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買収交渉頓挫の“馬毛島” 「別案」は原発汚染土

2019年5月13日 09:15

86e82da54f7dbdbf8c352439111fd1f806231f2f-thumb-230xauto-25808.jpg 今月7日、安倍政権が米空母艦載機の陸上離着陸訓練(タッチアンドゴー)に利用することを決めた「馬毛島」(鹿児島県西之表市)を巡る動きが急展開、島の大半を所有するタストン・エアポート社が防衛省に対し、いったん仮契約まで進んでいた売却交渉の打ち切りを通告した。
 交渉決裂の原因は、防衛省側が今年2月にタストン社の代表に復帰した同社の親会社・立石建設の立石勲会長を黙殺し、会談の呼びかけにも応じようとしなかったため。タストン社としては、借入金返済を急ぐため、土地利用について「別案」を検討せざるを得なくなったのだという。同社が検討を開始した「別案」とは……。

■策に溺れた防衛省
 関係者の話によると、7日付けとされる交渉打ち切りの通告書は、タストン社側の弁護士が作成。防衛省の所管局宛てに送付されたという。

 通告文の中で同社側は、「防衛省から縁を切られたものと受け止め、売却する方針を断念」と明記。「別の案」を選択するとしており、同社関係者も、従来の売却方針以外の道を検討していることを認めている。1月に結ばれた「160億円」の仮契約が反故にされる形となるが、原因を作ったのは策に溺れた防衛省であり、同省にタストン社を責める資格はない。

 防衛省とタストン社が、馬毛島の買収交渉に入ることを合意したのは2016年11月。2011年の2プラス2=日米安全保障委員会における共同文書に、硫黄島で行っている陸上離着陸訓練の移転先として同島が明記され、トランプ政権になってから共同文書の履行を迫られたからだ。

 合意を受けてタストン社側が防衛省に提出した土地鑑定書の価格は「462億円」だったが、防衛省が提示した買収額は十分の一以下の44億6,000万円。防衛省は歩み寄るどころか、裏でタストン社が破産するよう複数の債権者を煽り、昨年秋には立石勲・立石建設会長をタストン社の代表から追放させていた。同社を破綻させ、破産管財人から島を安く手に入れる計画だったという。

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 新代表となったのは立石氏の子息。今年1月には、防衛省に操られるまま160億円で仮契約を結んだが、タストン社の債権額は240億円。土地売却に伴う税金を差し引くと110億円余りしか残らないという「話にならない契約」(立石建設関係者)に、立石氏はもとより、貸し倒れが予想される状況となった債権者も納得せず、今年2月の代表再交代――立石氏の再登板となっていた。

 逆に追い詰められる格好となったのは、立石氏排除を画策してきた防衛省。一部の債権者を使ってタストン社を揺さぶるなど謀略行為を続行して、「交渉再開のため会いたい」というタストン社側の申し入れを再三無視していた。タストン社側が交渉打ち切りを通告するまでもなく、事実上の交渉決裂状態になっていたということだ。

 7日付けの文書は、策に溺れ、不誠実な対応に終始してきた防衛省に対するタストン社の最後通牒。交渉継続の道は残されているが、「それは防衛省側の態度次第。島を守ってきたのは立石氏であり、きちんと同氏と向き合うかどうかだ」(立石建設関係者)という。実際、馬毛島を別の用途に利用したいとする関係者がいることから、同社がいう「別案」は単なる脅し文句ではないとみられている。それでは「別案」とは何か――。

■「汚染土処分」に現実味
 昨年5月、HUNTERは馬毛島を巡る動きの一つとして、同島に高レベル放射性廃棄物(核ゴミ)の処分場を誘致しようとする動きがあることを報じた(「鹿児島県の馬毛島に核ゴミ処分場誘致の動き」)。馬毛島は、立石建設が維持管理のため職員を常駐させてきたが事実上の無人島。関係自治体や漁協が賛成すれば、核ゴミ処分場の建設が容易だからだ。防衛省との売却交渉が進んだことから立ち消えになっていた処分場計画だったが、ここに来て浮上しているのは、島に「汚染土」を持ち込む話だという。

 現在、国や福島県を悩ませているのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って発生した「汚染土」の存在。同県では除染後の汚染土が約1,400万立方メートル発生しているとされ、環境省の試算によれば、6町村にある「特定復興再生拠点区域」(帰宅困難区域)の除染で、さらに約200万立方メートルの汚染土が増える計算だ。国は、放射能濃度が1キログラム当たり8,000ベクレル以下の汚染土を道路整備などに再利用する方針を決めているが、実際に利用される見通しは立っていない。

 「行き場のない汚染土を、馬毛島に持ち込めないか」――。現在、タストン社が受けているのは、国が「問題なし」とする8,000ベクレル以下の汚染土処持ち込みの提案。タストン社に利益が出るのはもちろん、周辺自治体への巨額な交付金や漁協への補償が見込めることから、一部債権者も「検討を進めるべきだ」という姿勢だという。

 前述したとおり、馬毛島は米国との約束に基づく「防衛の島」。しかし、原発汚染土の持ち込みが現実になれば、米軍も自衛隊も利用を拒否する可能性が高くなる。民間企業を潰しにかけ、土地を取り上げようとして失敗した安倍政権――。首相は、ご主人様のトランプにどう説明するのだろう。

 

 



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