核ゴミ疑惑を招いた町政は、やはり汚れきっていた。
有力5社と町役場による事実上の「官製談合」がまかり通っている鹿児島県南大隅町(森田俊彦町長)。背景にあるのは、町役場と有力建設業者の癒着構造だ。平成25年12月には、役場で行われた5件の「指名競争入札」の結果、Aランクの5社がほぼ100%の落札率でそれぞれ1件を受注。昨年も、5件の工事を同様の落札率で5社が分け合っている。
改めて25年12月以前の工事入札結果を調べたところ、町長の有力支援企業とされていた2社に受注が偏っていた実態が判明。このうち1社の関係者が、平成25年の町長選直前、森田町長の政治団体に献金を行っていたことも明らかとなった。
有力5社で工事独占
平成25年の12月頃から、町内の高額公共事業を独占してきたのは「大村工務店」「瀬戸山組」「東建設」「成武建設」「百次建設」の5社。先月の配信記事では、この5社が、平成25年度から今年度(8月)までに入札が実施された土木工事でどれだけ町と契約を交わしていたかを報じている(参照記事⇒「核ゴミ疑惑の南大隅町 町長派の5社で工事独占 」)。改めて、契約額上位から順に並べてみた。
・百次建設=5件・1億6,496万5,650円
・成武建設=6件・1億2,800万2,700円
・瀬戸山組=4件・1億928万7,600円
・東建設=5件・1億93万6,200円
・大村工務店=4件・9,348万9,200円
主要な工事をこの5社で独占できたのは、「町内業者の育成」(役場側説明)をたてまえに、指名競争入札に固執する町が外部業者を締め出した結果だ。5社はそれぞれ3億円~7億円の年間売上。会社の規模に多少の違いはあるが、南大隅町からの仕事が、売上の大きな割合を占めているのが実情だ。
町長選の年、2社に受注集中
南大隅町の関係者によると、こうした状況になったのは平成25年の末頃から。それまでは、森田町長と親しい2社に、受注が集中していたのだという。そこでHUNTERは同町に対し、平成25年度から今年8月までの土木・建築工事の入札執行調書を情報公開請求。開示された資料に、前回分を加えまとめたのが下の表だ。
平成24年11月から25年12月にかけ、Aランク5社のうち、2社だけが突出して受注を決めていたことが分かる。以前から町長を熱心に支援してきたという「大村工務店」と「瀬戸山組」だ。大村工務店が7件8,644万5,000円、瀬戸山組は4件3,683万3,500円の受注実績となっている。この時期のAランク5社の受注状況は次の通りだ。
・大村工務店=7件・8,644万5,000円
・瀬戸山組=4件・3,683万3,500円
・成武建設=1件・1,241万円
・東建設=1件・1,015万7,500円
・百次建設=契約なし
報じてきた通り、平成25年の12月を境にこの状況が変わるが、それまでの大村工務店と瀬戸山組の実績は群を抜いている。落札率はほとんど「85%」。最低入札価格を入れることで受注を独占した形だが、大村工務店に仕事が集中したのは確かだ。
大村側、町長選直前に献金
大村工務店に関しては、ここに興味深い資料がある。平成25年といえば町長選挙が行われた年。選挙は、同年4月9日に告示され14日に投開票が行われた。核ゴミ疑惑が発覚し、森田町長に厳しい批判が出る中での選挙。利権で結びついた森田陣営にとっては、絶対に負けられない戦いだった。下は、「森田俊彦後援会」の同年の政治資金収支報告書である。
選挙直前の3月27日、大村工務店の代表者の身内で社員だった女性が、森田後援会に10万円を寄附していたのである。公職選挙法は《衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない》として、いわゆる「特定寄附」を禁止している。大村工務店関係者から後援会への寄附が、ただちに違法ということにはならないが、疑いをもたれてもおかしくない献金だった。
公共事業の原資は税金だ。森田町政と建設業界をめぐる癒着について、実態解明が求められているのは言うまでもない。