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福岡市・人工島問題再考 求められる市長の「覚悟」

2011年3月25日 15:16

福岡市新病院建設予定地  アイランドシティのクレーン

 写真は福岡市東区にある人工島(アイランドシティ)のこども病院移転用地である。敷地の東側の端から見ると、「香椎アイランドブリッジ」から「海の中道大橋」にかけてのアイランドシティ1号線を挟んだ向こう側には、巨大なガントリークレーン(コンテナクレーン)など島内の港湾施設が見え、コンテナ向けの大型トレーラーがひっきりなしに行き交う。
 どう考えてもこの場所に「こども病院」のイメージはそぐわない。
 東日本大震災という未曾有の惨事が、本当にこの場所がこどもの命を救う病院の立地に適しているのかどうかを問いかけているいま、人工島事業そのものについても再考するべきではないか。求められているのは市政トップの覚悟だ。

人工島事業の現状
 人工島事業は、市民の批判を黙殺して進められてきた巨大公共事業だが、歴代市長が解決に苦しみ、市政停滞の大きな要因となっている。一番の問題は、土地処分が進まない、つまり売れないということだ。
 前市長時代には、計画されていた大型物量センター建設の白紙撤回や土地売買の契約解除などが相次ぎ、事業の先行きはまるで見えていない。
 全体の4分の1ほどを占める港湾関連や産業物流向けゾーンでは、現在も造成工事が進んでいるが、具体的な土地処分計画は示されていない。
 公共事業破たんのしわ寄せは、弱い立場の市民に押し付けられるのが通常で、土地が売れなければ税金投入というお定まりのコースが待っている。事実、病院用地の購入には47億円の公金が投入されている。
 こども病院や青果市場の移転は、人工島の土地を埋めるという意味合いにおいては、最良の策だったに違いない(もちろん、市側にとって)。しかし、事業に投じられてきたのが公金であり、さらには病院を利用する患者や患者家族、青果市場の関係者やその向こうの消費者の存在はかえりみられてこなかった。
 
 東日本大震災は、津波の恐ろしさをまざまざと見せつけた上、沿岸部の液状化という状況も招いている。昨日報じた千葉県浦安市の深刻な事態は、ウオーターフロントを集中して開発してきた福岡市にとって、対岸視できるものではない。
 人工島を含め、沿岸部の耐震基準、さらには津波や液状化についての対策を早急に講じるべきである。しかるのち、福岡市として、人工島事業についてのきちんとしたビジョンを市民に向かって提示してもらいたい。

つづく「こども病院」をめぐるゴタゴタ
 福岡市が移転計画を進めてきた「こども病院」にからみ、23日、またしても市側の姑息な手法が明らかとなった。平成20年5月、市は九州大学病院長に対し「こども病院」の九大病院敷地内への移転の可否について聞いたが、この折の病院長発言の一節を削除して公表していたのだ。
 病院長の発言から"新棟整備に伴う整備計画は未定だが"の一節を削除して公表、あたかも病院長発言が九大側の計画に基づくものであるかのように見せかけた可能性が高い(詳細は24日の記事で)。懲りない人たちである。
 
 こども病院をめぐっては、吉田宏前市長時代に人工島事業と病院移転についての「検証・検討」で同病院の現地建替え費用を1.5倍に水増ししたことが判明、市政を揺るがす事態となった。昨年11月の市長選挙で初当選した高島宗一郎市長が、こども病院移転計画の再検証を決め、現在、「こども病院移転計画調査委員会」(委員長・北川正恭早稲田大大学院教授)で議論が進んでいる。

 市側が姑息な手法にはしるのは、「初めに人工島ありき」という誰もが気づいている事実を覆い隠す必要があるからだろう。ただ、役人の動きは市長をはじめ市の執行部が決めた方針を守るためのもの。方針そのものに無理がある場合や方針決定の理由をごまかした時は、思い余って都合の悪い部分を隠蔽したり、事実を曲げたりといった行為が横行する。
 とくに吉田前市長時代は、平成18年の市長選で、前市長がこども病院移転や人工島事業を見直すと公約しながら、これを反故にしたことでその後の混乱を招来。関係者や市職員を苦しめることにつながった。吉田前市長が、こども病院移転方針の市民説明会など肝心のところで逃げてしまい、職員だけに負担を強いたことも見逃せない。トップの姿勢がいかに大切であるかということだ。
こども病院移転案照会

