2016年の鹿児島県知事選で三反園訓氏に投票した県民の多くが期待した「指宿スカイラインの無料化」。マニフェストには「実現します」と断言しておきながら、知事就任後の三反園氏は山田ICフルインター化や料金所へのETC設置を進めるなど、無料化とは逆の方向に舵を切った。
県民を騙した三反園氏が県議会答弁で使ってきたのが、「(無料化に向けて)検討中」という言葉。批判をかわすための便利な逃げ口上なのだが、県への情報公開請求で入手した資料から、「検討中」がまったくの虚構であることが分かった。知事ら県側の県議会での発言は、虚偽答弁だった疑いが濃い。
■「無料化はやる。検討中」で3年半
知事に初当選した2カ月後の2016年9月、県議会で「指宿スカイラインの無料化を実現します」というマニフェストへの取り組みについて聞かれた三反園氏は、次のように答えている。
その後、何度も指宿スカイラインの無料化を巡る実際の動きと公約の整合性を質された知事は今日までの3年半、ほぼ同じ内容の答弁を繰り返してきた。“無料化はやる。検討中”という内容だ。
「検討中」と発言したのは知事だけではない。2017年3月の県議会では県の道路建設課長が、「指宿有料道路の無料化に向けた検討を進めているところでございます」と答えていた。
こうした状況に業を煮やした鹿児島市選出の県議は、昨年6月の議会で、「知事はこれまで、無料化時期については検討中という旨の答弁に終始していますが」とのらりくらりを続けてきた知事を厳しく批判していた。
「指宿スカイラインの無料化」と反対方向に走ってきた三反園県政が、その場しのぎに使ってきたのが「検討中」だったというわけだ。
■「検討」1回、形だけ
では、本当に検討してきたのか――。鹿児島県に“指宿スカイライン無料化についての検討過程を示す文書”を開示請求した結果は、18日配信の《選挙公約「指宿スカイライン無料化」の検討内容を隠蔽》で報じた通り。出てきたのは2件分、たったの7枚の文書だった。
1件は、鹿児島県道路公社と県道路建設課による打合せの資料「指宿有料道路の無料化について」(県道路公社作成)で計5枚。うち2枚が添付資料だ。もう1件が「打合せ」の記録をまとめた形の知事レク資料「指宿有料道路の事業計画の見直しについて」である。
いずれの文書も、ほとんど黒塗り非開示。何を検討したのか分からない。ただし、文書が作成された日付から、知事や県庁の“ウソ”が明らかとなる。
■「検討中」は真っ赤なウソ
HUNTERが鹿児島県に開示を求めたのは、“指宿スカイライン無料化についての検討過程を示す文書”だ。これに対し、県が開示したのは2件分7枚の文書でしかない。つまり、2件の文書が作成された時以外に、無料化の件について「検討」された事実はないということになる。「指宿有料道路の無料化について」
知事へのレクチャーは「検討」に入らない。組織としての「検討」は、開示された「指宿有料道路の無料化について」が作成された時点だけ。当該文書の日付は、『H28.8.9』である(*下、参照。赤い書き込みはHUNTER編集部)。
一方、三反園氏が知事として初登庁したのは同年7月28日。当時の動きを追うとこうなる。
知事の初登庁から、わずか2週間で無料化について一定の方向性――現状では無理という結論――を出したということになる。しかも、当時県内部で行われたのは「打合せ」程度の話。以後一度も「検討」に関する記録は作成されていない。
念のため、県側に“指宿スカイライン無料化を検討したことを示す文書は、開示されたものが全てか”と確認したが、担当課長は2件分7枚の資料が全てだと断言する。
“県が開示した文書がこれだけなら、無料化についての検討は1回だけだ。『検討中』としてきた知事や県の県議会答弁は虚偽だ”――そう追及した記者に担当課長は「口頭で説明させてほしい」とあわてたが、情報公開で出されたものこそが役所の行為の証明。言い訳を聞くまでもない。
三反園県政が主張してきた「検討」は、虚偽だったと断定せざるを得ない。知事は、議会と県民を騙してきた責任をとるべきだ。