2016年の鹿児島県知事選で初当選した三反園訓氏は、公表したマニフェストに「指宿スカイラインの無料化を実現します」と明記していた。
政治家の公約にありがちな“目指します”という努力目標ではなく、“実現します”という強い表現。当然のことながら、指宿スカイラインを利用する多くの関係者は、選挙に勝利した三反園氏が無料化に向けて動くものと信じ込んでいた。
しかし、知事に就任した三反園氏が指宿スカイラインに関してやったことは、無料化を遠ざける結果を招く施策ばかり。議会答弁で繰り返してきた「検討」の内容を確認したところ、形だけの怪しいものであることが分かってきた。
■無料化検討、形だけ
下は、三反園氏が2016年の鹿児島県知事選挙の際に公表したマニフェストの一部。「指宿スカイラインの無料化を実現します」と明記してあり、県のホームページにも同じ記載がある。
指宿スカイラインは、全長50.9キロ。鹿児島市と指宿市を結ぶ有料道路である。2016年度中に建設費の償還が終わる予定となっていたため通行料の無料化に期待が寄せられていたが、県は伊藤祐一郎前知事時代に、2017年6月までとされていた料金徴収を2042年まで延長する方針であることを明らかにしていた。徴収期限の延長は、新たな工事に伴う償却財源確保が目的。鹿児島方面への乗り降りしかできない「ハーフIC」となっていた山田ICのフルインター化と、山田料金所へのETC設置などを行う計画だった。
伊藤前知事の4選を阻んだ三反園氏は知事就任後、無料化どころか山田ICフルインター化や山田料金所へのETC設置など、公約とは真逆の施策を恥ずかしげもなく実行。県議会で「無料化」を掲げたマニフェストとの整合性を問われる度に、ほぼ同じ答えを繰り返してきた。例えば、2016年9月には次のような答弁を行っている。
昨年6月の県議会でも、同じ内容の答弁だった。
知事就任から3年半、本気で無料化を「検討」してきたのなら、積み上げられた資料や議論の記録は結構な量になるはずだ。確認するため、鹿児島県に“指宿スカイライン無料化についての検討過程を示す文書”を開示請求していた。その結果、出てきたのが下の文書。これが全てだという。
2件の文書で、たった7枚。まず1件目が、鹿児島県道路公社と県道路建設課が行った「打合せ」の記録。計5枚で、2枚が添付資料だ。肝心な部分は全て黒塗り非開示で、何を検討したのか分からない。添付資料も、全面が黒塗りである。
2件目は、その数日後に「打合せ」の記録をまとめた形の「知事レク資料」。これも、内容がうかがえそうな部分が黒塗りになっていた。三反園県政で常態化した、「隠蔽」である。
わずかに開示された部分だけを見ても、「結論ありき」が実態。まじめに取り組んだ形跡はない。なにより、施策の決定過程を非開示にして説明責任を逃れる手法は、三反園知事の「開かれた政策決定を目指します」という公約にも反する。指宿スカイラインの無料化に関しては、何もかもが不十分、不透明ということだ。
残念な結果だったが、問題はここから。開示された黒塗り文書は、三反園氏と県の大きな“嘘”を証明するものだった。
(以下、次稿)