こども病院人工島移転にからみ、またしても福岡市の隠蔽体質が明らかとなった。
福岡市は、平成20年5月に、九州大学病院長に対し「こども病院」の同病院敷地内への移転について可否を求めたが、この折の病院長発言の一節を削除して公表していた。
23日、福岡市がHUNTERに対し開示した文書などによって明らかとなった。
削除された病院長の発言は極めて重要な部分であり、公表部分に明記されなかったことで、病院長発言が九大側の公式な計画に基づくような内容であるかのごとく見せかけていた。
さらに、今月17日、病院長に対してこれまでの発言の内容を確認するとして市側が用意した文書への署名を要求。問題の一節を入れぬまま、署名させていた。
「職員メモ」一節を削除し公表
福岡市が「こども病院移転計画調査委員会」やホームページ上で公表していた文書によれば、平成20年5月12日、こども病院院長や市保健福祉局部長ら3人が、久保千春九大病院長に、こども病院の九大病院敷地内への移転の可否について確認したとされる。
公表文書に記された病院長の「発言要旨」は、《敷地内への建設は物理的に難しい。不足している駐車場を増設する必要性があるし、数十年後の病院建替用地を見込む必要がある。新聞の取材にもその旨返事している》。
しかし、23日にHUNTERの情報公開請求に対して開示された、同日の市側と病院長とのやり取りを職員が記録した『議事メモ(九大病院 久保院長)』には、病院長の発言として次のように記されている。
《敷地内への建設は物理的に難しい。新棟整備に伴う整備計画は未定だが、不足している駐車場を増設する必要性があるし、数十年後の病院建替用地を見込む必要がある。新聞が先日取材にきたときにも、その旨返事している》。
この議事メモには、公表文にはない"新棟整備に伴う整備計画は未定だが"の一節が明記されているのだ。
この一節があるかないかで病院長発言の意味合いはガラリと変わる。一節がなければ、病院長発言は九大の計画に基づくものと読み取れるし、あれば病院長発言が、計画に基づかない個人的な予測を述べたものに過ぎないことが分かる。
市側は、あえて都合の悪いこの一節を削除し、病院長発言が九大側の計画に依拠するものだとの印象を与えようとした可能性が高い。
こども病院現地建替えを、根拠の乏しい巨額な建設費を捏造して葬り去ろうとした手法と同じだ。
九大病院長の確認文書は非公式
市側は、さらに姑息な行動に及んでいる。
「こども病院移転計画調査委員会」で九大側の意志について確認を求められた市側は今月17日、これまでの病院長の発言内容を確認するとして、病院長から高島宗一郎市長に宛てた形の「回答」文書を作成、病院長に署名させていた。
しかし、確認文書でありながら、当初病院長が話した"新棟整備に伴う正整備計画は未定だが"の文言を入れておらず、回答文書には病院長の押印もなかった。市の担当者の説明によれば、急なことだったため、病院長から署名をもらったのが九大病院以外の場所だったためとしている。病院長の発言内容から署名文書まで、全てが非公式だったことになる。
あわてる福岡市
公文書公開請求にあわてたわけではないだろうが、23日夜、福岡市は九大病院内へのこども病院移転の可否について、病院長ではなく「九大総長」に照会を求める文書を提出したとして、記者クラブ加盟各社に「FAX」で知らせた。
残念ながら、照会内容が極めて後ろ向きなものであることはいうまでもない。そのことについては稿を改める。
※赤い線、枠などの部分はHUNTER編集部で加工