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墓穴を掘った核ゴミ疑惑の町長
証拠文書廃棄に不合理な言い訳

2015年9月28日 09:15

森田町長 “墓穴を掘った”と言うしかない。
 核ゴミ疑惑に揺れてきた鹿児島県南大隅町が、森田俊彦町長と原子力ムラとの関係を裏付ける証拠文書の「委任状」を廃棄処分にしていた問題で、同町が委任状を破棄するにあたって不自然な「決済文書」を作成していたことが分かった。
 委任状廃棄に至る過程を確認するため、同町に対して行った情報公開請求を通じて明らかになったもの。同町が作成した「決済文書」は、委任状を「1年保存の軽易な文書」だったとしていた同町側の主張を否定する内容となっている。
 役場ぐるみで証拠の隠滅を図ったと見ることも可能で、森田町政の不適切な対応に批判の声が上がりそうだ。

疑惑の証拠を1年で廃棄
 廃棄されていたのは、森田俊彦町長が民間企業の社長に渡していた「委任状」。核関連施設誘致の一切を任せるとして町の将来を委ねた内容となっていたが、存在が知られて社会問題化し、町長が返却を受けたとされていた。

 今年7月にHUNTERが委任状の開示を求めたところ、町側は「1年の保存期間を過ぎたため廃棄した」と説明。町政を揺るがした原因文書を、恣意的判断で捨てた形となっていた。委任状には森田町長の直筆署名があり、町の公印が捺されていたことも分かっている。(参照記事⇒「南大隅町に公文書毀棄の疑い ― 核ゴミ疑惑の「委任状」を廃棄 」)

 町側の対応を不適切と判断したHUNTERは先月、改めて委任状廃棄までの一連の過程が分かる文書を同町に情報公開請求。その結果、開示されたのが下の1枚である(赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)。

3.jpg

 残されていたのは、委任状廃棄の際の決済文書。総務課の課長補佐が起案する形で、森田町長自身が最終的な決済を行っていた。異例としか言いようのないこの決済文書は、町の将来を託した格好の「委任状」が、1年で廃棄するような軽い文書ではなかったことを示している。

廃棄理由の不合理
 まず記載された「破棄理由」だが、いずれも正当な理由とは言い難い。報道機関への公表、議会での説明が済んだからといって、公文書を捨てていいはずがない。公表された文書が“用済み”というなら、役所の文書は片っ端から捨てていいことになってしまうからだ。これでは、最も大切な町民への説明責任が果たせない。報道や議会で問題視されたほどの文書なら、むしろ重要度が大きかったということ。森田町政の判断は、誤りだったと言わざるを得ない。

 南大隅町の文書管理は「南大隅町文書規程」に従って行われており、保存期間については文書の性格等によって「永年保存」「10年保存」「5年保存」「3年保存」「1年保存」に分類される。保存期間は、『法令等の定め、文書の効力、重要度、利用度、資料価値等を勘案して、別表第2に掲げる文書の保存期間決定の基準に基づき、文書取扱責任者が決定する』(同規定)とされており、その基準は次のように定められている。

【永年保存】
1 条例、規則、訓令及び重要な告示の起案文書
2 町の沿革に関する文書で重要なもの
3 町政の運営に関する文書で重要なもの
4 町議会に関する文書で重要なもの
5 国及び県からの通知その他これらに類する文書で重要なもの
6 訴訟及び行政不服審査に関する文書で重要なもの
7 職員の任免、進退、賞罰その他人事に関する文書で重要なもの
8 不動産その他の財産の取得、管理、処分等に関する文書で重要なもの
9 予算、決算及び出納に関する文書で重要なもの
10 その他永年保存の必要があると認められる文書

【10年保存】
1 国及び県からの通知その他これらに類する文書
2 訴訟及び行政不服審査に関する文書
3 会計上の帳簿及び証拠書類で10年保存の必要があると認められる文書
4 その他10年保存の必要があると認められる文書

【5年保存】
1 告示に関する起案文書
2 陳情、要望等に関する文書
3 金銭及び物品の出納に関する文書
4 その他5年保存の必要があると認められる文書

【3年保存】
1 通知、照会、回数その他の一般往復文書で重要なもの
2 歳入、歳出予算及び決算に関する文書
3 その他3年保存の必要があると認められる文書

【1年保存】
1 軽易な通知、照会、回答その他の一般往復文書
2 その他1年を超えて保存する必要がないと認められる文書

 どこにも、“公表済み”を判断基準にする規定はない。保存期間は、文書の持つ性格や重要度によって決めるように規定されている。

 「委任状が存在することにより、誘致への疑念をもたれる怒れがある」との破棄理由にも合理性がない。委任状の存在は、町内外に広く知れ渡っており、いまさら「疑念がもたれる恐れ」を懸念する必要はない。むしろ、森田町長の在任中、求めに応じて委任状を開示することが、疑念を持たれないための唯一の方法だったはずだが、町長自らその機会を葬り去った形。委任状の廃棄には、別の意図があったとみるべきだろう。

決済文書は「永久保存」の不合理
 決裁文書自体の「保存期間」に至っては、滑稽と言うしかない。前掲の決済文書の右上、矢印で示した部分に、この決済文書の保存期間が記されており、『永久保存』となっている。1年保存という「軽易」な文書を破棄するのに、その決済文書は永久保存にするという不合理。裏返せば、廃棄されたという「委任状」自体が、本来は「永久保存」にすべき性格の文書だったことを物語っている。

「委任状」「決済文書」を金庫保管の不合理
 町長自身の「決済印」も不合理。1年保存の文書を廃棄するのに、わざわざ決済文書を作成し、そのうえ首長が決済印を捺すなどということは他の自治体ではあり得ない。念には念をということだったのだろうが、あまりに不自然。町総務課の説明からは、さらに不合理な事実も判明している。

 決済文書には、通常の公文書にあるような「綴りの跡」がない。この決済分書には、書類を綴じるための「穴」があけられていないのだ。この点について確認したところ、この決済文書だけを「町の金庫に保管していた」(総務課説明)のだという。件の委任状も、廃棄まで金庫保管。さらには、廃棄を決めた決済文書を金庫保管しているというのである。これは、1年保存の軽易な文書の取り扱いではあるまい。町側はマヒしているのか、その不合理にも気付いていない。

・公表された委任状は、本物だったのかどうか?
・委任状を、再び委任先の民間会社社長に返したのではないか?

 森田町長が、こうした疑念に反論することができなくなったのは事実。委任状を廃棄したことで、疑惑はより深まったと言うべきだろう。



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