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白黒コピーで他都市の2倍 東京都情報公開制度の欠陥
小池知事の条例見直しに期待

2016年9月 1日 10:10

20140121_h01-01t.JPG 過大に膨らんだ東京オリンピック・パラリンピックの開催経費、築地市場の豊洲移転、未解決となったままの舛添前知事の公私混同疑惑……。難題山積の東京都に、「情報公開」を公約に掲げた小池百合子知事が誕生した。都が積極的に情報を発信するのは当然だが、ともすれば都合の悪い情報の隠蔽に走るのがこの国の役所の常。東京都とて例外ではない。最終的に権力のチェックを行うのは、市民や報道機関ということになる。
 問題は、小池氏の本気度。じつは現行の東京都情報公開制度は、費用はかさむわ条件は付くわで問題ばかり。他の自治体よりはるかに遅れているのである。

請求権者に条件
 情報公開条例を制定している自治体の多くが、情報公開請求権者について「何人も、この条例の定めるところにより、実施機関に対し、当該実施機関の保有する公文書の公開を請求することができる」などとして制限を設けないのが一般的。「何人も――」がないのは、原発立地自治体など自治体内部の情報を隠蔽したがる役所ばかりだ。こうした場合、請求権者を当該自治体の中だけに限定している。一例として、玄海原子力発電所を抱える佐賀県玄海町のケースを示してみよう。

  • 町内に住所を有する者
  • 町内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体
  • 町内に存する事務所又は事業所に勤務する者
  • 町内に存する学校に在学する者
  • 前各号に掲げるもののほか、実施機関が行う事務又は事業に具体的利害関係を有するもの

 電源3法交付金などに代表される“原発マネー”の詳しい使い道や、首長、議員の悪行を暴くためには、どうしても公文書が必要になる。しかし、多くの原発立地自治体が、情報公開の請求権者を上記の玄海町と同じように限定しているのが実情だ(参照記事⇒「原発立地自治体 変わらぬ隠ぺい姿勢」)。これでは、行政のチェックが不十分となる。

 自治体が請求権者を限定するのは、情報公開に後ろ向きな証拠。外部からのチェックを嫌っているからに他ならない。そうしたケースは小規模な自治体に限られるものと思っていたが、驚いたことに首都東京も請求権者に条件を設けている。東京都情報公開条例によれば、(公文書の開示を請求できるもの)として、次のように規定している。

  • 都の区域内に住所を有する者
  • 都の区域内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体
  • 都の区域内に存する事務所又は事業所に勤務する者
  • 都の区域内に存する学校に在学する者
  • 前各号に掲げるもののほか、実施機関が保有している公文書の開示を必要とする理由を明示して請求する個人及び法人その他の団体

 個人で請求できるのは、都内在住者、都内に勤務または通学する人が原則。都外の人間は、目的を明示しなければ、請求できないことになっている。下が、実際の開示請求書だ(赤い矢印はHUNTER編集部)。

20160901_h01-01.jpeg

 調査・研究なのか、取材なのか、勉強なのか、争訟なのか――情報公開請求の目的を答えなければ開示に応じないというのが都の方針だ。相手の目的に応じて、対応を変えようという姿勢が透けて見える。こうした条件を設けている自治体がないわけではないが、日本の首都がやることではあるまい

高額な費用
 都の情報公開制度で最大の問題は、情報開示の費用。他の自治体ではあまり例のない「手数料」を徴収する上、開示にあたっての実費が、国や他の多くの自治体の2倍に上るのだ。

 情報公開でもっとも遅れているのは「国」。省庁や国の外郭団体に開示請求を行うと、手数料としてワンファイルごとに「300円」の収入印紙を貼ることを義務付けられる。酷いもので、毎年実施される施策についての文書でも、年度ごとに「300円」。例えば、同一の政党や政治団体が提出した政治資金の領収書でも、複数年分を請求すれば「300円×年数分」の印紙が必要となる。東京都の場合は、手数料100円。国より安いが、他の道府県ではほとんどやっていないことだ。

 次に開示にあたっての実費の金額。国や他の自治体は、白黒が10円、カラーが30円程度。しかし、東京都の場合は、白黒が10枚まで30円、11枚目から20円という高額だ。カラーになると1枚100円。個人で請求をかける場合、文書量によっては手が出なくなる料金設定となっている。

東京都手数料.png

 東京都情報公開条例施行規則によれば、CDやDVDにデータを落とせれば1枚10円になるというが、すべての開示請求に対応できるわけではないという。

 財政規模の小さな自治体が、開示手数料や割高な実費を徴収するのは止むをえまい。しかし、東京都は日本一の財政規模を誇る巨大都市だ。情報公開を本気で推進しようとするなら、請求権者に条件を付けたり、高額な実費を徴収することを止めるべきだろう。小池知事が、情報公開条例の改正に取り組むかどうかに注目したい。



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