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徳洲会 金権体質の実態

2013年10月 2日 07:25

 徳田毅衆院議員(自民・鹿児島2区)の選挙で、グループ内の職員を大量に動員して選挙運動に従事させ、報酬を支払っていたとされる医療法人「徳洲会」。捜査にあたっている東京地検特捜部の狙いは、公職選挙法違反だけではなく、グループ全体のカネの流れを掴むことにあると見られている。
 徳洲会は、毅氏の父で理事長でもある徳田虎雄氏が育て上げた組織。医療で稼いだ資金を湯水の如く政治につぎ込んできたことで知られており、その金権体質は、毅氏にも引き継がれていた。同氏の関連政治団体が、総務省及び鹿児島県選管に提出した政治資金収支報告書から、その実態を追う。

派閥以上の集金力―グループ内で巨額のパー券購入
 毅氏の資金管理団体は、総務省届出の全国組織「徳田毅政経研究会」。鹿児島市谷山中央に主たる事務所を置いている。谷山といえば、徳洲会が新病院建設を計画していると言われる地だ。

 同団体が総務省に提出した平成23年の政治資金収支報告書によれば、この年の収入は2億1,663万546円。内訳は、個人献金が214万円あるほか、自民党本部と所属派閥である宏池会の政治団体「宏池政策研究会」から計2,629万4,396円、残りの大半は、政治資金パーティーで集められたものだった。

 起筆すべきは、その政治資金パーティーの内容。同年11月24日に、都内のホテルで開催された「徳田たけし君と語る会」は、パーティーの対価として1億7,293万8,950円を集めていた。たった1回の開催で、2億円近くの売上げ。しかも、パーティー券購入者は、わずかに1,664の個人・法人となっている。1個人・法人の平均購入額が、10万円を超える計算だ。

政治資金パーティー内容

 集金力の凄まじさは、この年に自民党の派閥が開催した政治資金パーティーの売上げと比較すれば、一目瞭然となる。
 例えば、毅氏が所属する「宏池会」(『宏池政策研究会』・当時は古賀(誠)派、現・岸田派)が平成23年8月に開いた政治資金パーティーは、6,154万円の売上げ。最大派閥である「清和会」(『清和政策研究会』・町村派)の政治資金パーティー(同年9月)でさえ8,520万円の売上げにとどまっている。額賀派「平成研究会」は5,800万円、 二階派「新しい波」に至っては3,000万円程度でしかない。

グループ総動員でカネ集め
 パー券購入の大半は、徳田一族とそのグループ企業・病院、そして出入り業者で占められている。
 個人購入者は14名。そのうち11名が徳田一族で、ひとりが出入り企業の代表者、ほかには古賀誠元自民党幹事長と石原伸晃環境相の名前があるだけだ。一族の購入額だけで1,550万円。徳田一族のカネの使い方は、庶民感覚とは程遠い。

 法人によるパーティー券購入も、ほとんどが徳洲会グループによるもの。同一の者が支払うことが可能な150万円の限度額一杯、もしくは100万円という金額で、17のグループ内法人が政治資金を提供していた。そのほか、葬祭や製薬といった病院との取り引きがある業界の企業が、最低22万円から100万円のパー券購入を行っている。まさにグループ総動員で、徳田議員の政治資金集めに精を出していた形だ。(下は、「徳田毅政経研究会」の収支報告書の一部)

徳田毅政経研究会」収支報告書の一部

 集めた政治資金は、約6,000万円が人件費などの経常経費(約2,000万円)と政治活動費(約4,000万円)で費消され、1億4,000万円あまりが平成24年に繰り越されていた。総選挙を睨んでの動きだったと思われる。

自民支部にも巨額の徳洲会マネー
 徳田毅衆院議員にはもう一つ財布がある。同議員が支部長を務める「自由民主党鹿児島県第二選挙区支部」だ。こちらにも、巨額の徳洲会マネーが注ぎ込まれている。

 平成23年には、徳田一族を中心にした個人献金が3,200万円。うち徳洲会副理事長で虎雄氏の夫人である秀子氏が2,000万円を寄附、虎雄理事長の娘が代表を務める㈱徳洲会と㈱光徳がそれぞれ750万円の企業献金を行っていた。

 政治資金パーティーが開催されなかった平成22年は、とりわけ同支部への献金が集中している。秀子氏が2,000万円、虎雄氏が1,000万円をそれぞれ寄附しているほか、一族だけで約5,000万円の個人献金が行なわれていた。
 企業献金もけた外れだ。グループ企業8社が、それぞれ750万円で計6,000万円、出入り業者分を含め計6,568万1,602円が同支部に入っていた。
 巨額の政治資金がどう使われたのかについては、今年秋の収支報告書公開を待って、続報を配信する予定である。

三つ目の財布
 東京地検特捜部が捜査中の徳洲会の選挙違反事件は、グループ内から選抜された運動員を買収していたというもの。その資金は徳洲会内部から出されていたとされる。
つまり、徳田陣営の選挙運動費用収支報告書には記載がないということだ。
 さらに、徳洲会関係者によれば、「徳田毅政経研究会」及び「自由民主党鹿児島県第二選挙区支部」の平成24年分の収支には、グループ内職員の人件費は計上されていなかったという。
 一連の事実は、徳田議員のふたつの関連政治団体とは別に、「徳洲会」本体が三つ目の財布として機能していたことを示唆している。

 徳洲会は特定医療法人の認定を受けている。特定医療法人とは、《租税特別措置法に基づく財団又は持分の定めのない社団の医療法人であって、その事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき国税庁長官の承認を受けたものである》(厚生労働省HPより)。このため、特定医療法人として承認された場合は、法人税において19%(通常は 25.5%)の軽減税率が適用される。

 徳洲会は、特定医療法人の特権を利用して納税額を押さえる一方、儲かった金を一族で分配し事業を拡大、さらに得た収益を個人献金や企業献金などの形で、政治につぎ込んできた。年中無休、贈り物は受け取らないという創業者徳田虎雄氏の理念には共感できる。しかし、派閥の集金力を超える徳洲会の力の源泉は「医療」。国会の議席を得るため、それを踏み台に使っている実態は、決して許されることではあるまい。

注目される鹿児島県知事との関係
 9月30日、鹿児島県内の市民団体が、伊藤祐一郎鹿児島県知事に対するリコール(解職請求)に向けて、県選管に署名活動の開始手続きを行った。
 知事は、初当選した平成16年の知事選で徳洲会グループの厚い支援を受けていたことが分かっていたが、新たにこの時の選挙で、徳洲会所有のセスナ機を使い離島における選挙運動を行っていたことが判明した。知事選で、捜査対象となっている事案と同様の動きはなかったのか―この点も解明されるべきだろう。

<鹿児島取材班>



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