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南大隅町に公文書毀棄の疑い ― 核ゴミ疑惑の「委任状」を廃棄

2015年7月14日 08:15

森田氏プレート 平成25年春に放射性廃棄物の処分場誘致にからむ疑惑で揺れた鹿児島県南大隅町が、疑惑の核心となった「公文書」を廃棄していたことが明らかとなった。
 捨てられたのは、森田俊彦町長が東京電力の闇の代理人に渡していた「委任状」。核関連施設誘致の一切を任せるとして、町の将来を委ねた内容となっていたが、存在が知られて社会問題化したことから町長が返却を受けたとされていた。
 町側は「保存期間を過ぎたため廃棄した」としているが、町政を揺るがした原因文書を恣意的判断で捨てた形。公文書毀棄の疑いが拭いきれない状況となっている。

東電・闇の代理人に核関連施設誘致の一切を委任
 森田町長の「委任状」は、平成21年5月、東電・勝俣恒久元会長と密接な関係にあった「オリエンタル商事」(東京都)の原幸一社長あてに作成され、同社長に渡されていたもの。低レベル放射性廃棄物から使用済み核燃料まで、ありとあらゆる核ゴミの最終処分場のほか、原発本体まで含んだ核関連施設誘致のための権限一切を原氏に与える内容となっていた。

 町長選直前の平成25年3月にHUNTERが直接取材した際、町長は委任状の存在を強く否定。しかし選挙後、民法キー局TBSの報道番組で委任状の写しを示された町長は、一転して自身が原氏に渡したものであることを認めるという前代未聞の事態となっていた。委任状には森田町長の直筆署名があり、公印が捺されていたことも分かっている。

 核のゴミを巡る町政トップの“嘘”にマスコミが殺到。森田町長は、原氏から返却を受けたとして委任状を報道陣に公開し、町内向けに、それまでの経過を報告していた。下が、その当時町のホームページに掲載された森田町長の「一連の報道(核関連施設誘致)についての御報告」である。

 このたび一連のテレビ報道等につきまして、町民皆様へ大変ご迷惑をお掛けし、またご心配いただきましたことに対し、衷心よりお詫び申し上げます。
 この件に関しましては、平成19年当時、本町が企業誘致・地域活性化策として前町長時代、議会議員の賛同の下、誘致運動が進められ、当時商工会長でありました私も推進要請を受け、誘致活動推進に動いた事は事実であります。
 その後、町長に就任させていただき町政座談会におきまして、町民の皆様より誘致すべきではないとのご意見が多かったため、私は商工会内部の推進組織に属していた時の考え方と、町長就任後広く町民皆様の意見を聞く立場において、町民の総意に大きな温度差を感じた次第であり、町長として誘致すべきではないと考え方の軌道修正をいたしました。
 そのような経緯の下、あの3.11の東日本大震災による原発事故の悲惨さを目の当りにし絶対に作るべきでないと政治判断、誘致は絶対にすべきではない旨決断いたしました。
 過日、報道のありました委任状につきまして、私は軽率であったことを猛省し、本件について町民皆様へ深くお詫び申し上げます
 なお委任状については、5月1日相手方より原本が返却され、この件につきましては相互理解の上、全ての委任事項破棄の手続きも完了いたしました事をご報告申し上げます
 今後においては「核関連施設 立地拒否条例」の制定に基づき、私の任期中このような施設の誘致は改めて断固拒否の宣言をし、その政治姿勢を今後も厳しく貫いて参ります。
 2期目の大きな政策課題であります「観光元年スタート」に、町民皆様からの大きな期待と、鹿児島県全体の経済浮揚が、佐多岬開発にかかっており、本町が過疎化の波に埋没しないよう職員と共に新しい知恵を出し合い、これまで頂きました叱咤・叱責を真摯に受け止め、全身全霊で引き続き町民皆様に十分ご理解いただける政治姿勢で尽力していく覚悟で御座います。
 今回報道の件、一連の事案につきましてご迷惑をお掛けいたしましたことに対し、わたくし南大隅町長森田俊彦は、改めまして町民皆様へお詫び申し上げ、書面にて御報告に代えさせていただきたいと存じます。
町 民 各 位
平成25年5月

南大隅町長 森田俊彦

葬られた「委任状」――疑惑、再び
 町を揺るがした「委任状」は、その後どうなったのか?そもそも、報道陣に示された「委任状」は本当に原氏から返却されたものだったのか?――今年になって同町を巡る別の疑惑が持ち上がる状況となったことを受けて、HUNTERは先月、同町に対し4件の情報公開請求を行っていた。そのうちの1件が、原氏から返却されたという「委任状」の開示請求。そして、請求に対する南大隅町の回答が下の「公文書不開示等決定通知書」である。

