億8,758万円。このうち支出に関するものは508件分、計4,181億4,583万円となっている。単純に「無駄遣い」で片付けられる数字ではない。

 指摘された不適切な支出の内容については、会計検査院のホームページで確認していただきたいが、(http://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary22/index.html)各省別の金額はけた外れだ。

 財務省・2件619億1,141万円、厚生労働省・268件492億8,625万円、文部科学省・8件629億1,352万円、農林水産省・48件427億9,452万円、経済産業省・15件661億8,847万円、国土交通省・40件727億6,601万円・・・。

 会計検査院が指摘した不適切な支出は、国の行政機関などによるものだが、これまで報じてきたとおり、立法府である国会も、衆参合わせて3棟の豪華議員会館に総額約1,700億円を投じるなど、正気の沙汰とは思えない無駄遣いをしている。

 電気料金に上乗せして集められたカネを原資とする原発交付金が、原発立地自治体にばら撒かれ、そこの首長や政治家の懐を潤している現状も無駄遣いの一例である。

 HUNTERでは、福島第一原発の事故発生時、それまで120億円以上の公費を投じながらまったく役に立たなかったSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)や、がれきに阻まれ動かなかったモニタリングロボットなどの問題を指摘してきた(本サイト内で「SPEEDI」を検索)。
 しかし、政府はこうした無駄について何の反省もなく、今年度予算では性懲りもなくSPEEDIに8億円の予算をつけている(記事参照)。
 
 民主党が政権交替にあたって叫んでいた「税金の無駄遣いをなくす」という国民への約束は、果たされる気配さえない。

TPPの問題点
 TPP(環太平洋連携協定)については、先月19日にその問題点を指摘したが(記事参照)、首相の交渉参加表明を目前にして米国側の要求内容が小出しにされはじめている。農業はもとより、医療や金融などほとんどの分野で規制緩和を求めたものだが、国内での議論を活発化させるための情報開示には程遠い状況だ。

 このため、TPP交渉参加に反対する立場と賛成する立場を、それぞれ「鎖国」だの「開国」だのといった間違った言葉でくくる愚かな議論さえ横行している。

 日本の平均関税率を諸外国と比べれば、むしろ低い方に入るほどで、「守られている」とされる農産物の関税率も突出して高いというわけではない。
 農産品のなかには、米国でさえ高い関税をかけるものがあり、日本のコメなどが関税率を引き上げている現状を批判することはできない。関税に関しては、日本がすでに「開国」していることなど調べれば分かることなのだ。

 無責任な例はまだある。「TPP参加は国内農業に力をつけるチャンス」とする政治家や学者の説だ。
 国内農業は、その4割以上が中山間地で営まれており、大規模化は困難。大きな資本によって経営を集約しろということなのだろうが、そうした考え方は農家の思いや現実を無視する暴論である。
 経営第一主義では日本の原風景とも言われる「棚田」や水源涵養機能を持つ水田を守ることは難しいと見られているが、こうした点についての解決策さえ提示されていない。議論は尽くされていないのだ。

首相は「国賊」 -民主党議員の怒り
 医療や金融といった分野をはじめ、すべての国民生活に多大な悪影響が予想されていながら、詳しい説明を省いてTPP交渉参加の意思表明だけを急ぐ野田首相の狙いは、米国に認めてもらうこと。つまりはアリバイ作りに過ぎない。

 首相や、裏で指揮をとる仙谷由人氏(政策調査会長代行)の頭の中には、もとより「国益」について考える余裕などないのである。

 民主党のある国会議員は「首相や仙谷、前原(誠司。政策調査会長)、玄葉(光一郎。外務相)は国賊だ。この連中とは考え方があまりに違いすぎる。TPP、増税、どちらもアメリカの国益のために進めているだけじゃないか。民主党はアメリカの第3党ではない。離党も視野に入れるが、TPP参加を国会で批准させることは絶対に阻止する」と怒りをぶちまける。

 「どじょう」は、もっとしたたかで、粘り強く国をリードするかと思っていたが、党内さえ説得できずに混迷だけを増幅させている。
 
 税金の無駄遣いを減らすことや、霞ヶ関の改革といった本来の「公約」には見向きもせず、国民より米国を重視することに汲々とする姿勢はお粗末としか言いようがない。

 これ以上暴走を続けるようなら、早期に退陣していただくしかない。それが最も国益にかなう道のようだ。



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