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福岡市と保育協会 共謀し保育園移転計画破たんを隠蔽
仕切りは天下り市OB

2013年11月22日 09:20

 福岡市が進める認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転をめぐり、市と運営法人及びその上部団体である「一般社団法人福岡市保育協会」(以下『保育協会』)が、共謀して移転事業破たんの事実を隠蔽していたことが明らかとなった。
 HUNTERが入手した中央保育園新築工事の関係者会議議事録によれば、先月31日に市職員を交えて開かれた定例会議で、マスコミや保護者の問い合わせに対し「契約工期にて完成を目指す」と話すよう、会議出席者間で申し合わせていた。計画破たんの事実をマスコミや在園児保護者に漏らさぬよう、隠蔽を図っていた証拠。移転予定地取得や新築工事などで13億円近い税金が投入される事業において、市民が欺かれた形だ。
(写真は、中央保育園の移転工事現場)

隠蔽の証拠
 移転計画破たんについては先月、HUNTERの取材で、市が約9億円で購入した移転予定地に整備予定のふたつの保育園のうち、片方の建設が4月の開園に間に合わず、数ヶ月遅れる見込みであることが判明。これにともなう工事用スペース確保のため、「園庭」がほぼなくなり、最大の問題点とされていた“緊急時避難”の集合場所や避難路確保が困難となることも分かった。この取材結果については、同月31日に詳しく報じていた 。(参照記事⇒「計画破たん!暗礁に乗り上げた福岡市の保育園移転」)

 追跡取材を続けていたHUNTERが独自に入手したのは、中央保育園移転事業に携わる関係者が、週一回のペースで開いている「定例会」の議事録など複数の文書。10月31日の会議の議事録には、こう書かれていた。

マスコミ・保護者等から問い合わせがあった場合は、契約工期にて完成を目指す旨で対応してほしい
(下の文書、赤い☆参照。赤・青のアンダーライン及び矢印等はHUNTER編集部)
 文書8.JPG

 この日はHUNTERが計画破たんを報じており、議事録にも「10月31日付けのHUNTERの記事に工期変更の詳細記事が掲載されている」とある。この記事の配信を受けてのマスコミや保護者の問い合わせには、あくまでも「契約工期で完成を目指す」と答えて事実関係を隠蔽し、騒ぎの拡大を阻む狙いだったと見られる。

 隠蔽を確かなものにするためか、この日の会議でいったん検討した計画変更を周知する資料の配布を、最終的には見送ることも決めていた(前掲の文書、青いアンダーラインと矢印で示した記述)。

天下り市OBが会議の仕切り 
 問題は、会議の仕切りをやっている人物。中央保育園の運営法人である「社会福祉法人福岡市保育教会」の理事名簿にはない名前だ。確認したところ、該当者は市内の認可保育所の代表の集まりである「一般社団法人福岡市保育協会」の事務局長。昨年3月までは市の部長で、4月から同協会に天下りしていた

 「社会福祉法人福岡市保育協会」は社団である保育協会の傘下にあるため、名称が同じになっている。社福側の理事が協会メンバーの中から選任されるのが慣例だ。しかし、法律上は明らかに別法人。それぞれの法人の業務の内容は、まったく違うものだ。だが、議事録の記述からは、なぜか協会の事務局長が「施主」側として会議を仕切っていることがうかがえる。法的にも、組織論的にも権限があるとは思えない。会議の場に協会の事務局長が参加しているのもおかしい。

 事務局長は市職員時代、農林水産、環境といった部局の仕事に就いており、最後は区の部長。保育関係の業務とは縁が薄かったことが分かっており、保育の素人と言っても過言ではない。そうした人物が中央保育園の移転事業にからんでいるのは、市幹部OBの経歴にモノをいわせ、全体をコントロールさせるためとしか思えない。福岡市、保育協会、その傘下の保育園が、共謀して市民を欺いた構図であることは間違いあるまい。

事業止め検証を!
 災害時の非難計画が「園庭」の消滅で成り立たないことは、「安全」に対する万全の備えを強調してきた市の主張を、根底から覆す最悪の事態だ。事業が子育て支援策の一環である以上、主役は「こども」のはずだが、市や保育園側には「こどもの安全」を最優先にする姿勢が欠如している。移転計画が破たんしていることを隠蔽したのは、こどものためではなく、市や運営法人の対面を繕うため。突き詰めれば、ムダな土地を買って市に損害を与えた高島宗一郎市長の犯罪行為を隠すためともとれる。

 保育園の移転用地取得には9億円の税金が使われている上、新築工事には約3億5,000万円の補助金が支給される予定で、嘘やごまかしが通用する事業ではない。市を含む工事関係者がその真相を隠したことは、在園児保護者や入園希望者、さらには市民に対する背信行為であり、このまま事業を継続することは不適当と言える。いったん事業を中止し、移転計画について、スタート時点からの再検証をすべきだろう。

とぼける市保育課
 会議録の存在を示した上で、事業を所管する市こども未来局保育課に話を聞いたが、議事録の存在さえ認めようとしていない。会議に参加した職員はだんまりを決め込み、事業破たんの事実については「そうした可能性があるだけ」と課長がシラをきる。

 改めて議事録保有の有無を確認したが、会議に出席した職員を横に置きながら、課長は文書があるのかないのか確認しようとしない。「文書はあるのか」と聞けば済むことだが、記者には「後で調べて回答する」の一点張りだ。やむなく、中央保育園での会議に出席した財政局施設建設課の職員を訪ね議事録を提示、議事録を持っているかどうか聞いたところ、あっさりと「毎回の会議ごとにもらってますから」と答えた。この違いは何を意味しているのか・・・・・。

破たん示す新たな文書の存在
 保育課の隠蔽姿勢は、もはや病的。子どもの保育を司る部署としては不適当だろう。ただ、こうした歪んだ行政を招いた原因は、中央保育園が併設されている「市立中央児童会館」に、何の役にも立たない「商業施設」を建設しようと言い出した高島市長の愚かな市政運営の手法にある。その結果、本来必要のない土地に9億円の税金を投じ、子どもの安全を脅かす計画がゴリ押しされたのである。

 重ねて述べるが、中央保育園の移転事業計画は、間違いなく破たんしている。そして、議事録とは別にHUNTERが入手したある文書が、隠蔽された事業の実態を如実に示したものであることが分かってきた。詳細は次週、文書の現物とともにつまびらかにする。



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