わずか22枚の文書のコピー代が2,840円――。指宿市の、高額な情報公開費用に驚いた。
「塩漬け土地」に関する情報公開を巡って杜撰な公文書管理の実態を露呈した鹿児島県指宿市が、情報公開条例を恣意的に運用し、請求者に不利益を与える形となる法外な費用を請求していることが分かった。
■高額な開示費用に仰天
地方自治体が運用する情報公開の費用としては、法外というしかない。開示された文書は、白黒A4判が22枚。大半の自治体では10円×22枚=220円で終わる。それが2,840円。誰もが驚く金額だ。
指宿市は先月、土地開発公社が保有する土地の売買契約書を開示するにあたって、一部を不存在扱いにしながら、「紛失」をとがめる報道を受け「見つかった」と態度を一変させた。見つかった契約書は75筆分の22枚。下が指宿市から送付されてきた開示費用の説明文である。
今年4月の情報公開請求に対し市は、通常15日となる開示決定期限を大幅に延長。文書開示自体を2回に分け5月24日に一部を開示し、大半を7月31日付けで開示するなど、他の自治体では例のない対応で時間をかせいでいた。5か月かけて見つからなかったという75筆分の契約書が、厳しい追及を受け、たった1日で出てきただけでも驚きだ。そこに法外な開示費用。念のため、同市の情報公開条例に定めた開示費用を確認した。
■情報公開条例を恣意的に運用
指宿市の情報公開条例は、《開示請求を行い公文書の開示を受ける者は、別表に定める手数料及び費用を納めなければならない》と規定しており、下がその「別表」だ。
開示費用のうち、一般的な“文書又は図面の写しの交付”の費用は、『1件(簿冊にあっては1冊)につき300円に、写し白黒1枚につき20円を加えて得た金額』となっている。1件につき300円の手数料を取った上に、1枚20円払えというわけだ。多くの自治体が「手数料なし。白黒1枚10円」を実現している中、手数料もコピー代も格段に高い。
ちなみに、鹿児島県内の「市」は指宿市も含めて18。このうち、白黒文書については阿久根市が《文書、図面及び写真の写しの交付1件につき200円に、白黒1枚につき20円を加えて得た額》、枕崎市が《1件につき300円に当該写しの交付に必要な費用を加えて得た額》となっており、指宿市同様の「手数料」を徴収している。残り15市では、1市(曽於市)が白黒1枚20円で、14の市が10円となっている。鹿児島県庁も10円だ。
問題となるのは、指宿市における手数料のカウント方法。『1件(簿冊にあっては1冊)につき300円』の“1件”は、『1件の請求』と思いがちだが、そうではない。(簿冊にあっては1冊)がくせ者で、今回の情報開示では、他の自治体では考えられない計算をしている。
当初、市が「ない」と断言していた土地公社の「土地売買契約書」75筆分・22枚は、後になって数か所の場所から出てきた。指宿市の杜撰な文書管理が原因だったことは明白だが、散逸した過程で、それぞれの契約書は別々にファイルされた形となる。指宿市は、これらのファイル(簿冊)を個々に1件とカウントし、すべてに300円の手数料を課したのだ。8ファイルだから300円×8=2,400円。22枚のコピー代440円を加えると、2,840円となる。自分達の怠慢でファイル(簿冊)を増やしておきながら、それを手数料稼ぎに利用した形だ。ふざけているとしか言いようがない。
HUNTERが開示請求したのは、土地開発公社が保有する土地の売買契約書。まともな管理を行っていれば、当然1か所にまとめられていたはずの公文書だ。“そもそも1件=1ファイル”として計算するのが当たり前の案件。時代遅れの手数料を取るにしても、せいぜい1ファイル分か2ファイル分が妥当なのだ。現に指宿市は3回に及んだ文書開示で、数百枚あった初回と2回目は2ファイル分しか請求してきていない。
それが22枚で8ファイル――。こんなデタラメがまかり通るのなら、同一種類の公文書を意図的に細かく分け、過大な手数料を吹っ掛けることも可能だ。市にとって都合の悪い開示請求をつぶすには、じつに有効な手段だろう。同市の情報公開条例には、《この条例は、市の保有する公文書の開示を求める権利について必要な事項を定めること等により、市民の知る権利を尊重し》と規定しているが、非常識な手数料を要求する指宿市が、市民の知る権利を尊重しているとは思えない。
指宿市の現状について、市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は次のように話している。
「手数料という形で300円払えば見せてやるというお上の論理。指宿市も含め、手数料を請求する自治体は時代遅れだ。昔は福岡市も手数料を徴収していたが、20年以上も前の話。ほとんどの自治体が、手数料なしの1枚10円になっている。東京都も、小池(百合子)さんが知事になって、手数料をやめている。
指宿市のファイルのカウント方法もおかしい。役所が次々にファイルを増やせば、開示費用を際限なく上げることも可能な仕組みで、開示のハードルが高いということは まともな情報公開制度とは言えない。それは、市民の知る権利に応えていないということだ」