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役立たず「SPEEDI」震災後に約8億円の業務委託

2011年9月 5日 11:11

委託契約書 震災復興の財源確保のため増税する方針とされる野田新内閣だが、こうしたムダな事業を見逃したまま許されることとは思えない。
 
 原発事故が発生した場合の迅速な住民避難に資することを目的に整備された緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」。
 今年3月11日の東京電力福島第一原発の事故発生に際し、当初の目的を果すことができなかったことで多くの批判を浴びてきたが、同システムを所管する文部科学省が、原発事故からわずか3日後に、同省の天下り法人に対し約8億円のSPEEDI関連業務委託の契約を起案、4月1日には委託先と契約を結んでいたことがわかった。
 委託内容は例年通りのものであることに加え、福島第一原発の事故に収束への気配さえなかった時期の契約で、改めて国の原発事故への姿勢の甘さを露呈した形だ。

役に立たなかったSPEEDI
 「SPEEDI」(スピーディ:緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)は、原子力発電所の事故による放射能放出が起きた場合に、その拡散状況を放出源情報、気象条件、地形データ等を基に予測するシステムで、文部科学省が所管している。
 
 昭和61年から運用されている同システムには、120億円以上の税金がつぎ込まれてきたが、ばく大な予算が認められた理由は、その目的が放射能の危険から「住民避難が迅速かつ的確に行われるようにする」ため、だったからにほかならない。
 
 しかし、SPEEDIのデータは、原発事故の初期段階ではなく、震災から12日後の3月23日に初めて一部を公表するにとどまった。肝心の放出源情報が得られなかったためとされる。

  同システムによるデータ公表の遅れについて、首相補佐官だった細野豪志現環境相・原発事故担当相が「予測に役に立たなかったことは、申し訳ない」と会見で謝罪している。
 つまり政府は、SPEEDIが「住民避難が迅速かつ的確に行われるようにする」という本来の目的を果たせなかったことを認めていたことになる。

天下り法人への巨額業務委託
 HUNTERは今年4月、SPEEDIに関する業務委託について『文科省「SPEEDI」巨額業務委託 「税金のムダ遣い」の証明』の見出しで問題点を報じたが、その後、文科省に対し平成23年度の同業務委託についての公文書を開示請求していた。

 先月開示された文書によれば、例年と同じ内容で2月に入札が行なわれた「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム調査」は、一者応札で文科省の天下り団体「財団法人 原子力安全技術センター」が落札。落札金額は774,186,344円(税込み)だった。
 前年度の契約金額は778,014,298円で、原発事故の中、巨額な業務委託が繰り返されていたことになる。

起案日は3月14日
決済・供覧 3月11日、東日本大震災が発生、同時に福島第一原発の事故が起きたが、文科省はそのわずか3日後の3月14日に契約締結の決済文書を起案。業務委託内容は一切変更されていないばかりか、起案時にはSPEEDIの運用そのものが文科省から原子力安全委員会に委ねられていたことがわかっている。

 4月の取材時、文科省内の原子力災害対策支援本部は「SPEEDIに関しては、『原子力安全委員会』が運用することになったので、そちらに聞いて下さい」と回答しているが、この折、文科省側は一致して原子力安全委員会にSPEEDIの運用が委ねられた時期を「12日のはず」だと言い、一方の原子力安全委員会事務局は「SPEEDIの運用を(原子力安全)委員会で行うようになったのは3月17日からのこと」と主張。政府内も混乱していたことを示す事実だ。 

 3月11日の事故発生以来、12日からはベント、水素爆発と福島第一原発の状況は悪化する一方で、3月14日の段階で通常モードでの「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム調査」が遂行できるかどうかさえわからなかったはずだ。
 にもかかわらず、業務内容に変更も加えず、4月1日には契約に至っている。

 文科省側は、問題の業務委託を契約しなければSPEEDIの運用ができなくなるとしているが、国家に危機を招いた原発事故にあたって、業務内容の再検討もせず、巨額な契約に走った同省の危機意識の欠如は救いようがない。

 じつは、問題の業務委託をめぐって、さらに大きな疑問が生じている。



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