「いい加減にしろ」
 こども病院については、「もういい加減にしろ」と思っている市民が少なくないだろう。こども病院だけでなく、人工島に関する話題そのものにウンザリしているのではないか。しかし、こども病院も人工島も避けては通れない問題。求められるのは、市トップである高島市長の「覚悟」である。
 そうした意味で、あえて市長の姿勢に疑問を呈しておきたい。

 高島市長は23日、九州大学の有川節夫総長に対し、「福岡市立こども病院の九州大学病院敷地内への移転案について」とする照会文書を送った(参照)。しかし、照会内容は平成20年に九大の医師らが提案した、こども病院の九大病院敷地内への移転を含む「福岡メディカルコンプレックス(FMC)」が九大側の提案かどうかの確認と、敷地内移転の要請を受け入れる余地があると考えて良いか、というもの。
 前者については、有志の医師らが作成・提案したことが周知の事実で、いまさら聞くまでもない。さらに、"受け入れる余地があると考えてよろしいでしょうか"との問いは、幼稚としか言いようがない。
 本来、こうした事案については、市側が基本的な方針を決めた上で、慎重に協議を重ね、九大側の考え方を見定めていくべきだ。高島市長の照会文書には、"仮に"などと記されているが、これでは、九大側も扱いに困るだろう。仮定の質問に対し、九大側がわざわざ理事会を開いて協議するとは思えないのだ。市側は、九大側から断りの言質を引き出すことを狙っているとしか思えない。
 
 昨日報じた通り、市側は今月17日、これまでの九大病院長の発言内容を確認するとして、病院長から高島宗一郎市長に宛てた形の「回答」文書を作成、病院長に署名させていた。しかも、発言内容の確認文書でありながら、当初病院長が話した内容の一部を勝手に削除しており、回答文書には病院長の押印もなかった。病院長の発言内容から署名文書まで、全てが非公式だったのである。

 一連の事実からは、九大側の意思とされてきたものが、全て非公式だったことがあかるみに出たため、総長向けの照会文書と送付の事実をマスコミに公表し、新たなアリバイを作ろうとしたとの疑念が否定できない。
 こうしたその場しのぎをやっていては、決して解決にはつながらないだろう。「いい加減にしろ」と言いたい。

現地建替え、九大病院敷地内への移転 ともに可能性
 こども病院移転については、「こども病院移転計画調査委員会」で現地建替え費用の再検証が行なわれたが、あくまでも「検証・検討」で用いた工法における費用についての判断にとどめており、リファインなどその他の工法についての検討はなされていない。市側も、リファインなどその他の工法について、検討したことがないと明言している。
 もともと「検証・検討」で用いた業者の図面や見積もりは、当初から現地建替えに否定的で現地建替えシミュレーション作業そのものを拒んでいた設計業者を拝み倒して作成させたという経緯がある。現地建替えの実現を目指したものではなかった以上、「検証・検討」で用いた業者の図面や見積もりは、評価に値するものではない。現地建替えについて再検証するなら、別の工法での実現可能性を探るべきだ。
 
 さらに、九大病院敷地内への移転は、市長が「やる」と決断して国や九大側に協力を要請すれば、実現の可能性が高くなる。
 こども病院は、日本全国から患者を受け入れており、本来なら国の事業といってもおかしくない。当然、国はこども病院の運営に共同責任を負うべきなのだ。また、こども病院自体、九大病院の分院のような形で発足しており、歴史的に見ても同じ敷地内に移転することは不自然ではない。ふたつの病院が並立することは、医学的にも意義がある。
 市が九大側に対し、土地購入などの条件をきちんと提示すれば、できない相談ではないはずだ。

 述べてきたように、現段階では、現地建替えも九大病院敷地内への移転も、否定するだけの論拠がない。
 本来、意見が対立する事案については、市長自身が納得できるまで精査し、自らの判断で方向を示すべきだ。「こども病院移転計画調査委員会」は結論を出す機関ではない。他人任せではなく、最終的には高島市長自身の決断が求められる。必要なのは、市長の「覚悟」なのだ。

 市長は、早い時期にこども病院問題に終止符を打ち、人工島事業そのものの立て直しに向き合うべきだろう。



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