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玄海原発事故対策 福岡・糸島両市の怠慢
軽視される放射能影響予測

2015年10月 1日 09:00

gennpatu 007.jpg 原発事故の際に放射性物質がどのように拡散するかを予測できる唯一のシステムが、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)。原子力規制委員会は昨年、曖昧な理由でSPEEDIの活用を止めたが、原発立地自治体などからは、避難計画策定のためにシステムの有効利用をするよう訴える声が絶えない。
 SPEEDIの予測がなければ避難時の細かいシミュレーションは不可能。そこで、玄海原発(佐賀県玄海町)に関係する福岡県内の自治体についてSPEEDIデータの保有状況を確認したところ、住民の安全を軽視したとんでもない実態が浮かび上がってきた。(写真は玄海原発)

福岡市、SPEEDIデータ保有せず
 SPEEDIは、あらゆる気象状況と放射性物質の放出量から、ほぼ正確な拡散予測をすることが可能なシステム。規制委は、SPEEDIの活用を止めてしまったが、百億円以上の公費を投入して運用してきた実績や積み上げた膨大なデータは、避難計画の策定において極めて有用な材料となる。玄海原発の事故が起きた場合、市域の一部が50キロ圏内に入る福岡市と、30キロ圏内に位置する糸島市に、保有する放射性物質拡散予測(SPEEDIデータ)を情報公開請求する形で状況確認した。まず、福岡市の回答が下。

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 送られてきたのは、「公文書非公開決定通知」。同市はSPEEDIのデータを保有していない。「放射性物質の拡散予測を行うシステムを有していないため」と記しているが、SPEEDIのデータはシステムの有無に関係なく保有が可能だ。念のため市側に確認したが、やはり「ない」とした上で、「福岡県のホームページで、SPEEDIのデータを見ることができる」から、市としてデータを保有する必要がないのだという。

 福岡市は、玄海原発が事故を起こした場合に備え「福岡市原子力災害避難計画(暫定版)」を策定しているが、これは主として玄海原発から50キロ圏内にあたる市内西区を対象とした計画。じつは、全市的な避難計画など作成されていないのが現状だ。避難計画の不備は明らかだが、一部地域向けの避難計画も実効性に乏しい。

 前稿から述べてきたように、SPEEDIのデータがなければ、原発事故に対応した細かなシミュレーションはできない。新潟県の泉田裕彦知事が、「被ばくが前提の避難基準では住民の理解は得られない」として規制委にSPEEDIの活用を強く迫ってきたのは、このためだ。原発事故と真剣に向き合う首長なら、なんとしても確保しておきたいはずのSPEEDIデータを、福岡市の高島宗一郎市長は見てもいないということになる。観光や特区といった派手な施策に力を注いできた高島氏だが、市民の生命や財産を守ることには興味がないらしい。

30キロ圏糸島市も
 玄海原発から30キロ圏内に位置するのが糸島市(月形祐二市長)。さすがに何パターンかのSPEEDIデータを持っているものと思っていたが、案に相違してこちらも不存在(下の非公開決定通知参照)。福岡市同様「福岡県のホームページで、SPEEDIのデータを見ることができる」から必要がないのだという。放射性物質の拡散予測も持たず、一体、どうやって避難計画を作ったのか?この危機感のなさは、救いようがない。

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 SPEEDIデータの不存在は、福岡・糸島の両市が、“原発事故など起きない”という前提で、形ばかりの対応しか行っていないことを示している。だが、多くの市民が「玄海原発で事故が起きた場合は、どのように放射性物質が拡散するのか」という疑問を抱いており、時期に応じた拡散予測を見ておきたいはず。避難計画策定にあたっては、細かいシミュレーションのためにも、SPEEDIのデータが不可欠だ。国や役人が何と言おうと、首長が率先してデータを集めるべきだが、両市の市長はこれを怠っている。重ねて述べるが、“原発の事故など起きるはずがない”、そう高を括っている証拠だろう。新潟の知事と比べてみれば、より両市長の愚かさが分かる。

必要ないと言えるのか?
 下はSPEEDIによって得られた玄海原発を中心とした放射性物質拡散予測の一部。平成25年4月15日に、福岡県が依頼して作成されたデータだ。西南西の風に乗った放射性物質が、30キロ圏の糸島市はもとより福岡市の広い地域にまで届く状況となるのが分かる。

外部被ばくによる実効線量

 これを見た市民はどう思うか――。福岡・糸島両市の市長が本当に市民の安心・安全を考えるなら、あらゆる事態に対応可能な準備をすべきだろう。SPEEDIデータの不存在は、“怠慢”で済む問題ではない。

データ不存在 言い訳はしたものの……
 ところで、原発事故対応を所管する福岡市と糸島市の担当課は、SPEEDIデータ不存在の言い訳として、異口同音に「福岡県のホームページで、SPEEDIのデータを見ることができる」ことを挙げた。“ネット上で確認できるから保有する必要がない”という理屈だが、じつはこの主張こそが真っ赤な嘘だったことが分かっている。その顛末は次稿で。



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