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安倍晋三 不誠実の証明

2016年2月22日 08:55

安倍首相答弁 安倍晋三首相の特徴として挙げられるのが“議論のすり替え”による自己弁護。都合の悪い話になると、別の話を持ち出して逆に相手を批判し、まともな議論から逃げるのが常だ。首相の辞書には「反省」という言葉がないのだろう。国会論戦では再三再四この不誠実な態度で対抗しており、批判と正面から向き合った首相の姿など見たことがない。
 親分が不誠実なら子分も同じ。首相が代表を務める山口県の自民党支部が、いったんは政治資金に関する質問取材に応じる姿勢を見せておきながら、都合が悪いとみるや一転、「個別の質問に対してお答えしておりません」として取材を拒否する事態となった。

税金で「運転代行」―事実上の取材拒否
 首相が代表を務める「自由民主党山口県第四選挙区支部」が山口県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書によれば、同支部は毎年、多額の「代行タクシー代」を支出。平成24年から26年までの3年間の集計で年平均30回、毎月2.5回も運転代行を利用し、平成26年は約120万円を運転代行費に充てていた(19日既報)。同支部の平成24年、25年、26年の政治資金収支報告書から、「代行タクシー代」の支出を抜き出してまとめたのが下の表だ。

自民党山口県第四支部「代行タクシー代」

 支部関係者による、運転代行の利用が常態化しているのは明らか。しかも、報告書の記載では1日の支払額が10万円を超えたり、数万円単位の支払いが同じ日に何件もあるなど不自然な点ばかり。税金を原資とする政党交付金が同支部の収入の一部となっていることから、運転代行の利用実態について確認するため、首相サイドに取材を申し入れていた。

 取材を申し入れた先は、山口県下関市内にある同党支部。首相の地元事務所と同居する形になっているが、そこは事実上「安倍晋三事務所」である。まず対応した秘書に聞いたのは、政治資金収支報告書に記載がある「代行タクシー代」が、運転代行への支払いのことを指すのかどうかの確認。「そうです」と回答した秘書は、あとの質問をさえぎって「うちは文書取材しか受けていないので、あとの質問は文書にしてFAXして下さい」――。取材に応じる姿勢を見せたので、FAX番号を聞き質問文書を送付していた。問うたのは、運転代行に関する2点。

  • 誰が、どのような目的で利用したものか?
  • 代行タクシー代は、政党支部の支出として適切だと考えているか?

 これだけである。

 回答が来たのは翌日夕。下がFAXによる安倍事務所からの文書だ。

回答

 都合の悪い話には答えず、開き直る首相の姿勢そのまま。これでは回答になっていない。質問があれば文書にしてFAXを送るようにと指示しておきながら、事実上の取材拒否だ。

 政治資金収支を法にのっとって適正に処理するのは当たりまえのこと。こちらとしては、記載内容が事実であることを前提に、出てきた「代行タクシー代」の利用実態を確認したに過ぎない。誰が何の目的で使ったのか、正当な理由があれば答えられないはずはあるまい。税金を原資とする政党交付金を使っている以上、使途について説明責任を果たすのは政党支部の義務でもあろう。現職首相の事務所なら、なおさらのことだ。

 そもそも、「個別の質問に対しては答えない」というのなら、初めから質問内容を文書にしてFAXで送れなどと指示しなければよい。電話の段階で「個別の取材、質問には答えない」と言えば済むことだ。察するに、運転代行を頻繁に利用している実情を知られたくないというのが本音。安倍晋三を褒め称えることを目的とした取材には応じるが、都合の悪い質問には答えないという方針なのだろう。不誠実を超えて、「卑怯」と言うべき態度である。

首相も事務所も「不誠実」
 特定秘密保護法の制定、集団的自衛権の行使容認、そして昨年の安保法――。安倍政権がやってきたことは、いずれも国民の半数以上が反対した危険なものばかり。戦前回帰のための道普請と言っても過言ではあるまい。民意を無視して事を進めるたび、首相は「これからは丁寧に説明し、国民の理解を得るようにする」と繰り返してきた。しかし、特定秘密保護法や安保法について、首相が丁寧に説明した場面など見たことがない。国会では、常に議論のすり替えと自説の長広舌。自身への批判に対しては、激高することもしばしばで、昨年は女性議員に「早く質問しろよ」と恫喝に近いヤジも飛ばしている。

 直近の事例としては、先週19日の衆議院予算委員会。丸山和也参院議員による「奴隷大統領」発言について質問を受けた首相は、逆に民主党議員が首相を「睡眠障害に追い込む」と発言したことを激しく批判。「私にも家族がいる」などと、的外れな発言を続けた。次元の違う話だったが、民主党側が改めて謝罪したのに対し、首相から自民党トップとして反省の弁は聞かれずじまい。奴隷発言をめぐる議論が深まることはなかった。毎度のことだが、首相に「謝る」という姿勢は皆無。聞かれたことに答えるという、議会質疑の基本さえ守ろうとしていない。「不誠実」という言葉こそ、安倍晋三に相応しい一語。事務所のスタッフにも、不誠実が浸透している。



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