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「ねじれた福岡」象徴する市長選出陣式

2018年11月 5日 07:20

20181105_h01-01.jpg 4日に告示された福岡市長選挙が、異例の展開となっている。3選を目指す現職の高島宗一郎氏(44)が政党への推薦願を見送り、完全無所属での選挙戦に臨んでいるからだ。従来の市長選にはなかったことで、「行きがかり上の形だけ与党」(自民党関係者)となっていた自民党市議団は、戸惑いを隠さない。
 選挙は共産党推薦で初出馬した神谷貴行氏(48)との一騎打ち。しかし、立憲民主や国民民主がダンマリを決め込んだため、沖縄知事選や新潟市長選でみられた与野党対立の構図にはなっていない。それどころか、告示日に行われた現職陣営の出陣式は、ねじれた県政界を象徴するような場となった。
(写真は高島氏の出陣式で挨拶する麻生渡前知事)

■自民市議団は蚊帳の外 
 2010年の市長選で、地元民放局のアナウンサーだった高島氏を担ぎ出したのは自民党市議団。しかし、4日に市内中央区で行われた高島陣営の出陣式では、壇上に自民党市議の姿はなかった。市長になった高島氏は、徹底的な議会軽視で自民党市議団と距離を置き、両者の関係が「修復不能」(市議会関係者)といわれるまでに悪化しているからだ。

 市長と自民党市議団との確執が表面化したのは2014年。議会を無視して事を進める市長の態度に業を煮やした市議団の一部が、高島市政2期目となる市長選での党推薦に難色を示した。なんとか推薦を得た高島氏だったが、対立候補の応援に回る市議もいたほどで、この時から両者の間はギクシャクしたままだ。

 同年の市長選直後に行われた総選挙では、市長が市議団の制止を無視して分裂選挙となった福岡1区の井上貴博氏(自民)を支援。顔をつぶされた形の市議団は怒り心頭で抗議文を突き付けたが、市長はこれも無視し、両者の関係は「修復不能」(前同)と言われるまでに悪化した。

 いよいよ戦闘状態に入ったのは昨年で、前哨戦となった2月初めの請願審査では、市長派市議3人が紹介議員となって提出された公園の再整備に関する請願を反市長派が中心となって不採択にし、与党会派が市の方針に公然と異を唱える事態となった。一連の騒ぎを受けて、市長派と見られていた3人の市議は自民党市議団を離脱し、新会派「自民党新福岡」を設立している。

 バトルを本格化させたのが、空港民営化を巡る対応だ。福岡空港ターミナルビルを運営する第3セクター「空港ビルディング」の株式売却益を、空港の民間委託に伴って発足する新事業者に“出資しない”とする高島市長に対し、“出資すべき”と主張する自民党市議団が出資しないことを前提とした市の条例案を野党会派と組み否決。その後、自民などの賛成で可決された出資を促す条例案を市長が「再議」で否決して、市長側の勝利で終わった。強気を崩さぬ高島市長。足並みの乱れを見透かされ逼塞状態となった自民党市議団は、今回の市長選でやむなく“高島支援”を決めている。

 しかし、“支援するなら勝手にどうぞ”というのが高島陣営の方針で、大型選挙では当たり前の「選挙対策本部(選対)」も設けてない。市議が選挙事務所を訪ねても、ただのお客さん。大規模集会などを検討していた自民市議団だが、市長サイドから「屋内での集会はやらない」と通告され沙汰止みになっている。辻立ちを中心にした選挙を目指す市長陣営から「街頭で人を集めてもらえばありがたい」という話が来ていたらしいが、日程についての連絡もなく、対応のしようが無くなった同市議団は、2日までに「何もしない」ということを決めたという。毎回の市長選で各市議が郵送していた市長支援の呼びかけ文書も、今回はなしだ。

■知事選巡る思惑が交錯
 一方、4日の出陣式で高島氏との親密さを改めて印象付けた方々がいる。まず、公明党と自民党新福岡の市議ら。高島氏は創価学会と良好な関係で、公明市議団は初当選以来高島与党だ。仮設舞台の脇に並べられた椅子には、彼らの姿があった。

 出陣式で最も注目を集めたのは、壇上に上がった人物ではなかったか。大型選挙における保守系候補の出陣式では各級議員や財界人がズラリと並ぶのが恒例になっているが、この日はたった2人。小学校区ごとに設立されている自治組織の代表の隣に座っていたのは、麻生渡前福岡県知事だった。前知事が市長の指南役になっているのは周知の事実だが、現在、福岡市と県は宿泊税の導入を巡って対立した形となっており、小川洋知事の生みの親ともいわれる麻生前知事の登場に、首をかしげる参会者は少なくなかった。

 ある県政界関係者によると、小川洋氏を知事の座につけた麻生渡前知事と麻生財務相は、いまや反小川の急先鋒。言うことを聞かなくなった小川知事とダブル麻生との関係は最悪で、対立候補担ぎ出しに躍起となる太郎氏に前知事が同調し、小川氏に3期目を断念するよう迫ったという話さえある。「宿泊税を巡る福岡市と県のケンカを、あおっているのは麻生太郎。裏で知恵をつけているのは麻生渡」との市議会関係者の話が、真実味を帯びる状況と言えそうだ。後ろ盾となってきた麻生太郎副総理兼財務相も健在。出陣式前日の3日には高島氏の事務所を訪れ、集まった支持者などに高島氏の支持を訴えた。

 タレントアナだった高島宗一郎氏を市長候補に担いだのは自民党市議団、官僚だった小川洋氏を知事の座に据えたのは太郎・渡のダブル麻生である。福岡市長と県知事のそれぞれの“生みの親”が、ともに3期目の選挙で“子供”とそっぽを向き合うという「ねじれる福岡」の構図――。無責任な権力闘争は、有権者にとって迷惑千万と言うしかない。



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