汚れたトップの下、行政組織全体が腐ったと言うしかない。
原子力行政を巡る疑惑に揺れ続けてきた鹿児島県南大隅町が、核関連施設誘致に関する一切の権限を委ねると記した森田俊彦町長発行の「委任状」を破棄していてことが判明。公文書毀棄が疑われる事態となった(昨日既報)。
文書管理規定を恣意的に運用し疑惑を闇に葬った形だが、別の開示請求に対し隠しようのない事実まで「不存在」としたことで、不適切な町政運営の実態を露呈する結果となっている。
HUNTERの情報公開請求に対して、森田町政がついた“大嘘”とは……。
出張記録は「不存在」というが……
先月、HUNTERが南大隅町に提出した情報公開請求は4件。そのうちの1件が昨日報じた「委任状」の開示請求だった。これに対する町側の対応が「不存在」のため「不開示」。町を揺るがせた証拠文書を“廃棄したから、ない”という身勝手な主張だ。じつは、他の3件についても回答は同じ。すべて「不開示」で、理由も「不存在」で統一されていた。委任状廃棄の問題については昨日報じた通りだが、不開示決定自体が明らかな「嘘」だと断定できるものが1件ある。開示を求めたのは、町長の出張に関する次の4点の文書・記録である。
・オリエンタル商事原幸一社長と会った時の出張に関する全ての文書
・東京電力を訪問した時の出張に関する全ての文書
・細野豪志・仙谷由人両氏と会った時の出張に関する全ての文書
・上記出張に随行した職員の出張命令及び復命書
簡単に解説すると、オリエンタル商事の原幸一社長は、森田町長が問題の委任状を渡していた相手。東京電力の闇の代理人と目される人物だ。町長は、原氏からモーターボートを譲渡されていたほか、オリエンタル商事本社や原氏の別荘を訪れる仲だったことを認めている。
一方、細野豪志・仙谷由人の両政治家は、平成24年当時民主党政権の中心人物。TBSのスクープ報道で、森田町長と原氏が、両氏と極秘裏の会談を重ねていたことが暴かれている。こうした町長の行動が公費によるものだったのか、はたまた私費によるものだったのか――確認するために行ったのが、今回の出張に関する情報公開請求である。この請求に対する南大隅町の答えが下の決定通知だ。
「公文書不開示等決定通知書」には、委任状の開示請求に対する決定と全く同じ形で「不開示」「不存在」に○印。つまり、オリエンタル商事の原氏と会った時も、東電に行った時も、細野氏らと会った時も、森田町長の「私的」な旅行だったということを示す結果だ。役場側に確認したが、該当する文書は「ない」と断言している。
核ゴミ処分場巡る町長の動き
ここで、現在までに判明している森田町長の平成24年6月から11月までの核ゴミ処分場に関する行動を確認しておきたい。
・細野豪志・仙谷由人両氏との会談が行われた日 ⇒ 平成24年6月29日
・東電・勝俣恒久会長(当時)を訪問した日 ⇒ 同年6月30日
・議員会館・細野氏との会談日⇒同年7月11日
・オリエンタル商事訪問⇒同年11月4日
南大隅町への開示請求に対する回答内容が事実ならば、細野豪志・仙谷由人両氏との会談が行われた日の出張の記録も、東電・勝俣恒久会長(当時)を訪問した日の出張記録も、オリエンタル商事を訪問した日の出張記録も「不存在」ということになる。だがこれは“真っ赤な嘘”。委任状廃棄と合わせ、組織ぐるみで隠ぺいに走った結果としか言いようがない。その証拠を以下に示す。
存在した「出張命令書」
今年3月、HUNTERは、南大隅町への情報公開請求によって町長の出張命令書(5年間分)を入手していた。下は、そのうち3件の旅行命令である。
平成24年6月、森田町長は「全国基地協議会・防衛施設周辺整備全国協議会合同総会」(以下、「合同総会」)に参加するため東京に出張。出発日は6月29日で、帰着日が翌30日となっている。確認したところ、この年の合同総会は29日午後2時から3時半まで。日帰りが可能な日程だったが、町長は都内に宿泊していた。
29日、森田町長は原氏と合流。議員会館で政府関係者と会談したのち、細野、仙石両議員らと食事をともにしながら話し合っていた。30日は原氏に連れられ東電を訪問。勝俣元会長と面談したとされる。つまり、この出張の主目的は核ゴミに関する関係者との会談。合同総会の日程に合わせることで偽装し、極秘会談をセットしたということだ。
同年7月10日から11日にかけては、「大隅総合開発期成会中央要望」の名目で東京出張。訪問先は衆議院議員会館となっているが、細野氏と会談していたことが明らかとなっている。この出張も、主目的が核ゴミ協議であったことは疑う余地がない。
同年11月1日から4日までの出張は、北海道→東京と移動する内容。「観光施設調査」と「関東南大隅会」への参加が目的だったが、最終日の4日には、オリエンタル商事本社を訪れた森田町長の姿が、TBSの取材クルーに捉えられていた。まさにズブズブ。公費利用で、町民への背信行為を繰り返していた格好だ。
腐った組織
以上のことから、開示請求した「オリエンタル商事原幸一社長と会った時の出張に関する全ての文書」「東京電力を訪問した時の出張に関する全ての文書」「細野豪志・仙谷由人両氏と会った時の出張に関する全ての文書」が存在するのは明らか。つまり、南大隅町の「不存在」との不開示決定理由は“真っ赤な嘘”なのである。嘘つき町長に毒されたのか、南大隅町は役場の組織まで腐り始めている。次稿では、腐った職員の代表例を報じる。