原中誠志福岡県議会副議長の資金管理団体「原中誠志後援会」に、政治資金規正法違反の疑いが浮上した。平成27年から28年にかけて、労働組合「自治労福岡県本部」から提供された計400万円の政治資金を、寄附ではなく政治資金パーティーの収入と偽っていた疑いだ。他に4件の収入を隠していたことも判明しており、悪質な虚偽記載が確実な状況となっている。(⇒14日既報)
事実確認を求めたHUNTERの文書取材に対し、返ってきた原中氏の回答は目を疑うような幼稚なもの。かえって疑惑の傷口を広げることになった。(写真は原中氏の事務所)
■「政治資金パーティー」と言い張る副議長
原中副議長への質問は4項目。1番目と3番目の質問は、平成27年~28年に福岡市中央区の自治労会館で開催されたことになっている3回の政治資金パーティーの収入(合計400万円)が、実際には自治労側からの「献金」だったのではないか、という内容。
2番目と3番目は、平成27年・28年の政治資金収支報告書に、会場費や飲食代といった政治資金パーティー開催事業費として記載されている4回分の支出に見合うパーティーが、いつ開かれ、どれだけの収入があったのかを問うたものだった。
1番目と3番目の質問に対する原中副議長の回答は同じ文言で、こう記されていた。
まず、自治労からの400万円は「あくまで政治資金パーティー(政治報告会)の対価」なのだという。政治資金パーティーの対価でないことを認めれば“違法な団体献金”ということになるため仕方なく強弁するしかないのだろうが、原中氏がどう頑張ってもこの主張は通用しない。
「パーティー」とは、調べるまでもなく社交のための集まり、仲間、党派といった意味を持つ言葉。「政治資金パーティー」は、“政治資金を集める目的で、対価を徴収して行われる催物”だ。対象が一人である場合に、食事をご馳走してカネをもらう行為を「政治資金パーティー」と呼べるかというと、決してそうではあるまい。
原中氏が開いたと言い張る政治資金パーティーは、自治労の建物の中で、労働組合である「自治労」だけを対象に実施された形になっており、多数人から政治資金を募ったとは言えない。一対一のカネのやり取りである以上、自治労からの400万円は「献金」とみなすのが普通だろう。
「もらったカネ」を収支報告書で「政治資金パーティーの対価」だとごまかして利を得るような手法がまかり通れば、「企業・団体献金」を禁止した政治資金規正法の規定は骨抜きにされてしまう。収入のすべてが同一団体によるパー券購入によって賄われるパーティーなど、認めてはならないのだ。それを「政治資金パーティー」だと言い張る原中氏の、政治家としての資質を疑うしかない。
■苦しい言い訳
献金を政治資金パーティーの対価だと言い張る神経には呆れたが、さらにお粗末のは、会場費を「その他の支出」に合算額として記入したという原中氏の主張だ。
「その他の支出」という項目は、支出を記載する全てのページにあるもので、支出の目的、金額、年月日、支払先を明示するよう義務付けられている“5万円”以上の出費を除く支出の合計金額だけを記入する欄だ。原中氏は、会場費分を自治労から寄附されたとみなされないようにどこかに合算したとしてごまかすつもりだろうが、現状では「その他の支出」が、どのページのものを指しているのか確認することはできない。できないというより、当該パーティー以外の事業の支出を記載したページに「合算」はできないのだ。
政治資金収支報告書に政治資金パーティーの開催事業費を記載する場合はルールがあり、「括弧内にパーティー名を記載し、個々のパーティーごとに別葉とすること」と定められている。つまり、政治資金規正法は、パーティーごとに1枚の用紙を使って開催事業費の内訳を報告するよう求めているのだ。原中氏は、どうやら当該パーティーと関係のないページに「合算」したと言いたいらしいが、これは苦しい言い訳と言うべきだろう。そもそも、原中氏側が選管に提出した収支報告書には、収入の記載が見当たらない政治資金パーティーの開催経費が「別葉」にまとめてあるのだ。記載方法を「間違えた」「単純なミス」などという逃げ道は、最初から閉ざされている。
下の報告書のページは、2015年(平成27年)3月5日に、福岡市中央区天神にある福岡国際ホールで「原中まさし県政報告会」が開かれた際の開催事業費の内訳を記したページだ(*赤い書込みと、一部記述の拡大はHUNTER編集部)。但し書きに、「括弧内にパーティー名を記載し、個々のパーティーごとに別葉とすること」と明記してあるのが分かる。
会場費とみられる支出が567,598円で、そのパーティーに関してかかった「その他の支出」が123,200円となっている。ちなみにここに出てくる“その他の支出=123,200円”は、あくまでも3月5日に開かれたパーティーにかかった支出。このページの記載内容からして、他の政治資金パーティーの費用を「合算」したとする原中氏の主張は、合理性のない単なるこじつけ、レベルの低い弥縫策と言うしかない。
■やっぱりあった「未記載」のパーティー
原中後援会が県選管に提出した政治資金収支報告書は、信頼性ゼロの紙切れだ。HUNTERは、上掲の報告書にあるような支出のページがあるにもかかわらず、「収入」の記載ページが抜け落ちた政治資金パーティーがあったことを指摘してきたが、やはりその部分は隠されていた。原中副議長は記者への回答書の中で、2015年と16年に開いた計4回のパーティーが未記載であること認めているのだ。その詳細とは……。
(以下、次稿)