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環境省取材規制 容認した記者クラブにも厳しい批判

2019年11月12日 08:50

20120810_h01-01t.jpg 環境省の取材規制を容認したNHKの記者が、記者クラブ加盟社の記者に小泉進次郎環境大臣に対する取材を自粛するよう呼びかけるメールを送っていた(参照記事⇒「環境省が報道規制 迎合したNHK記者が取材自粛呼びかけメール」。「権力の監視」という報道の使命を忘れた愚行に呆れるばかりだが、同省の申し入れに何の反応も示していない他社の面々も、同罪と言わざるを得ない。
 記者クラブ制度の問題点を追及してきたジャーナリストたちからは、今回の件について厳しい批判の声が上がっている。

■記者クラブ解散論
 札幌タイムスの記者を経て2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に取材活動を行っている小笠原淳記者は、実体験を踏まえながらこう話す。

――10年ほど前に旧民主党が政権をとった時、当時の金融担当大臣・亀井静香氏の記者会見に「記者クラブ」非加盟記者として参加したことがあります。中央省庁でいわゆる「記者会見開放」が進んでいたころ、金融庁ではクラブ向けと非クラブ向けの2つの会見が設けられていました(のち統合)。当時のクラブが会見開放を拒み続け、その閉鎖性に呆れた亀井氏が「2つの会見」実施を決めた、という経緯があったようです。

 非クラブ向けの会見は、参加資格の定めがまったくありませんでした。文字通り「誰でも」顔を出してよいというのです。業界紙や海外メディア、ウェブ媒体、フリー記者などは言うまでもなく、およそ取材実績のない“普通の人”にも門戸が開かれていました。一時は有名なお笑い芸人が参加し、フリー記者らとともに大臣と質疑応答を重ねたこともあります(詳しくは畠山理仁著『記者会見ゲリラ戦記』参照)。

 「誰でも」参加できる会見に、記者クラブ的なルールはありません。しかし、そのために現場の収拾がつかなくなったり、記者を装ったテロリストが大臣に危害を加えたり、というようなことは一度も起こりませんでした。 参加者が質疑や撮影を制限されたとか、事前に質問内容を訊かれたとかいう話も、聴いたことがありません。 何百人もの参加希望者が押し寄せて金融庁が大混乱に陥る、などということもありませんでした。この一例を示すだけで、充分かと思います。即ち、記者クラブという組織は必要ない、と。
 
 官庁が情報を提供する相手は、記者クラブではなく「国民」です。国民には等しく「知る権利」があり、それは一部の営利企業が寡占してよいものではありません。記者はたまたま、多くの忙しい国民に代わって知る権利を行使し、その手間賃を負担してくれる読者・視聴者に飯を喰わせて貰っている。そこに免許や資格のようなものが必要ないのは、当然のことです。

 取材で人に怪我をさせたくなければ、各記者がそれぞれ気をつければよろしい。大臣の飛行機の時刻を知りたければ、独力でそれを突き止めればよろしい。理不尽な取材制限には自分の言葉で抗議し、情報統制はそれこそ記事やニュースで問題にすればよろしい。「取材しないよう要請したのに、来ている社がいた」。それはその記者と役所との問題であって、同業者があれこれ言うことではないのではありませんか。

 たとえばこれを機に、環境省の記者クラブを解散してみてはどうでしょう。情報をコントロールする窓口を失った役所は一切の「要請」をできなくなり、むしろ頭を抱えることになるかもしれません。
 
 「2つの会見」から10年経っても記者クラブメディアの体質が変わっていなければ、それも無理だとは思いますが。

■老ジャーナリストの怒り
 週刊誌を中心に活動してきた東京在住の老ジャーナリストは、環境省の取材規制を報じない記者クラブ側への怒りを隠そうとしない。

――NHKの記者が送ったというメールを見て『NHKらしい』と感じると同時に、環境省の取材規制を問題視する報道が一切なかったことに愕然とした。小泉のアメリカ出張に絡んで記者団と環境省側との間にゴタゴタがあったことは聞いているが、それとこれとは別の話。記者クラブの連中は、なぜ環境省に噛みつかないのか?
 
 自分たちの取材活動が制限されるかもしれないという事態に、危機感を抱かなかったとすれば鈍感を通り越してアホだ。『取材協力や便宜は図れない』とすごまれて黙っているようなら、記者を辞めたほうがいい。どう言い訳しようと、この件を表沙汰にしなかったことは報道失格。記者クラブ制度という“ぬるま湯”に浸かっている間は、この国に本当のジャーナリズムは育たない。

 「協力や便宜」の打ち切りをチラつかせ、取材活動の自粛を要求してきた権力側に迎合し、他社の記者たちに同意を呼びかけたNHKの記者――。国民の知る権利を犯しかねない出来事であるはずなのに、記者クラブ加盟社は騒ぐことなくこの問題をスルーしている。
 権力の監視を使命とする大手メディアを、監視対象にしなければならないという厳しい現実が、ここにある。



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