国家戦略特区の特例を活かし、今年4月から福岡市が導入した空港アクセスバス(事業者:株式会社ロイヤルバス)。市や国家戦略特区諮問会議は、高島宗一郎市長の関係者が代表を務めるロイヤルバスの経営状況も確認せずに「結論ありき」で突っ走ったことが分かっている。
赤字体質の同社に事業継続が可能なのか――関係者から疑念の声が上がる中、同社がアクセスバスに使用している車両のリース料を支払わなかったとして訴訟を起こされたことが判明。ロイヤルバスを被告とする裁判資料を精査したところ、市側の説明と矛盾する実態が浮かび上がってきた。
■「結論ありき」としか思えぬ経過
ロイヤルバスが運行している空港アクセスバスを巡っては、同社が使用している大型バスのリース料等を支払っていなかったことで、貸主から訴訟を起こされている(参照記事⇒「お友達戦略特区・福岡市空港アクセスバスに資金トラブル」)。改めて注目したのは、ロイヤルバスが大型バスをリース契約したタイミング。ここにも、出来レースをうかがわせる事実があった。
ロイヤルバスは大阪に本社を置く同業社から大型バス3台を賃借しているが、リース契約等が未払いになっていることから現在係争中である。訴訟資料から3台のリース契約内容をまとめた。
空港アクセスバスに使用されている大型バスは、リース契約の裁判に絡む車両だ。大型バスは昨年7月に原告企業からロイヤルバスに引き渡され、7月26日に福岡ナンバーへと変更されていた。リース期間は同年8月1日から5年間となっている。ここで、空港アクセスバスが特区認定されるまでの過程を確認してみたい。
福岡市側の説明によると、高島市長の関係者である「株式会社HEARTS」(以後、「ハーツ」)のT社長が空港アクセスバスについて、市に初めて相談したのが9月末のこと。T氏はこの直後にロイヤルバスの代表取締役に就任している。
一方、ロイヤルバスが問題のリース契約を結んだのは8月。特区の事業者選定に入るずいぶん前のことであるが、競争激しい業界にあって、無意味な大型バスを用意するとは考えにくい。しかも同社は赤字体質だ。それでもなおバスの調達に踏み切ったのは、その時点で特区事業者に認定される見通しが立っていたと考えるのが自然だろう。「お友達戦略特区」だからこそ、可能な投資だったと見ることも可能だ。「最初の相談は9月」とする市側の説明に、疑問符が付く状況となっている。
現行制度では、新たなバス路線を開設するのは容易ではない。路線バスには慎重な業者選定が求められるが、空港アクセスバスにはそのような形跡は見られない。戦略特区を活用して、新規参入を認めたのは福岡市と国。相談から業者認定までのわずか数ヶ月で話がトントン拍子で進んだことは、加計学園のケースと同じである。疑惑に、注目が集まっているのは言うまでもない。