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博多駅前陥没事故の背景 ― 疑惑の入札 人災の可能性 ―

2016年11月 9日 08:10

1-現場.jpg 8日早朝、地下鉄七隈線の延伸工事が行われていた福岡市博多区にあるJR博多駅前の市道が陥没。深さ15メートルの巨大な穴が、30メートル四方にわたって広がる大事故となった。周辺のビルには避難勧告。停電、ガス漏れなどの影響が拡大するなか、現場上空には終日報道各社のヘリが飛び交い、ニュースやワイドショーは陥没事故一色となった。
 「前代未聞」と人ごとのようなコメントを出した高島宗一郎市長だが、事故の責任を負うのは工事の発注者である福岡市。じつは、七隈線延伸工事については、入札段階から先行きを危ぶむ声が上がっていた。(写真は8日夜の事故現場)

疑惑の地下鉄工事入札
 平成25年12月と26年3月、福岡市交通局が地下鉄七隈線の建設工事3件の入札を実施した。それぞれの工事名と落札金額、予定価格、落札率についてまとめると次のようになる(金額はすべて税込)。

1-地下鉄入札-2.png

 3件の工事の入札結果表(下、参照)によれば、中間駅(仮称)西工区建設工事を「大林・熊谷・大本・東田中建設工事共同企業体」が、中間駅(仮称)東工区建設工事を「錢高・日本国土・九建建設工事共同企業体」が、今回の陥没事故が起きた博多駅(仮称)工区建設工事を「大成・佐藤・森本・三軌・西光建設工事共同企業体」が、それぞれ落札していた。

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 結果表にある通り、それぞれの工事で入札辞退が相次いでいた。各JVが提出した「辞退届」によれば、辞退理由の大半は“工事原価の予定価格超過”。建設資材の高騰などで、役所の積算見積もりと現実が合致していなかった可能性が高い。3件の入札すべてに疑問があったことは事実で、1者応札となった錢高JVが落札した中間駅(仮称)東工区建設工事では、総合評価方式の入札であるにもかかわらず、「技術提案」を行っていなかったことも分かっている。同工事の落札率は100%。異例づくめの大型事業だったことは明らかで、2者以上が応札した博多駅(仮称)工区建設工事も99.5%の落札率となっていた。HUNTERは、平成26年4月の配信記事で疑惑の入札について報じている(参照記事⇒『福岡市地下鉄工事「落札率100%・技術提案なし」の不可解 』)。

ナトム工法への疑問 
 一般的に“落札率95%以上は談合”。高い落札率だった3件の工事について、「談合の末のぎりぎりの額。下請けを泣かせるか、徹底的なコスト削減か」(市内の建設業者の話)という声が上がっていたほどで、利益確保のため、甘い工事が行われた可能性は否定できない。事実、8日の陥没事故を起こした博多駅前の工事は「ナトム」と呼ばれるの工法によるもの。市街地の地下では地下水対策が容易なシールド工法が一般的と言われており、シールドに比べて3分の1以下と言われる安価なナトム工法を選んだ結果、重大事故につながったとの見方も出ている。

無責任市長の証明
 会見で「前代未聞」「オール福岡で(対応)」とコメントした高島市長。しかし、市営地下鉄関連工事を巡っては、ちょうど2年前の平成26年10月に今回の事故現場とは目と鼻の先の博多警察署入口交差点付近で陥没事故が発生。平成12年にも同市中央区薬院で陥没事故を起こしており、「前代未聞」は無反省の証拠。過去の教訓を生かし切れていない市のトップが発した「オール福岡で(対応)」も、責任転嫁としか思えぬ一言だ。ちなみに、七隈線延伸工事の入札総合評価で求められたのは、次の4項目。

 1、躯体コンクリートの品質確保について
 2、路下工事における工期短縮について
 3、既存構造物の保全対策について
 4、NATM区間の掘進管理について

 陥没事故という結果から見て、提案内容にも市側の評価にも問題があったことは確か。“人災”を疑ってかかる必要がある。 

*本稿配信時に、総合評価で求められた4項目を、
1、躯体コンクリートの品質確保について
2、深い土留工の確実な施工について
3、基盤層境の確実なシールドの掘進管理について
4、近接の商業ビル及び住民への配慮について
としておりましたが、これは「福岡市地下鉄中間駅(仮称)東工区建設工事」の評価項目でした。お詫びして訂正いたします。(11月24日)



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