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原発の「嘘」 とぼける九電、追認する佐賀県と有識者

2014年5月28日 09:30

玄海原発 九州電力や佐賀県が、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)から排出される「温排水」の影響評価について、またしても「嘘」の結果を公表することが明らかとなった。
 この問題をめぐっては、佐賀県在住のダイバーが玄海原発付近で原発停止前と後の海中を撮影し、生態の激変を確認。画像の提供を受けたHUNTERは、原発付近の環境に変化はないと公表していた九電や佐賀県の調査が虚偽であることを、今月12日に報じていた(→原発温排水 画像があばく九電と佐賀県の「嘘」 >。
 原発付近の海中の変化は、新聞やテレビも報道。昨年度の調査結果に注目が集まる事態となっていたが、九電は例年と同じ内容の調査結果を佐賀県に提出。県もこれを認める姿勢であることが、県への確認で分かった。(写真は玄海原発)

海中激変 九電、佐賀県の「嘘」判明
 玄海原発の放水口付近の海中は、原発停止後、少なくとも平成24年頃から劇的な変化を遂げている。しかし、九電はこれを無視して「過去の調査結果と同程度」とする調査結果を毎年県に提出。県もこの調査結果を容認してきた。

 今年春、佐賀県在住のダイバーが潜水調査し、放水口周辺にこれまでなかった植物の群生を確認。原発が稼働していた頃と比べ大きく変化した状況を画像に残し、この事実を今月12日、HUNTERが報じていた。これに先立ち、西日本新聞やRKB毎日放送でも同様の報道が行われている。

 原発停止の数年前、温排水の放水口そばは、海藻類がまったくない状態。これに対し、福島第一原発の事故を受けて玄海原発が停止された後は、「クロメ」などの植物が繁茂し、豊かな自然を感じさせる情景に変わっていた。下の写真がその証拠。左側が平成20年の放水口付近。右が今年春の、ほぼ同じ場所の画像である。取水された海水が「7度」上昇することで、植物の生育を妨げていたことが分かる。

玄海排水口 記事用2-thumb-500x330-10057.jpg 玄海原発 排水口-thumb-500x348-10003.jpg
(それぞれの画像の奥に見えるのが温排水の放水口)

 HUNTERは、佐賀県が公表した平成24年度の「温排水影響調査結果(佐賀県実施分)」と「温排水影響調査結果(九州電力実施分)」に注目し、その内容を確認。平成22年度と24年度の「潮間帯生物出現一覧表」や、調査結果の「要約」などから、九電が、原発停止後も水質、底質、プランクトン、潮間帯生物ともに「過去の調査結果と同程度」だと報告し、佐賀県もこの調査結果を追認していたことが判明した。

 前掲の画像で明らかなように、九電の調査結果は、原発周辺海中の実情を正確に反映しておらず、信ぴょう性は皆無。直近で公表された九電調査が平成24年度のものだったことから、一連の報道を受けた九電が、25年度の調査結果で実態を認め、環境変化に言及するかどうかに注目が集まっていた。

またしても「嘘」 追認した県と有識者
 佐賀県は今月23日、平成25年度の九電及び県の温排水影響調査の結果をまとめ、有識者で構成される「佐賀県環境放射能技術会議」 に報告したが、九電調査は例年の内容と同じ。これまで繰り返されてきた「過去の調査結果と同程度」であることが、県への確認で明らかとなった。

 原発周辺の環境放射能調査や温排水調査の実施及び評価について、佐賀県に意見を述べるために設置された「佐賀県環境放射能技術会議」 では、九電の調査結果について何の異論も出なかったとしている。ちなみに、同会議の委員は以下の8名だ(委員名簿は佐賀県HPより)。

有識者会議

 全員が大学教授で、九電と共同研究を行った人物をはじめ原発推進もしくは容認論者ばかりで構成されている、いわば原子力ムラの住人による追認機関。原発温排水の専門家はもちろん、原発に慎重姿勢をとる人物は選ばれていないのが実情で、8名の中には、問題視されている玄海1号機の脆弱性について、「安全性に問題はない」と述べた教授らも含まれている。

 原発付近の海中が激変していることを示す報道を知らなかったのか、あるいは知っていて「問題なし」と判断したのかは分からない。だが、九電、県、そしてこの教授らが、原発付近の海に潜水して調査を行った事実はなく、県側もそれを認めている。九電の調査結果と報道が示す画像、どちらを信じるかは、まさに「読者の判断」に委ねるしかないが……。



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