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原発事故 軽んじる福岡・糸島両市
杜撰対応にも反省なし

2015年10月 2日 09:20

玄海原発 福岡、糸島の両市が、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の事故の際に放射性物質がどのように拡散するか予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」のデータを保有していないことが分かった(1日既報⇒「玄海原発事故対策 福岡・糸島両市の怠慢」)。
 原発事故対応を所管する両市の担当課は、SPEEDIデータ不存在の言い訳として、異口同音に「福岡県のホームページで、SPEEDIのデータを見ることができる」ことを挙げた。だがこの主張、じつは大きな誤りだったことが明らかとなっている。
(写真は玄海原発)

SPEEDIデータ不存在 「県のHPで見れる」というが……
 下は、市域の一部が玄海原発の50キロ圏内に入る福岡市と、30キロ圏内に位置する糸島市に対し、保有する放射性物質拡散予測(SPEEDIデータ)を情報公開請求して両市から得た回答。いずれも不存在という結果で、SPEEDIデータを保有していないことが分かった。

文書 1 文書 2

 SPEEDIデータの不存在は、避難計画の杜撰さを示すもの。SPEEDIの予測がなければ、避難時の細かいシミュレーションができないからだ。しかし、福岡、糸島両市の担当課は、SPEEDIデータを保有していなくても大丈夫だという。理由はいずれも同じ。「福岡県のホームページで、SPEEDIのデータを見ることができる」というものだった。

 「知らないのか」――そう言わんばかりの横柄な物言いだったが、何も知らなかったのは両市の役人たち。じつはつい最近まで、福岡県のホームページからSPEEDIのデータを拾うことなどできなかったのである。

削除されていた県HPのリンク先データ
 県側の説明によると、SPEEDIの活用を止めた原子力規制委員会が、これまでウェブ上で公開していた原発ごとのSPEEDIデータを、今年4月に削除。以来、規制委のデータにリンクを張る形にしていた県のホームページからも、データが見れない状態になっていたという。県がこの状況を把握したのは、HUNTERの情報公開請求を受け確認をしてから。県は、「紙」に出力する形で保有していたSPEEDIデータを、急遽ホームページ上で見れるようにして改善策を講じていた。このため、現在県が公表しているSPEEDIデータには、電磁的データにはないはずの「綴り用の穴」がある(下参照。赤い矢印で示した)。

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 つまり、今年の4月から9月初旬までは、県のホームページからSPEEDIデータを見ることは不可能。福岡市や糸島市が言う「福岡県のホームページで、SPEEDIのデータを見ることができる」という主張は、真っ赤な嘘だったことになる。原発の事故対策を担う部署としては余りにお粗末。“間抜け!”――そう怒鳴りたいのを抑えて事実関係を指摘したが、両市の担当者は悪びれる風もない。職務怠慢への反省もなく「それは知りませんが、いまは見れますから」……。税金泥棒とはこういう輩のことを言うのだろう。

意識の低さ露呈した福岡、糸島両市 
 ホームページ上の不備に気付かなかったという県の姿勢にも問題はあるが、平成24年と25年の毎月15日における放射性物質拡散予測データをきちんと保有しており、ミスへの対応も素早かった。一方、SPEEDIデータを巡る福岡・糸島両市の対応は、原発事故に対する両市トップの意識の低さを示すもの。高島宗一郎福岡市長も、月形祐二糸島市長も、原発の事故と真剣に向き合っていない。

 何度も述べてきたが、新潟県の泉田裕彦知事は「被ばくが前提の避難基準では住民の理解は得られない」として規制委にSPEEDIの活用を強く迫ってきた。この違いを、福岡県民はどう見るか?



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