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佐賀県立高パソコン授業 民間業務委託に3億円
ベネッセなど2社が「1者応札」

2015年2月13日 07:30

タブレットPC 佐賀県が平成26年度に入学した県立高校の生徒全員に義務づけたパソコン購入。1台約85,000円のパソコンを買うため、生徒側が負担したのは5万円。総数6,579人(中途編入を含む)のうち2割以上にあたる1,387人の生徒の保護者が、この5万円を支払うために県の借入れ制度を利用していた(昨日既報)。
 借金を強要した形のパソコン導入だが、この事業をめぐって、県教委と民間業者の間で不透明な業務委託契約が結ばれていたことが分かった。
(写真は、佐賀県教委が採用したパソコン)

購入費補助のほかに2件の業務委託
 佐賀県が進めてきたのは、県立高校の生徒にパソコンを購入させ、授業に使用することで学力の向上を図るという「先進的ICT利活用教育推進事業」。このため平成26年度の新入生6,579人(中途編入を含む)全員に5万円を負担させて指定のパソコンを買わせ、経済的に苦しい家庭には『佐賀県学習者用パソコン購入費貸付金』と県の育英資金制度で貸付を行っている。パソコンの価格は、教材ソフト込みで約8万5,000円。生徒側負担の5万円以外を、県の補助でまかなう仕組みだ。このため、平成26年度には、約2億3,000万円(約3万5,000円×6,579台)の税金が、この事業につぎ込まれる計算だ。

 それでは、パソコン購入費の補助以外に、この事業にかかる県費支出はなかったのか――?県教委に情報公開請求を行ったところ、2件の業務委託契約が結ばれていたことが明らかとなった。下がその契約書の冒頭部分である。

委託契約書

委託契約書

 「先進的ICT利活用教育推進事業」のため、新たに締結された業務委託契約は次の2件である。

  1. 「佐賀県学習用PC等管理・運用業務」
    契約金額:8,726万4,000円
    契約先:株式会社 学映システム(佐賀市)

  2. 先進的ICT利活用教育推進事業にかかるモデル指導資料作成等サポート業務
    規約金額:2億952万円
    契約先:株式会社 ベネッセコーポレーション(東京都)

 1.は、授業用パソコンを使用するにあたって発生するトラブルへの対応及びセキュリティ管理などを行う業務。受託したのは、授業用パソコンの納入を一手に引き受けた佐賀市の「学映システム」という会社だった。

 2.の業務は、パソコンを使った授業を進めるにあたっての指導計画や指導案の作成、さらに、36校ある県立高校ごとに「ICTサポーター」を配置し、教員の指導・支援にあたるという仕事である。受託したのは、通信教育大手のベネッセコーポレーションだった。

はじめにパソコンありき 
 2件の業務委託金額を合わせると2億9,678万4、000円。なんとパソコンの助成金額以上の税金を、業者への支払いにあてた勘定となっていた。佐賀県は、現場の教員だけでは手に負えない仕事を、多額の税金を使って民間業者に丸投げしたということだ。これが何を意味するか――。教員が習熟する前に、拙速に事業を始めたということ。つまりは「はじめにパソコンありき」だった証しともとれる。その証拠に、2件の業務委託における入札はどちらも「1者応札」。業者決定までの過程も、極めて不自然なものとなっていた。詳細は、次の配信記事で明らかにする。



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