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【参院選福岡】 国民民主の候補者擁立をあざ笑う“情勢調査”の数字

2019年6月 4日 08:30

DSCN0944.JPG 3日、福岡市を訪れた国民民主党の平野博文幹事長が、参院福岡選挙区(定数6・改選数3)に党本部主導で独自候補を擁立する方針であることを表明。先月の常任幹事会で候補擁立の見送りを決めた同党県連に、本部が頭ごなしに選挙戦を強制する形となった。
 立憲民主党は現職の野田国義参院議員を公認しており、「連合」という共通の支持母体を持つ旧民進党系の二つの政党が1議席を争う事態。しかし、国民民主の候補者擁立が確実に死票を増やすだけの愚行であることを示す、驚きの数字がある。

■県連無視して党本部が候補擁立
 対決か共闘かで揺れてきた旧民進党系政党の参院選対応。国民民主党福岡県連の候補者擁立見送りで決着したかにみえたが、有権者無視の同党本部にとって、地元の事情など関係なかった。

 2日に福岡入りした国民民主の平野博文幹事長は、同党県連幹部に対し、参院選福岡選挙区での候補擁立を厳命。3日には連合福岡を訪ね、党本部主導で独自候補を擁立する方針であることを伝え、協力を要請した。元裁判官で福岡県弁護士会に所属する女性弁護士を軸に、候補者調整を行うものとみられている。

 自民、公明を喜ばす野党の分裂劇。責任は、旧民進党系の支持母体である労組にもある。連合福岡は先月30日、立憲民主党現職の野田氏を推薦したが、原発や憲法で立憲の政策と開きがある電力など旧同盟系労組の一部は、野田氏支援に消極的。表で野党の結集を呼びかけながら、裏で国民民主に独自候補擁立を働きかけていたことが分かっている。
 
■チキンレースの末……
 これまで報じてきたとおり、福岡で旧民進党系の泥仕合を招いたのは、「静岡選挙区」を巡る両党の対立だ(参照記事⇒《立憲VS国民民主 「福岡・静岡」参院選候補擁立チキンレースの舞台裏》。国民民主党の榛葉賀津也参議院幹事長(当選3回)が改選を迎える静岡選挙区に、立憲が候補者擁立を強行する姿勢をみせたことが影響し、同じ複数区である福岡選挙区での候補者調整が難航していた。立憲は先月28日、徳川家19代目の徳川家広氏を公認。態度を硬化させた国民民主が、報復の意味で福岡選挙区での候補擁立に走った可能性が高い。

 榛葉氏といえば、昨年野田氏を「1億円」で同党に来るよう説得し、あっさり袖にされた人物。その時から複数区の「静岡・福岡」がセットになり、どちらかが妥協するのを待つ「チキンレース」(国民民主関係者)が展開される事態となっていた。まさに有権者不在の、不毛の戦い。国民民主の小沢一郎総合選挙対策本部長相談役は「野党一本化」の必要性を主張しているが、同党は福岡で正反対のことをやっている。

■国民民主「2ポイント」の現実
 旧民進党から派生した政党同士がいがみ合うのは勝手だが、福岡で国民民主が候補者を擁立した場合、一定の「反安倍政権票」が死票になる可能性が高い。「知名度」と「期待度」の差が、選挙結果に直結するからだ。

 一昨年から県内全域で街頭活動を行い、今月2日に福岡・北九州の両政令市で事務所開きを行うなど、野田氏陣営の選挙対策は順調。一方、国民側の候補予定者として名前が挙がる女性弁護士は、テレビ出演の経験はあるものの無名に近い存在である。

 公示の夏まで1か月ほどしかない時期での知名度不足。加えて、支持率0~1%台に沈んだままの国民民主の不人気――。ある政党が5月に行った情勢調査(サンプル数1万。国民民主の候補予定者は実名)の結果は、現状をそのままとらえていた。

参院選.png

 国民民主党の本部もこの数字は知っているはず。同党候補の「2ポイント」は、各種世論調査の結果とも符合する数字だ。それでも福岡選挙区で候補者を擁立するという平野幹事長が、理由として挙げたのが「比例票の底上げ」だという。本当だろうか?
                                                         (つづく)



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