福岡市が“政策参与”として採用した元厚生官僚に支払っていた報酬は、1時間あたり18,000円で計算されたものだった(⇒「県知事候補は時給18,000円 元官僚に弁護士報酬を超える額 」)。
超高額な時給に市役所内部からも驚きの声が上がったが、問題はむしろ参与への報酬を算出するため市が適用した「講師謝礼基準」との整合性。政策参与への報酬の算出根拠を、改めて検証した。(写真は福岡市役所)
■実は乏しいコンサル会社での経験
改めて、福岡市が定めた「講師謝礼基準」を見てみたい。
まず、元厚生官僚で福岡県知事選挙への出馬を予定している武内和久氏への支出額だが、時給「18,000円」はコンサルタントのランクAにあたる額。講師謝礼基準の最高額だ。コンサルのランクAは「高度な指導技術を持ち、経験豊富で全国規模のコンサルタント業務を行っている者」。しかし、同氏がこのランクAにあたるとは思えない。彼の公式サイトにあるコンサル会社での勤務経験といえば、次の二つしかないからだ。
2015年 アクセンチュア株式会社 ヘルスケア部門統括
2017年 マッキンゼー・アンド・カンパニー シニア・アドバイザー
しかも、武内氏自身が公式サイトの中で述べているのは、コンサルの実績ではなく『民間企業での苦い、苦い経験』。その画面が下だ。
「最初に私に与えられた仕事は、受付の後ろで山のような郵便物の仕分けをし、ほかの社員の夜食弁当の注文取りに明け暮れる日々」「それまで中央官僚として培ってきた自信、いえ、うぬぼれが粉々にされた瞬間」「恐ろしいスピードで専門用語が飛び交うミーティングに、途方に暮れる日々。予算を配ることはできても、お金を生むことを知らなかった自分の視野の狭さを恥じました」……。要は、新入社員と同じ状況だったということだ。
武内氏は、2018年4月からKBC九州朝日放送のコメンテーターに就任しているため、マッキンゼーに在籍していた期間はせいぜい1年。18,000円もの時給をもらう「高度な指導技術を持ち、経験豊富で全国規模のコンサルタント業務を行っている者」だったかどうか疑問だ。
■疑問から“疑惑”へ
疑問を“疑惑”に変えるのが、武内氏が福岡市から政策参与の委嘱を受けた時期。市への情報公開請求で入手した「辞令」によれば、2017年の5月となっており、これはマッキンゼーに入社して間もない頃だろう。当時は、まさに武内氏自身が振り返った「受付の後ろで山のような郵便物の仕分けをし、ほかの社員の夜食弁当の注文取りに明け暮れる日々」が現状。18,000円もの時給をもらう最高ランクのコンサルであるはずがない。
おかしなことは、まだある。2017年5月に武内氏を政策参与に選任した折の決裁文書には、「理由及び主な業務」として次のように記されている。
『20年を超える厚生労働省での経験により医療・福祉・年金・雇用に係る政策企画立案に精通するとともに、民間コンサルティングにおいて健康・医療・福祉分野での実績もあるところから、健康先進都市の実践的・効果的な推進に向けた政策立案等について情報の提供や助言等を受けるもの』
だが、コンサルとしての実績については前述したとおりで、まだ新人研修と言うべき段階。“実務”をこなしていた様子はうかがえない。これでは、コンサルのランクで最低のC(時給12,000円)にも該当しないだろう。
次に、厚生官僚としての『20年を超える経験』についてだが、福岡市の「講師謝礼基準」に従えば、“課長”になったことのない武内氏程度の経歴しかない官僚に支払われるのは、時給にして7,700円が最高。前掲の「講師謝礼基準」の一番下、「中央官庁」のくくり部分を見れば瞭然である。
福岡市が、基準を満たさない相手に過剰な支出をしていたのは確か。同氏への特別扱いの裏に、何かがあったと考えるのが普通だろう。これは、統一地方選後の市議会で解明されるべき“疑惑”なのである。