民営化される福岡空港の新運営事業者に対する出資問題で、対立する高島宗一郎市長(写真)と福岡市議会。自民党市議団などが提出した出資を促す条例案をめぐる両者の攻防が最終段階を迎え、緊迫した展開となっている。
11日に行われた市議会は、市長サイドによる市議への圧力問題で紛糾。議会側は、再三市長に委員会審議への出席を求めたが高島氏がこれを拒否し、予定された採決が行われないという異例の事態となった。
2元代表制の理念を無視し、駄々をこねる市長に「不信任案」を提出しようという声も。暴走を続けてきたお子様市長に虚偽答弁の疑いまで浮上し、進退が問われる状況となっている。
■空港条例案めぐり市議会紛糾
「出資しない」と頑張る市長に対し、「出資すべき」とする自民市議団などの議会多数派。市長が3分の2の賛成を必要とする「再議」を提起したことから、対立は決定的なものに。市議団提出の条例案を葬り去ろうとする市長サイドが複数の市議やその周辺企業に圧力をかけたことから、市議団側が猛反発する事態となっていた(参照記事⇒「混乱する福岡市政 空港条例案めぐり市長サイドが暴走 関連業者に幹部が圧力?」 。
市議会の定数は62。市民団体系会派「緑と市民ネットワーク」の2名が採決に加わらない方針であることから、本会議で3分の2を制するには40 人の賛成が必要。一方、否決を目指す市長派にとっては、21人の確保が絶対条件だ。会派構成の現状を見ると、どちらに転ぶか分からない状況で、勝負を決する「一人」をめぐっての熾烈な争いが、「圧力」という形での市長サイドによる暴走を生んだと見られている。
市長サイドによる市議らの庭を荒らすやり方が、議会側の怒りを倍増させたのは確かだ。11日の福岡市議会。再上程された“出資を前提とする条例案”について本会議での質疑を行ったが、副市長が市議らに圧力をかけたとされる問題に質問が集中。付託された第3委員会では、再三にわたる出席要請を市長、副市長が拒否したことから審議が空転し、きょう12日に採決がずれ込むという異例の事態となった。
委員会では、副市長らによる市議への圧力問題に質問が集中。高島市長本人が「福岡維新の会」所属議員に圧力をかけたとの証言まで飛び出し、「(市議と)接触していない」としていた市長の答弁に虚偽の疑いが浮上している。
市長サイドによる福岡維新への圧力は、他でも確認されている。同会所属の市議は4人。3人は出資に賛成で1人が出資に反対だったが、大阪の維新本部が「分裂」を回避するよう指示したことで、市長派の「21」が流動的になってきた。仮に福岡維新が4人そろって条例案に賛成すれば、賛成40・反対20。緑と市民ネットの2人が議決に参加しない予定であることから、再議案は可決され市長が完敗することになる。焦った市長周辺は、市長の友人で数年前まで福岡市顧問を務めていた会社社長が、維新側に接触。市長に味方するよう説得したとされる。加えて、市長本人の維新所属議員への圧力――。採決への賛否に関し、同会派の中での協議が続いており、動き次第で市政の方向が大きく変わる可能性が高い。
■不信任案提出の声も
高島氏が2期目を決めた平成26年の市長選以来、深まるばかりの自民党市議団と市長との溝。議会無視の独裁市政に、自民を含む大方の議員が愛想を尽かした格好だ。条例案再議決の結果がでるのは12日。議会関係者の間からは、市長への「不信任案」提出の動きさえ出ている。ある市議会議員は、次のように話している。
「不信任案が検討されるなんて、異常事態。ただ、それは市長が招いたことだ。議会軽視でパフォーマンスに明け暮れてきた愚かな行為への報いだ。空港条例案は、きっかけに過ぎない。空港は、市民の財産。市長の勝手放題で、福岡市の未来が歪められるようなことがあってはならない。不信任案は見送りになる見込み大だが、市長はむしろ、不信任を受けての議会解散へと持ち込みたいんじゃないか。不信任案がなくても、再議で負けることもありうる。その場合は、任期満了前の市長選も視野に入れているはずだ。議会側として、どう対応していくか。どうにも、落としどころが見当たらない格好になってきた。ハッキリしているのは、来年の市長選で自民党市議団が高島を推すことはないということだけだ」
天神ビッグバンの前に、市役所ビッグバンが起こりそうな気配となってきた。