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原発温排水 画像があばく九電と佐賀県の「嘘」

2014年5月12日 08:10

 原発をめぐる電力会社や立地自治体の「嘘」が、また一つ明らかになった。
 九州電力や佐賀県は、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)から排出される「温排水」の影響評価について、「変化なし」と公表してきたが、佐賀県在住のダイバーが潜水調査した結果、原発停止後、海中の生態系が劇的に変化している状況が確認された。
 原発停止の数年前、温排水の放水口そばは、海藻類がまったくない状態。これに対し、福島第一原発の事故を受けて玄海原発が停止された後は、「クロメ」などの植物が繁茂し、豊かな自然を感じさせる情景に変わっていた。
 原発をめぐる原子力ムラの嘘やごまかしが、フクシマ以後も続いていることを証明する事実だ。
(写真は玄海3、4号機)

温排水影響調査
 玄海原発を抱える佐賀県と事業者である九電は、年度ごとに、原発の運転状況や周辺環境放射能の調査結果に加え「温排水」がもたらす影響調査の結果を公表してきた。

 「温排水」とは、原発から放出される海水のこと。原発の炉内を循環した冷却水は高温となるため、パイプに通して周りを海水で冷やす。この海水を吸い込むのが「取水口」で、役目を終えた海水を再び海に出すのが「放水口」。海水は温められて放出されるため、「温排水」と呼ばれる。

 温排水は、取水したときから7度を超えて上がらないよう定められているが、、国や電力会社の公表資料には「7度」の根拠など皆無。原発特有の裏づけのない一方的な基準で、温排水が垂れ流されてきたというの実情だ。

 HUNTERは、佐賀県が公表した平成24年度の「温排水影響調査結果(佐賀県実施分)」と「温排水影響調査結果(九州電力実施分)」に注目し、その内容を確認した。九電の調査は季節ごとに実施されており、下は平成22年度と24年度の冬季における「潮間帯生物出現一覧表」である。

22年度調査
22年度冬季
24年度調査
24年度冬季

 動植物の順番や種類、出現数などに若干の違いが認められるが、じつはその内容大に大きな変化はなく、24年度の九電調査結果の「要約」には、そのことが明記されている(下がその「要約」の一部。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

24年 九電調査.png

 九電は、水質、底質、プランクトン、潮間帯生物ともに「過去の調査結果と同程度」だとしており、佐賀県もこの調査結果を追認した形。が、残念ながらこれは周辺海中の実情を正確に反映しておらず、調査結果は「嘘」だと言っても過言ではない。

画像は語る
 下は、佐賀県在住のダイバーが撮影した、平成22年頃の放水口そばの海中の状況。魚類はいるが、海藻などの植物は視認できない。もちろん玄海原発は運転中。取水された海水が「7度」上昇することで、植物の生育を妨げていたことが分かる。

玄海排水口1
平成20年頃の放水口そばの状況 画像の奥に放水口が見える

 このまるで死の海のような様子が、劇的に変化したのが原発の停止後。下の写真は今年の春、前掲の写真とほぼ同一の場所で撮影された一枚だが、「クロメ」と呼ばれるカジメ属の褐藻が繁茂しているのが分かる。原発周辺の海に詳しい関係者の話によれば、平成24年には、すでに同じような状況が現出していたのだという。

玄海原発 排水口2
今年春の同じ場所付近 クロメでいっぱいの海の中の状況 写真奥に放水口

 九電や佐賀県は、調査地点や調査方法の違いを言い訳の材料に持ち出してくるのだろうが、画像はなによりも正直。違いは歴然としており、「過去の調査結果と同程度」という報告を、信じる者はいないだろう。原発停止前と後の、同じ位置でのワンショットが、温排水についての九電や佐賀県の「嘘」を証明している。

放射能まみれの廃液垂れ流し
 温排水は、ただ海水の温度を上げるだけのものではない。九電は、原発内で発生した放射能まみれの「液体廃棄物」を、温排水に混ぜてたれ流し続けてきた。

 下の文書は九電が国に提出した玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)に関する「原子炉設置変更許可申請書」の添付文書だが、そのことが明記してある。(赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)

gennpatu 1091.jpg

川内原発の温排水めぐる「嘘」
川内原発 取水口 温排水絡みの「嘘」やごまかしは、枚挙にいとまがない。電力各社で組織された電気事業連合会(電事連)のホームページには、温排水対策として≪取水口は温排水が再循環しないような位置に設ける≫と明記しているが、これが真っ赤な嘘。九電の川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の取水口と放水口は、右の図のような位置関係にあるため、再循環が起きており、このことは、『反原発・かごしまネット』の海水温調査によって明らかとなっている。

 反原発・かごしまネットの調査によれば、『温排水の水温上昇は7度以下』のはずなのに、川内原発では、周辺環境より平均8.5度、最高10度も高温化した温排水を放出していたという。

データ捏造も
 九電の体質を示す「捏造」の事実も存在する。電力各社は温排水によって温度が上昇する海域の実態を調査し、原発立地県に報告する義務があるのだが、平成22年、温排水の危険性を独自に追跡していた『反原発・かごしまネット』のメンバーが、九電の海域モニタリングの調査結果に虚偽があったことをを見つけていた。

 九電の調査結果には温度データと等温線が書いてあり、いずれも1度上昇を示す等温線が"2km"以内となっていた。だが、反原発・かごしまネットのメンバーが精査したところ、等温線の外側にも海水温上昇を示す数字があることに気付いたという。次の2枚の資料を見れば、一目瞭然だ。(注:色づけ部分が広がった高温域)

甲9号証  別18

 九電は、温排水の拡散範囲を意図的に小さく見せかけ、かねがね公表していた『温排水の1度上昇範囲は2km内外』に無理やり当てはめようとしていたのである。確認された平成12年以降、なんと17枚もの捏造があったという。

 九電や原発立地県は、こうした嘘やごまかしが露見するたび、都合のいい言い訳をして、原発の安全性だけを強調してきた。しかし、玄海原発放水口付近の画像や川内原発に関する調査結果が、原子力ムラの「嘘」を証明している。これは「神話」などというきれいな言葉で括れるような話ではない。
それでも再稼働が許されるのか――?



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