「3年間、私に会おうとしなかったのは何故か?」――県知事への挑戦権を譲ってくれた恩人のこの問いかけに一切答えず、虚言を弄して県民を欺こうとする三反園訓鹿児島県知事。先月19日、鹿児島県議会の議場には、絶対に子供に見せられない最低の大人の姿があった。
質問者は、2016年の知事選で原発に関する「政策合意」を結び候補者一本化に協力した共産党の平良行雄県議会議員。同氏の追及によってあぶり出された、三反園の“嘘とごまかし”を検証する。
■「政策合意」とその経緯
問題の「政策合意」とはどのようなものだったのか、改めて実物の内容を確認しておきたい。
“約束”は5項目。最後の一文「伊藤知事の4選を阻止し、上記を実現するために、先行する三反園訓が出馬し、平良行雄は出馬を見送ることで合意した」によって、候補者一本化のための政策合意であったことは明白だが、肝となったのが“熊本地震を受けての原発の一時停止”、“原子力問題検討委員会の設置”、“廃炉を前提の原発行政”であることは言うまでもない。
では、どのような経緯でこの合意が交わされることになったのか――。当事者である平良議員は先月の県議会質問の中で、政策合意の内幕について、およそ次のように述べている。
・2016年6月に、三反園氏側の代理人を通じて県知事選の候補者一本化に向けて協議したいとの申し出があり、これに応じた。
・鹿児島市内のホテルで、三反園氏の方から政策合意の案が提示され、意見を出し合った。
・三反園氏は、「約束を守りますから、信じて下さい」と何度も言った。
・③の「原子力問題検討委員会(現・鹿児島県原子力安全・避難計画防災専門委員会)」設置の意味について三反園氏は、「廃炉にするため(に設置する)」と言った。
・三反園氏は、検討委員会に原発反対派も賛成派も入れると約束し、翌日に行った候補者一本化の記者会見でも同じことを述べた。
■立会人も三反園の嘘を厳しく批判
候補者一本化の話し合いには三反園・平良両氏のほか2名の立会人がいたのだが、その一人で2012年知事選に出馬し20万票を集めた反原発・かごしまネット事務局長の向原祥隆氏(右の写真)は、次のように語っている。
「候補者一本化までの経緯は、平良さんが県議会で明かしたとおりです。政策合意にあたって三反園さんがおっしゃったこと――『廃炉を前提』も、『私を信じて下さい』も、『反原発派も検討委員会に入れる』も、すべて本当。間違いありません。『私を信じて下さい』は3回も4回も聞きました。もうひとりの立会人も、しっかりと聞いていたことです。しかし、『廃炉を前提』が嘘だったことは明らか。『反原発派も検討委員会に入れる』という約束も反故にされました。『私を信じて下さい』も含めて、どれもが県民を騙すための言葉だったということです。」
反原発派を騙して手に入れた知事の座だったからこそ、三反園氏は政策合意の当事者である平良氏や向原氏には会えなかった。会えば、約束違反を厳しく咎められるからに他ならない。県議会で都合の悪い質問に対する答弁を、部下の職員に押し付けて逃げる姿勢そのまま。厳しい追及を避けて保身を図るのは、まさしく詐欺師・ペテン師の生き様だ。
■ペテン師知事の「嘘とごまかし」
3年ぶりに会うことになった平良県議との、県議会での直接対決は1時間。三反園は、何度聞かれても面会拒否の理由について一切答弁せず、政策合意に関する虚言を並べてごまかし続けた。答弁の冒頭に「政策合意について、であります」と断ったのは彼なりの意思表示だったようだが、長々語った政策合意についての説明は、嘘とごまかしばかりとなった。
「政策合意も踏まえながら」と言いながら、政策合意の前提であり最も需要なキーワードであるはずの「廃炉」は一度も出てこない。知事就任後、三反園は「原発に頼らない社会づくり」という言葉でごまかしてきただけで、「廃炉を目指す」という意思表示を行ったことはないのだ。それどころか、知事選直後に選挙事務所を訪れた知人に対し、原発事業者である九州電力に「悪いようにはしない」と伝えるよう頼んでいた。
「私の考え方や施策につきましては、県議会や定例記者会見、広報紙などあらゆる機会を通じて丁寧にお伝えしている」というが、知事は前述したように厳しい追及では部下の職員を盾に使い、自分は二ヤつきながらそばで見ているだけだ。「担当部署に聞け」で逃げるのが記者会見での常套手段。県庁内からも、「歴代最低」の声が上がる。
「委員の選任につきましては、人柄、これまでの経験、実績、周りの評価などを総合的に判断いたしまして、中立公正に、技術的、専門的見地から意見、助言をいただける方を選任した」というのも真っ赤な嘘。検討委の委員長が九電から2億円もの研究費をもらっていたことが明るみに出ている上、委員の人選理由を示す公文書が1枚も残されていないことが、HUNTERの県への情報公開請求によって分かっている(参照記事⇒「鹿児島県原子力専門委 人選理由説明できず」。
嘘とでっち上げを、ここまで平然と語る政治家は、そうそういない。
■「嘘つき県政」打倒の動き
面会拒否についての答弁を頑なに拒み続けた三反園。以後、「先ほどから答弁している通り」のくり返しになるのだが、政策合意に関する再質問に苛立ったのか、余計な話をして墓穴を掘っていた。
注目すべきは「この政策合意を見ればよく分かる」と「このとおり、行っている」の二つの言葉。まず、合意内容の④には《両者は知事就任後、原発を廃炉にする方向で可能な限り原発に頼らない自然再生エネルギー社会の構築に取り組んで行くことで一致した》と謳っているが、述べてきた通り、三反園は知事として「廃炉を目指す」という意思表示を一度も行っていない。三反園が嘘つきであることは、確かに「よく分かる」。
「このとおり」は“政策合意のとおり”の意味のはずだが、この合意の前提が「廃炉」であり「反原発派を委員に入れた検討委」であったことは、平良氏の県議会発言と立会人の証言で明らか。ならば三反園は、“政策合意を反故にした”ということになるだろう。
知事になった三反園は、九電に原発停止を申し入れ、特別な検査をやらせたという実績をつくることで原発にお墨付きを与えた。次いで九電のお抱え学者が仕切る検討委を設置して、県民を欺く道具に仕立てた。いずれも「政策合意」を逆利用したアリバイ作り。騙された反原発派と県民の中から、「打倒!嘘つき県政」の声が上がるのは、当然の成り行きなのである。