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九電が玄海原発敷地外に「中間貯蔵施設」建設の可能性
緊急時対策棟の場所巡り虚偽説明も

2018年10月17日 07:15

DSCN0484.JPG 九州電力が、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)そばの所有地に、使用済み核燃料の「中間貯蔵施設」を建設する可能性があることが分かった。
 九電の池辺和弘社長は8月30日の会見で、使用済み核燃料を金属製の容器に入れて保管する「乾式貯蔵」の施設を、玄海原発の『敷地内』に設ける方針であることを表明しており、敷地外での施設整備が現実化すれば、発言との整合性が問われることになる。
(写真は、玄海原発3、4号機)

■4か所で進む土木工事
 玄海原発では、敷地の内外で大型工事が進行中。下の図に示した4か所で、土木工事が行われている。HUNTERは先月、九電に対し、4か所の工事が何を目的とするものか確認を求めていたが、1か所を除き、それぞれの工事目的について回答できないとの姿勢だ。

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 九電が工事目的を明らかにしているのは、①の箇所についてのみ。緊急時対策棟の建設に必要なコンクリートを製造する施設だとしている。②と③で進む土木工事の目的については、無回答。テロや災害時に対応する緊急時対策棟の整備場所についても、「明かせない」としている。

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■注目の「敷地外」工事
 問題は④の地域で進む大規模な土木工事の目的。現場には「資機材等の受入れ場所や機器の予備品を保管する倉庫などを設置する目的で用地の整備をしております」とあるが、“資機材や機器の予備品を保管する倉庫”にしては、あまりにも工事の規模が大き過ぎる。「倉庫など」の『など』という表現も怪しい。じつは、乾式貯蔵施設を視野に入れた土木工事ではないのか――という疑念が膨らんだ。

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 九電は、使用済み核燃料の保管方法を、プールの中に水没させる方式から、保管プールで一定期間冷やした後、キャスクと呼ばれる金属製の容器に密封し、空気で冷やす「乾式貯蔵」に切り替える方針だ。燃料プールは原子炉建屋の中に設置されているが、乾式貯蔵は建屋の外で整備するしかない。九電の池辺社長は会見で「玄海原発の敷地内」と明言したが、狭い原発の敷地内には乾式貯蔵施設の整備ができるだけのスペースは見当たらない。

 緊急時対策棟は当然、敷地内での整備。上掲の図でも明らかなとおり、いずれかの場所に緊急時対策棟を造れば敷地内は満杯の状態になる。一体、どこに乾式貯蔵施設のスペースがあるのか――。注目したのが④の地域だ。

 前述の通り、資機材置き場にしては規模が大きい。「資機材等の受入れ場所や機器の予備品を保管する倉庫など」の『など』も、胡散臭い。“乾式貯蔵施設は④の地域に整備するのではないか”――改めて九電に確認を求めていたが、同社が連絡してきた期限になっても回答は返ってこなかった。

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 ④の地域にあたる12ヘクタールは、2016年に九電が買い増しした土地だ。買収目的は、福島第1原発の事故を受けた安全対策工事にともなって生じる資機材保管庫の建設。2021年までに建屋を造る計画とされている。
 
 九電に確認したところ、ここが「原発の敷地外」であることを認めている。すると、④に乾式貯蔵施設を整備した場合は、「中間貯蔵施設」となる。敷地内は「乾式貯蔵施設」だが、敷地外になると「中間貯蔵施設」とみなされるからだ。中間貯蔵施設となれば、社長会見で示された「敷地内」との整合性が問われるのは言うまでもない。

 この点についての質問に対し、九電側は先週までに回答するとの連絡を寄こしていたが、16日になっても動きはなかった。“答えられない”、ということなのだろう。不誠実と言うしかない。

■緊急時対策棟の場所「明かせない」は真っ赤なウソ
 緊急時対策棟の建設場所について「明かせない」としていた九電の説明も、真っ赤なウソだった。佐賀県に対しては場所を明示していたのだ。下は、佐賀県の原子力安全専門部会が昨年1月に玄海原発を視察した際、九電が県側に提供した「資料玄海原子力発電所 ご視察資料」と題する資料の一部。県が公表している資料である。(*赤い書き込みはHUNTER編集部)

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 緊急時対策棟は、まさに④の地域に整備することになっている。これは間違いだったとでも言うのだろうか――。ネットメディアごときと侮るところは、市民軽視で原発を動かす同社の姿勢そのものだ。

 ④の土地に乾式貯蔵施設を整備することになれば、九州初となる「中間貯蔵施設」の誕生である。六ケ所村の核燃料再処理がストップし、核ゴミの最終処分地が決まらない現状では、増え続ける使用済み核燃料の永久保管につながる可能性が否定できない。九電は、正確な情報を発信すべきではないのか。問われているのは、隠蔽を繰り返してきた同社の体質だ。



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