政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

鹿児島県原子力専門委 人選理由説明できず
文書不存在 ― 施策の正当性に重大な疑義

2017年8月 4日 08:40

鹿児島県庁・原子力発電所川内-thumb-260x164-14789.jpg 三反園訓鹿児島県知事が選挙公約に掲げ、当選後に設置した「鹿児島県原子力安全・避難計画防災専門委員会」(以下、「専門委」)の委員選定理由が、公文書の形で一切残されていないことが、鹿児島県への情報公開請求で明らかとなった。
 専門委設置に関する県内部の協議記録や、外部への意見聴取の記録も不存在。専門委を構成する12名の委員が、なぜ選ばれたのかまったく分からず、県側も説明がつかない状況だ。三反園県政の重要施策である専門委の正当性に、重大な疑義が生じている。(写真左が鹿児島県庁、右は川内原発)

■専門委は原子力村の御用組織
 専門委設置は三反園知事の選挙公約。反原発派との候補者一本化に際し、川内原発の“廃炉”を前提とした合意文書の中で≪原発に関する原子力問題検討委員会(仮称)」を県庁内に恒久的に設置し、答申された諸問題についての見解をもとに県としての対応を確立して行く≫と約束。三反園氏が公表したマニフェストにも、委員会設置を明記していた。(下がマニフェストの記述。赤いアンダーラインと囲みはHUNTER編集部)

0b61a7fa0bb61be3175c749b654952ce0184d930-thumb-550xauto-19879.png

 しかし、知事就任後、三反園氏の姿勢は一変。廃炉どころか脱原発の主張も後退し、反原発派との接触を断った上で、「反原発派の代表を原子力問題検討委員会に入れる」との約束も反故にしていた。

 結局、設置された専門委は川内1号機に続いて2号機の営業運転についても「問題なし」の結論。原発自体の安全性を議論せぬまま、原発容認のための御用組織と化している。

■不透明な委員選定過程 県側「知事が決めた」
 それでは、専門委を構成する12名の委員はどうやって選ばれたのか――。確認するため、5月23日に委員選任過程を示す文書を開示請求したが、県は意味なく開示決定期間を延長。2か月以上かかってようやく開示された資料は、委員委嘱の決裁関連書類と、ネット上で検索した100人を超える研究者に関する資料のみ。約180枚の資料の中に、委員を絞り込む際の基準や12名の委員を選任した理由を示す文書は1枚もなかった。
(*下が開示された文書の一部。委員候補に関する資料ほとんどが、ネット上で検索されたものだった。)

1-DSC04910.jpg これでは12名の委員の選定理由が分からない。所管の鹿児島県原子力安全対策課に確認したところ、「なぜ(12名)の委員を選んだのかという理由を示す文書はない」とした上で、「最終的には知事が決めた」。不透明な委員選定であったことを、県自らが認める形となった。

■名称の変更も不透明
 不可解な点はまだある。県側説明では、最終的に12名の委員の顔ぶれを決めたのは三反園知事。しかし、開示された委員委嘱の伺い文書に知事の決済印はなく、最終決裁は原子力安全対策課長が行っている。知事を交えて人選を行った証拠書類は残されておらず、説明内容を証明できない状況だ。(*下の2枚が、委員就任依頼と委嘱の決裁文書)

20170804_h01-02.jpeg

20170804_h01-03.jpeg

 さらに、昨年11月29日の段階で起案された委員就任依頼の決裁文書で「鹿児島県原子力問題検討委員会」となっていた名称が、なぜか12月19日の委員委嘱に係る決裁文書では「鹿児島県原子力安全・避難計画防災専門委員会」に。名称変更の理由を示す文書も不存在で、政策決定過程のすべてに疑問が残る形となっている。

 専門委を巡っては今年5月。報道で、専門委の座長を務める鹿児島大の宮町宏樹教授(地震学)が、今年度から3年間の予定で九電から経費約2億円の研究を受託していたことが判明。九電の利害関係者が九電の事業を検証するというお手盛りの実態に、批判が集まる状況となっていた。



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