「公益社団法人 鹿児島県労働基準協会」(諏訪健筰会長)が実施したガス溶接作業者の国家資格試験で答案用紙が改ざんされていた問題を巡り、会長を含む一部の協会幹部が、不正の事実を隠蔽する方針を決めていたことが分かった。複数の現役職員や幹部OBが、「隠蔽は会長の指示」と断言している。
協会関係者には箝口令が敷かれ、答案用紙の改ざんを行った職員やその上司には、出勤停止1月など甘い処分を下していた。口をつぐむ見返りに、処分を軽く済ませた疑いがある。
■元幹部ら―「隠蔽は会長の指示」
元協会幹部など複数の関係者によると、隠蔽を決めたのは当時の常務理事や事務局長ら6名が参加した不正発覚後の緊急対策会議。不正発覚直後の平成25年9月4日に開かれ、会議をリードした常務理事が、“会長の意向”として所管庁である鹿児島労働局に報告しないことを宣言したという。常務理事は、「労働局で問題になれば、私(会長)が話をつけにいく」という会長の言葉も紹介。参加した一部の幹部から「労働局に報告すべき」という意見も出たが、結局、外部に漏らさないことで会議を集約していた。別の現役職員は「隠蔽は会長の指示」と断言している。
■沈黙の見返りに甘い処分
緊急会議では関係職員の処分案も検討。協会内部に設置された懲罰審査委員会の審議前に、出勤停止や減給などの処分内容も話し合っていた。箝口令を敷いたことで、処分を軽くせざるを得なかったらしく、7日後の懲戒決済では極めて甘い処分を下していた。下が、HUNTERが独自に入手した決済文書である(赤い囲みはHUNTER編集部)。
協会関係者によれば、当初の処分案は、改ざんを行った職員に対し出勤停止3ヶ月、その上司に同1ヶ月などそれなりに厳しい内容だったといい、1週間後に出てきた実際の処分を見て、あまりの違いに驚いたと話している。下の表、左が緊急会議で検討された処分案、左が実際の処分内容である。
協会側は、平成25年に答案用紙の改ざんが分かった10人を合格させなかったことを「水際で防いだ」と誇らしげに語っているが、実態はただの隠蔽。「加世田支部の不正は、25年以前にも行われていた」との証言もあり、公表することで事態が拡大することを恐れた協会幹部が、お手盛り処分でお茶を濁した可能性が否定できない。沈黙の見返りが“関係者の甘い処分”だったとすれば、この組織自体が腐りきっていることになる。
■腐敗の実態―新証言続々
ある協会OBは、次のように話している。
「いまの会長は、平成25年の6月に就任し、同じ時期に現在の専務理事を“事務局長”として連れてきた。答案用紙の改ざんは、その3か月後に起きた事件だ。就任早々の会長としては、事が大きくなることを恐れたのだろう。当時の協会幹部から、隠蔽は会長の指示だったと聞いている。少なくとも、当時の常務理事が、協会の一部幹部に対しそう説明したのは事実だ。改ざんが発覚した時点で、理事会を開いて対応を協議すべきだったが、それもやっていない。事実上は会長、常務理事、事務局長、研修部長(役職はすべて当時)の4人で隠蔽することを決め、関係者の口を塞いだ。そもそも、改ざんを行った職員はクビにして当然。それが協会に残ったのは、当人が外部でしゃべることを防ぐためだった。この事件を契機に、協会の体質は歪んでいった」
HUNTERは、不正の実態を示す文書を新たに入手。協会内部の腐敗体質についても新証言を得ており、次の配信記事から詳しく報じていく。