自民党の藤丸敏防衛大臣政務官(衆院福岡7区・当選2回)が、議員宿舎の光熱水費を、政党交付金の受け皿となっている選挙区支部の政治資金から支払っていたことが明らかとなった。
議員宿舎は、国会議員の東京での活動を支えるため、格安の使用料で議員個々に賃貸される施設。藤丸氏は、本来個人で支払うべき宿舎の電気、ガス、上・下水道の料金を、自身が代表を務める「自由民主党福岡県第七選挙区支部」の経常経費として処理。同じように、NHKの受信料も同支部が支払っていた。
内閣の一員が、“生活費”を政党の政治資金で賄っている状況だ。
(写真が藤丸議員)
電気、ガス、水道―生活費を政治資金で処理
「自由民主党福岡県第七選挙区支部」が福岡県選挙管理委員会に提出した平成26年分の政治資金収支報告書及び領収書によれば、藤丸氏は、入居している衆議院赤坂宿舎のガス代、電気代、上・下水道代を、同支部の経常経費(光熱水費)として計上。年間のガス代36,476円、電気代76,116円 上・下水道代18,474円を、政治資金の中から支払っていた(下が収支報告書の該当ページ)。
これとは別に、NHKの受信料を経常経費の中の「事務所費」に計上。年間で26,640円が支払われている(下が収支報告書の記載。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
政治資金収支報告書の「経常経費」は、政党支部や政治団体が「団体として存続していくために恒常的に必要な経費」(総務省の説明資料より)。「人件費」「光熱水費」「備品消耗品費」「事務所費」に分けて経理処理されており、政治家の生活費を含めることはできない。対象は、あくまでも事務所の運営経費なのだ。
通常、東京都以外の道府県を選挙区とする国会議員が都内で事務所に充てているのは、永田町にある議員会館(右の写真)の豪華な部屋。無料で供与されており、“議員宿舎がなければ関連政治団体の存続が保てない”という屁理屈は通らない。国会議員の“東京宅”ともいえる議員宿舎の光熱水費が、政党支部の経常経費に該当するはずがなく、藤丸氏のケースが不適切な支出であることは明らかだ。
国会議員には、歳費の他に月100万円の「文書通信交通滞在費」も支給されており、藤丸氏が議員宿舎の光熱水費に困るということはないはず。個人負担が当然の生活費を、政党交付金が入ってくる選挙区支部の政治資金から支払う行為は、同氏の倫理観が欠如している証拠と言えそうだ。
実態隠し? ― 領収書に加工
支出の実態を隠そうとした可能性も否定できない。下は、県選管への情報公開請求で入手したガス代の領収書だが、提出された11枚のうち10枚は、(お客さま氏名)の欄に『自由民主党福岡県第七選挙区支部』とあり、その下に藤丸氏の名前。あたかもガス会社の契約先が第七選挙区支部で、その代表として藤丸氏の名前があるような形だ。(以下、赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)
だが、残りの1枚である右の領収書には、第七選挙区支部の印字はなく、藤丸氏の氏名があるだけ。契約が続いている限り、ガス会社が出す請求書や領収書のあて先は同じのはずだが、確かにこの領収書には団体名がない。おかしいと感じ、電気代や上・下水道代の領収書を精査するうち、すべての高熱水費の領収書にある『自由民主党福岡県第七選挙区支部』が、丁寧に押印されたものであることが分かった。下は上・下水道代の領収書だが、押印をミスったのか、印影が崩れている。
次は、電気代の領収書の中の1枚。このケースでは、何らかの理由で支払い用紙が他の月と違っていたらしく、随分無理な形で『自由民主党福岡県第七選挙区支部』を押し込んだ様子がうかがえる。
同支部の光熱水費は、選挙区内に構えた複数の地元事務所のものと東京のものとに分かれており、不自然な加工があるのはすべて議員宿舎分。選挙区支部からの支出が適正であることを示すため、偽装したと見られてもおかしくない格好となっている。
20日午前、一連の政治資金処理について説明を求めるため、第七選挙区支部の会計責任者を務める藤丸氏の秘書に連絡し取材の趣旨を伝えたところ、「調べて電話します」。終日待ったが回答はなく、以後連絡が取れない状況となっている。
都内の高級マンションに自宅―議員宿舎利用で問題視
藤丸氏は当選2回。長年秘書として仕えた古賀誠元自民党幹事長から後継指名され、平成24年の総選挙に出馬。同選挙区で強固な地盤を誇る古賀氏と二人三脚の選挙戦を展開して初当選し、昨年暮れの総選挙で再選を果たしていた。今年10月の内閣改造で、防衛大臣政務官(内閣府大臣政務官を兼任)に就任している。
藤丸氏の議員宿舎利用をめぐっては、同氏が江東区豊洲にある52階建高級マンションの最上階近くの一室(3LDK 82m²)を、平成20年に自宅として購入していたことから、『原則として東京23区に自宅を所有する議員は入居できない』という議員宿舎の利用規定に反しているとして、問題視される事態となっていた。
(参照記事⇒「疑惑の代議士 秘書時代に超高級マンション取得」)