国家戦略特区の特例を利用し、福岡市が今年4月から導入した空港アクセスバスを巡り、アクセスバスの運営を行っている「ロイヤルバス」(福岡市)が、資金トラブルを起こして訴えられていることが分かった。
訴えの対象にはアクセスバスに使用されている車両が含まれており、状況次第でアクセスバスの運行に黄信号が灯る可能性もある。
ロイヤルバスの代表者は髙島宗一郎市長と近い人物。改めて、“お友達特区”の歪みが浮き彫りになった格好だ。
■車両リース料など約2,300万円未払い
市中心部と空港を結ぶ「空港アクセスバス」を運行しているのは、福岡市に本社を置く株式会社ロイヤルバス。同社を特区事業者に認定するにあたって、福岡市や戦略特区諮問会議などが同社の経営状況などを確認していなかったことが明らかになっている。(参照記事⇒《福岡市「お友達市政」の証明 戦略特区に新たな疑惑(2)》。
新たに分かったのは、ロイヤルバスを巡る事業資金の未払い問題。大阪に本店を置く同業A社が、バスのリース料と旅行業務委託料などの支払いを求め、福岡地裁にロイヤルバスを訴えていた。訴状によると、原告A社は昨年8月から同社保有の大型バス3台をロイヤルバスに貸し出すリース契約を結んでいたが、ロイヤルバスは訴えを起こされるまでそのリース料を一度も支払っていなかった。さらにA社はロイヤルバスより業務委託を受け、福岡―USJ間の長距離バスを運行管理していたが、この業務委託料についても未払いになっているという。A社はロイヤルバスに対し、支払われていない車両リース料(約844万円)と業務委託契約料(約1,499万円)の合計約2,343万円の支払いを請求。被告ロイヤルバス側は代理人弁護士をたてず、原告の訴えを概ね認めて“分割案”を提示している。資金的に、厳しい状況にあるとみられる。
■リース料未払いのバスをアクセスバスとして運行
問題は、訴えの対象となったバスが空港アクセスバスの運行に使用されていることだ。確認したところ、少なくとも1台は訴状にあるリース車両のナンバーと一致しており(右の写真)、トラブルを抱えたバスが、特区認定を受けた事業で使用されている形。空港アクセスバスの将来性に、疑問符がつく状況となっている。
訴訟の対象となっている車両は他に2台。すべてが空港アクセスバスに使用されているとすれば、訴訟の行方次第で運行車両が不足する事態になることも予想される。
もともとロイヤルバスの経営状況は良好とはいえず、民間の調査機関による調べでは直近4年の決算で黒字は1回だけ。3回は赤字決算で、昨年7月期には3億2,000万円以上の赤字を計上していた。訴訟の影響で業績が悪化し、特区事業そのものが破綻する可能性もある。
■戦略特区分科会「事業は適正」のデタラメ
戦略特区に共通するのが、加計学園の獣医学部新設に象徴される事業者選定の甘さ。これまで報じてきたように、市や国がロイヤルバスを事業者認定するまでの過程で、業績や財務内容などの経営状況を確認せず、「結論ありき」で突っ走っていたことが分かっているが、「お友達特区」の事業検証はさらにお粗末。ロイヤルバスの運行開始から半年が経過した10月18日、空港アクセスバスの利便性向上などを目的に戦略特区区域会議の下に設置された「福岡空港アクセスバス分科会」は福岡市内で1回目の会議を開き、事業の現状について議論していた。公表された議事録の最後には、次の様に記されている。
「(福岡空港アクセスバスの事業は)適正に実施されているということで、よろしいでしょうか」という問いかけに対し、一同「異議なし」――。しかし、リース料等の訴訟が提起されたのは夏で、9月には1回目の公判が開かれている。訴訟進行中に開かれた税金を使った会議は、茶番だったと言うしかない。
HUNTERの取材に対し、原告側の代理人弁護士は「個別の案件については答えられない」とコメント。ロイヤルバスに取材を申し入れたが、出稿までに連絡はなかった。