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イージスアショアは必要か
「結論ありき」で進む、国防論議

2018年8月 8日 07:00

0718_bouei-thumb-270xauto-25028.jpg 防衛省が地上配備型の迎撃システム「イージスアショア」の導入費について、当初の見通しの倍以上である2基4,000億円以上を算定していることが伝えられている。増額の根拠については、米ロッキード・マーチン社製のレーダーなどを搭載することで1基1,340億円となり、さらに施設整備など導入費を計上したことが理由だという。
 西日本豪雨など、続発する災害の対応に予算を割くべきだとする声も多いなか、この大盤振る舞いは妥当なのか――。

■大甘だった、イージスアショア導入費
 イージスアショアは、簡単に言えばイージス艦のミサイル防衛機能を陸上型施設にしたもの。すでに配備されているパトリオットPAC3はもともと航空機の撃墜用であることや、洋上のイージス艦で撃ち漏らした場合の、中距離迎撃を可能にするとされている。メリットは、艦と違って地上配備なので、運用する要員が大幅に減らせるという点だ。一隻1,500億円ほどと言われる艦より安いために、防衛省関係者には「お買い得」という認識があるという。

 今回、見積りより値が上がったのは、たとえば新築住宅を買う際に、実際に住むために必要な照明や家具などの費用が加算されていなかったようなもの。配備費用が加算されていなかったため大幅増額になっており、本来であれば総計をきちんと見積るべきだった。しかし、その総計はいまだ不透明で、最終的に6,000億円以上に膨れ上がるのではという見方もある。必要性が改めて問われるのはたしかだ。

 軍事ジャーナリストの青山智樹氏は、イージスアショア導入には日本の特異な状況が関係しているとみる。
「最新のPAC3は弾道ミサイルを迎撃することができますが、射程距離が以前より短縮されていて、日本の対空防衛は相対的に低下しています。自衛隊としてはその穴埋めがほしかったのはたしかでしょう。アショアの発射管は柔軟で、対空ばかりでなく、対艦ミサイルや長距離巡航ミサイルも発射できます。日本はアメリカの核に守られている状況で、独自に中国や北朝鮮の脅威に対応できるのはイージスしかないという部分もあり、同じ構造下にある韓国では、さらに高いTHAAD導入で議論になっています」

■未来型兵器への転換を進める安倍政権
 防衛的には必要なのかもしれないが、国民からは「費用をもっと安く抑えることはできないのか」という声もあがるだろう。兵器の価格は往々にして政治的に決定され、それこそ政治力がものをいう世界なだけに、十分可能なはずだ。

 もっとも、単なる足し算引き算でことが終わらないのは、自衛隊の人件費が絡んでくるからだ。自衛隊の予算の多くは人件費で、多くは隊員の給料に充てられている。平成30年の防衛予算案5.2兆円の内訳をみれば、人件費、食糧費が2.1兆円で40%を占める。

 前出の青山氏によれば、安倍政権になってから防衛費は毎年1%弱の微増を続けており、これはトランプ政権の要求に応じてアメリカ製兵器を購入していることのほかに、無人でも戦える未来型兵器に置き換えているという事情があるという。そういった視点で見れば、300人もの人員が必要なイージス艦より、数十人で動作可能な地上ミサイル設備の方が、たしかに合理的なのかもしれない。

■北朝鮮の脅威を理由に、無人兵器路線の愚
 しかし、この自衛隊の人員削減こそ議論が必要なのではないのか。人件費という点で見ると、マンパワーに余裕のある自衛隊だからこそ、先の豪雨災害にも3万3千人の自衛隊員が救助支援に当たって、被災対策にも十分対応できている。災害が続発するなかで、単純に自衛隊員を減らす方向に舵を切っていいのだろうか。

 いま隊員の数は減少傾向にあって、少子高齢化、高学歴化の影響で入隊者が激減し、定員の充足率は92%、大半を占める“士”官になると75%に下がるという。
「日本はドラスティックな兵員増加策を取るか、無人兵器の自動化で対応するしかないと思います。安倍政権がそこで後者を選択してアショア導入となると、人命救助よりも戦闘重視にも見えるんです。予算を割くなら機械よりも人ではないのか、とする議論もあっていいのではないかと思います」(前出、青山氏)

 一方、政府は昨年、稲田朋美防衛相が導入検討した段階から、その理由に「北朝鮮の脅威が高い」ということばかりが強調されてきた。そのあたりは議論を喚起するよりも「結論ありき」で物事を運んでいたようにしか見えない。国民から懸念の声があがるのも当然だろう。

■答えは出ている
 豪雨被害を受けた西日本各地の復興は始まったばかりだ。熊本地震の被災地も、いまだに苦しんでいる。7年以上経つというのに、東日本大震災の復興は終わりが見えない状況だ。復興予算は、どれだけあっても足りないというのが現状だろう。

 イージスアショアの導入完了は、早くても6年後。その頃、トランプ氏や安倍晋三氏は一国の指導者ではない。北朝鮮情勢が大きく変わるなか、本当に6,000億円以上かかるというイージスアショアが必要なのか――。おそらく、答えはもう出ている。

(片岡亮/NEWSIDER)


20180807_h01-01.jpg■Profile 片岡 亮(かたおか りょう)
 1971年生まれ。アメリカでの商社マンを経て、スポーツ紙記者になりながら、K-1にも出場した元格闘家という異色のフリージャーナリスト。社会、芸能、スポーツ、裏社会まで幅広く取材。70カ国以上の海外取材歴もあり、夕刊紙や週刊誌のほか、テレビコメンテーターも務める。拾った猫5匹を育てる愛猫家。通称・ジーパン記者。



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