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得をするのは…… 福岡市・入札総合評価の改定で疑われる「便宜供与」(中)

2019年8月 9日 09:20

001--222.jpg 福岡市が、来年4月から実施する予定で改定した公共工事入札の「総合評価」。市への情報公開請求で入手した資料の検証や業界関係者への取材から見えてきたのは、特定業者への便宜供与を疑わせる改定内容だった。
 市が利用したのは、災害時に対応するため市と業界団体などの間で結ばれている「防災協定」。この協定の締結時期による加点幅を変更したため、極端に不利益をこうむる業者が出てくることになる。得をするのは誰か――。

■加点「1点」の重み
 昨日の配信記事で述べたとおり、総合評価で点数をつけられるのは、工法などの「提案項目」と企業の活動実績をみる「企業評価項目」。このうち企業評価にあたっては、市と防災活動に関する協定を締結している“団体”に所属し、災害発生時等に行政と協力体制を確立して防災活動を行う者を優位に評価することになっている。

 これまでは、協定締結から5年以上の団体に所属していれば1点を、5年未満なら0.5点が加点されてきた。該当しない場合は加点無しだ。それが今回の見直しにより加点幅が増え、締結から10年以上なら2点、5年以上10年未満なら1.5点、5年未満で0.5点が加点されるよう変更された。防災協定の締結時期により、2点もの差が生じるということだ。じつは、防災協定に関する加点は、1点といえどもたいへん大きな意味を持つのだという。

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 「1点の加点と言えど、その差は非常に大きい。2点ならさらに重大な影響力を持つ。大型物件になればなるほど、1点の価値は重くなる」――そう話すのは福岡市のゼネコン関係者だ。具体的に総合評価方式の計算式みれば、その理由がわかる。

 総合評価は、(技術評価点÷入札価格)×α=評価値で計算し、数値の最も高い企業が落札する仕組みだ。ここで、防災協定による企業評価点の加算がどのような影響を及ぼすかを明快にするため、以下の条件を設けてシミュレーションしてみる。

・競合するのは、防災協定締結団体に所属していることで「2点加点」されるA社と、加点無しのB社。
・公表の予定価格から導いた最低制限価格を5億円と仮定し、両社が同額で入札。
・技術提案点を両社共に13点の同点と仮定。
・企業評価点をA社11点、B社9点と仮定。
 この条件で加算点合計を算出するとA社は24点,B社は22点で2点差となり、各社に割り当てられる標準点100を合計した技術評価点はA社124点、B社122点でやはり2点差となる。前述の数式を用い、両社の評価値を算出すると、A社は24.8000点,B社は24.4000点となり、A社が落札となる。

 しかもA社は、最低制限価格より高い額を選択したとしても、B社に勝つことが可能。そのからくりは、こうだ。例えば、入札額を引き上げていくと5億810万円になった場合、評価値は24.4046となり、最低制限より810万円高く入札していてもA社が勝利する結果となることが分かる。この場合、加点合計ベースでの1点の重みは「810万円÷2=405万円」となる。

 複数競合での入札で落札を目指す場合は、概ね各社最低制限価格での応札するため、評価値での決定となることが多い。技術提案の点数は提案内容により違いが出るが、企業評価点は企業側で、ある程度計算が可能であることから、ここでの加点を計算できる事がいかに大きな意味を持つかはいうまでもない。市の総合評価は、“競合先との明確な差を計算できる”という状況を作り出していることになる。

■建設業界「防災協定」の実態
 HUNTERのシミュレーションにおいては1点が400万円の意味を持ったが、これが大型物件ではさらに大きな意味を持つようになるのは明らか。だからこそ、建設業者は必至で「加点」を模索するし、総合評価方式における評価点の改善指導を生業にするコンサル会社もあるほどだ。

 しかし、今回の総合評価見直しで、労せずして加点される企業が増えるのは事実。しかも、防災協定締結から10年以上の団体に所属する企業には、初めから「2点」が加点されるというのだから、防災協定を結んでから日の浅い団体に加盟している企業からも、「おかしい。不公平だ」という声が上がるのは当然だろう。

 また、総合評価の対象ランクを1億円未満の工事にまで拡大するとなると、防災協定10年以上のグループだけが増えてランクアップする状況となり、総合評価案件への取組企業が限定されてゆくと同時に血税が限定された企業の利益にのみ流れ込み続ける可能性が格段に上がることになる。

 市の担当者は「1社でも多くの企業と防災協定を結びたいという思いから、加点幅を広げた」というが、過去には防災協定の締結を市に打診しても、なかなか受け付けてもらえなかったケースも存在する(参照記事⇒「利権化した福岡市の『防災協定』」。

 簡単には結ばせなかったはずの防災協定を、拡大させていきたという福岡市の「方針転換」。そうなると、「加点」で得をしてきた業者から不満の声が上がったであろうことは容易に想像がつく。既得権を守るため、市の一部と特定業者が総合評価の「改悪」を画策した可能性は否定できない。
 
 では、今回の総合評価見直しで得をするのは誰か――。市の開示資料には、防災協定を結んでいる建設業界の団体が明記されていた。協定の締結年によって、加点にかなりの差がつくことが分かる。

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 複数の土木関連団体が、早い時期から防災協定を結んでいたのに対し、建築の業者団体は一つだけ。じつはここに、疑惑の核心があると言っても過言ではない。
 総合評価改定の問題点について、さらに検証を進めていく。
                                                            (つづく)



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