先月行われた鹿児島県知事選挙(6月23日告示、7月10日投開票)の期間中、薩摩川内市の向原翼、知識博美両副市長が、落選した伊藤祐一郎前知事を応援するため公職選挙法に抵触する形の選挙運動を行っていたことが明らかとなった。
原発容認知事の落選危機に、焦った末の違法行為。明らかに公務員失格である。
(写真は、落選した伊藤前知事の選挙事務所)
“のぼり旗”持って伊藤氏の選挙運動
二人の副市長が行っていたのは、通常候補者本人がやる早朝の“辻立ち”。薩摩川内市では、伊藤氏支持を鮮明にしていた岩切秀雄市長をはじめ向原翼、知識博美両副市長が、選挙期間中に伊藤支持を訴え街頭に立っていた(昨日既報⇒「原発立地の薩摩川内市 副市長二人が知事選で選挙運動 」)。
薩摩川内市の広報室を通じ副市長二人に事実確認を求めたところ、知識副市長は7月7日(木)の7時から8時に、向原副市長は7月8日(金)の同時刻に辻立ち。この際、伊藤前知事の氏名が大書された「のぼり旗」を持っていたことを認めている。
違法性は明らか
法的な問題は二つ。公選法は、選挙期間中に掲示できるものをポスター、選挙事務所の看板・ちょうちん、選挙カーの看板、候補者用のたすきなどに限定しており、候補者名や候補者を類推することが可能な文言等を入れたその他の掲示物は禁止。副市長が手に持っていたという伊藤氏の「のぼり旗」は、使用すること自体が違法となる。
次に違法性を問われるのが、二人の副市長が行った辻立ちの形態。両副市長は取材に対し、周辺に候補者である伊藤氏はいなかったとしており、そうなれば単独での選挙運動。選挙運動が行えるのは、街頭演説用に支給された標旗の周辺か電話、インターネットなどに限定されており、勝手に街頭での選挙運動を行うことはご法度だ。運動員用には前述した標旗の他に、いわゆる「七つ道具」の一つとして腕章15枚(車上運動員用が4枚、運動員用11枚)が配られており、腕章着用者以外の人間が路上で投票を呼び掛けることはできない。薩摩川内市の副市長二人は、伊藤陣営の活動とは別に個人的な辻立ちを行ったとしており、標旗も腕章もない状態だった。
鹿児島県選挙管理委員会によれば、選挙期間中の“のぼり旗”は違法。決められた形態以外での選挙運動も違法であることを認めており向原、知識両副市長の辻立ちは、極めて違法性の高いものだったことになる。選挙中の辻立ちは岩切市長も行っており、同じような形だったとすれば、こちらも公選法違反に問われる可能性がある。
原発推進の前職伊藤氏、脱原発を掲げた新人三反園氏。終盤戦で苦戦が伝えられていた伊藤氏の当選を願うあまり、原発を地域発展の軸にしてきた薩摩川内市の執行部が、常軌を逸した行動に出たと見るべきだろう。