公文書不開示等決定通知書

 委任状は不開示。理由は「不存在」とある。南大隅町役場の総務課に確認したところ、委任状が公文書であることを認めた上で、「平成25年の5月に委任状が返却され、その後1年間役場内に保管していたが、既定の文書保管期間が過ぎたため廃棄した」という。町を揺るがした「事件」の重要証拠を、わずか1年間保存しただけで「廃棄」したというのである。しかし、この町側の説明に納得する町民は少ないだろう。

 南大隅町の文書管理は「南大隅町文書規程」に従って行われており、保存期間については文書の性格等によって「永年保存」「10年保存」「5年保存」「3年保存」「1年保存」に分類される。保存期間は、『法令等の定め、文書の効力、重要度、利用度、資料価値等を勘案して、別表第2に掲げる文書の保存期間決定の基準に基づき、文書取扱責任者が決定する』(同規定)とされており、町側に一定の裁量権を与えた形だ。だが、問題の委任状が「1年保存」に該当する文書だったとは到底思えない。南大隅町文書規程が定めた保存期間の決定基準は、こうなっているからだ。

永年保存
1 条例、規則、訓令及び重要な告示の起案文書
2 町の沿革に関する文書で重要なもの
3 町政の運営に関する文書で重要なもの
4 町議会に関する文書で重要なもの
5 国及び県からの通知その他これらに類する文書で重要なもの
6 訴訟及び行政不服審査に関する文書で重要なもの
7 職員の任免、進退、賞罰その他人事に関する文書で重要なもの
8 不動産その他の財産の取得、管理、処分等に関する文書で重要なもの
9 予算、決算及び出納に関する文書で重要なもの
10 その他永年保存の必要があると認められる文書

10年保存
1 国及び県からの通知その他これらに類する文書
2 訴訟及び行政不服審査に関する文書
3 会計上の帳簿及び証拠書類で10年保存の必要があると認められる文書
4 その他10年保存の必要があると認められる文書

5年保存
1 告示に関する起案文書
2 陳情、要望等に関する文書
3 金銭及び物品の出納に関する文書
4 その他5年保存の必要があると認められる文書

3年保存
1 通知、照会、回数その他の一般往復文書で重要なもの
2 歳入、歳出予算及び決算に関する文書
3 その他3年保存の必要があると認められる文書

1年保存
1 軽易な通知、照会、回答その他の一般往復文書
2 その他1年を超えて保存する必要がないと認められる文書

 “核関連施設建設についての一切を委ねる”ということは、南大隅町の将来を左右しかねない重要な権限を相手に与えたということ。委任状の存在が表面化していなければ、現在も効力を持っていたことは明らかで、TBSの番組の中で町長は、「期限を切らなかったのはまずかった」と認めている。かかる重要な文書が、『軽易な通知、照会、回答その他の一般往復文書』『その他1年を超えて保存する必要がないと認められる文書』であるはずがない。むしろ、永年保存が義務付けられた『町政の運営に関する文書で重要なもの』に該当すると解すべきだろう。それがなぜ1年で廃棄になるのか?

 南大隅町は、文書管理規定を恣意的に運用し、核ゴミ疑惑の証拠文書を早々に始末した疑いが濃い。実際に廃棄されたのが、HUNTERの情報公開請求が行われた後だったのではないかとの疑念も残る。いずれにせよ、森田町政の狙いが「隠ぺい」にあることは明白。公文書毀棄が、強く疑われる状況だ。

鹿児島 058-thumb-280x210-6513-thumb-280x210-6514.jpg もともと、森田町政の信頼度はゼロ。平成25年の委任状事件直前、HUNTERの取材を受けた森田町長は、前出・原氏からモーターボートの譲渡を受けていたのではないかとの疑惑をキッパリ否定。友人への貸金の代物弁済などと説明しておきながら、数日後、ボートの「登録事項証明書」を突き付けられた町長は、原氏から取得したボートであることを認めうなだれるという失態を演じていた(右が当時の写真)。平然と「嘘」をついては開き直るのが森田氏の特徴。そうした人物の町政が、まともであるわけがない。それを証明するのが、今回行った他の情報公開請求への対応。次稿で、森田町政が再び犯した「嘘」を追及する。



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