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知事選絡みで批判続出 福岡市「講師謝礼基準」の非常識 

2019年3月25日 09:50

91b05f379e30189855b71448b89462db0ff1adea-thumb-245xauto-21547 (1).jpg 最近、HUNTERに寄せられている読者メールで最も厳しい批判の対象となっているのが、福岡市が外部講師に払っているという謝礼の金額。知事選絡みで注目を集める形になったのだが、税金を原資としながら最低クラスの時給が3,800円で最高額は18,000円というのだから「納得できない」(50代のパート主婦)、「非常識」(40代男性サラリーマン)という市民の声にもうなずける。(参照記事→「県知事候補は時給18,000円」)
 改めて、福岡市が定めている「講師謝礼基準」について検証した。(写真は福岡市役所)

■税金で大盤振る舞い
 下が、福岡市が独自に定めているという問題の「講師謝礼基準」。時給の最低額は3,800円で、最高額が18,000円というのだから、お叱りを受けても仕方がないだろう。一般社会のパートやアルバイトは、数百円台の時給が大半。福岡県の最低賃金は814円であり、最も高い東京都でも985円に過ぎないのだ。

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 驚くのはまだ早い。注意書きにあるとおり、参加人員が150人以上の講演会等の場合は、謝礼基準の1.5倍――つまり最高額18,000円のコンサルAだと27,000円を、課長級以上の役職に就いている霞が関官僚は13,500円をもらうことになっている。大盤振る舞いの原資が、税金であることを忘れているとしか思えない。

■度を越えたコンサルへの謝礼 
 福岡市が主催する何らかの会議や講演会などで「講師」になるのだから、呼ばれた人物が特定分野のエキスパートであることは確かだろう。しかし、重ねて述べるが原資は税金。支払う側も謝礼を受ける側も、公的な仕事であることを認識して、やり取りをすべきである。ただ、それ以前の問題として、市の基準額自体がおかしいということを指摘しておきたい。特に、コンサルタントへの謝礼の額は大いに疑問だ。

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 ランクAのコンサルに対する時給は18,000円。超難関の司法試験を突破して国家資格を得た弁護士の時給「15,400円」より高いというのだから驚きである。「相当高度な指導技術を持ち、主に地域を中心としたコンサルタント業務を行っている」程度のランクBの時給が、弁護士と同じというのもおかしな話だ。さらに、「指導・経験年数が短く、比較的限定された地域でのコンサルタント業務を行っている者」(ランクC)に、12,000円もの時給を支払うということについては、もっと納得がいかない。そもそも、A、B、Cというランクを決定するのは市の職員。査定が甘ければ、どうにでもできてしまう可能性がある。

 分かりやすい例が、福岡知事選に立候補している元厚生官僚への人件費だ。福岡市から「政策参与」という異例の肩書をもらっていた同氏への時給は18,000円だったが、市は勝手に「講師謝礼基準」を適用し、コンサル会社での経験が浅いにもかかわらずランクAの最高額をあてはめていた。市への情報公開請求で入手した資料によれば、政策参与のやった業務は、高島宗一郎市長の出前講演を見学したのが1回、あとは副市長との“協議”だけだった。元厚生官僚殿のコンサル会社勤務は、ほんの数年。「高度な指導技術を持ち、経験豊富で全国規模のコンサルタント業務を行っている者」であるはずがなく、“過剰な便宜供与”ととられても仕方がないケースと言える。

■「霞が関」は特別扱い
 おかしな時給の基準は他にも――。例えば、国家資格を持った「医師」と、何の資格も持たない「記者」が同額の7,700円であったり、高校や専門学校の教師が6,000円であるのに、小・中学校の教師が3,800円だったりと、不公平が目につく。市の担当課に基準の根拠を訊ねたが、「ずっとこれでやってますからねぇ」と困惑するばかりで、納得できる説明は出てこなかった。

 一番の問題は、『課長以上9,000円 課長補佐7,700円 係長・主査6,000円 主任以下3,800円 下記以外の官公庁3,800円』という役人に対する時給である。公務員は、給与以外の報酬をもらうことはできないはずなのだ。福岡市に確認を求めると、当該公務員が「年休をとって、営利企業従事許可を受け、職務と関係のない形」ならOKなのだという。

 国家公務員法は、《職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する》(104条)と規定しており、条文中の内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可というのが市側説明にある「営利企業従事許可」だ。地方公務員法にも同様の規定がある。つまり、所管事項と関係のない事案についての講師を務めるために年休をとり、営利企業従事許可をもらった役人は謝礼をもらえるということ。しかし、この解釈と福岡市の「講師謝礼基準」には整合性がない。

 営利企業従事を禁止する国家公務員法の例外として想定されるのは、当該官僚が所管事項に関係のない“個人的な趣味”などについての問題で講師を務める場合などだろう。しかし、それなら当該講師は「私人」。『課長以上9,000円 課長補佐7,700円 係長・主査6,000円 主任以下3,800円』という具合に、官庁の職階で区分して時給に差をつけること自体が間違いということになる。

 それにしても、この謝礼基準で思い知らされるのが中央官庁に弱い地方自治体の実態。霞が関の役人は『中央官庁』の区分で4段階に分けているのに、地方自治体の役人は『下記以外の官公庁』として一律3,800円の時給に過ぎない。この点も含めて、福岡市の謝礼基準は、全体を見直すべきだろう。

  



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