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有明海覆砂工事で環境悪化
稚魚や稚貝、死滅のケースが判明

2013年5月15日 07:55

 福岡県が、柳川市沖など有明海の水質を改善する目的で実施している、海中に砂を撒く―いわゆる覆砂(ふくさ)事業が、目的からかけ離れたマイナスの影響を及ぼしていたことが明らかとなった
 14日までのHUNTERの取材で、同市大和町沖で数年前に行われた覆砂工事の結果、アナゴや蛸などの稚魚が死んだほか、成長前の貝類にも悪影響を及ぼしていたことが判明。同海域の海底の砂を採取したところ、一部ヘドロ状になっていることも分かった。
 明るみに出た工事の不正に環境悪化・・・・。年間20億円もの税金がつぎ込まれてきた同事業は誰のためのものか、厳しく問われるべき事態だ。
(写真は、数年目に覆砂が実施された柳川市大和町沖)

海底の状態悪化―覆砂の影響示唆する声も
 HUNTER取材班が、海底の状態を確認したのは柳川市大和町沖。船舶所有者に協力を求め、海底の砂を採取したところ、上がってきたのが下の写真のようなヘドロ状の物質。何度試みても同じ結果。船上では、どぶ川と同じような異臭が鼻をついた。

鹿児島 190.jpg

 同海域で漁を営んできた漁業者に話を聞いたところ、海砂が撒かれた後、年々海底の状況が悪化し、漁船を止めただけで悪臭に悩まされるようになったという。
 さらにこの年、覆砂によってアナゴや蛸の稚魚が死滅。豊富だった貝類も獲れなくなったと断言している。

膨らむ覆砂工事への疑問
 下は、覆砂工事を施工するにあたって県が定めた特記仕様書だ(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。シルト分は10%以下(概ね5%以下)、中央粒径値2以下(0.25mm以上)と明記してある。しかし、大和町沖で採取した海底の物質は、シルト分ばかり、「中央粒径値2以下(0.25mm以上)」の砂など皆無だった。数年で砂が流されたということか、あるいはもともと規格通りの海砂が撒かれなかったかのどちらかだが、底質が悪化する原因を覆砂の他に見出すには至っていない。

鹿児島 196.jpg

関係者から厳しい批判
 周辺海域では、数年毎に覆砂が行われており、今年、再び近くの海域で工事が実施される予定で、一部の漁業者からは「実力行使してでも工事を止める」との声が上がっている。
「覆砂は二度とごめんだ。頼むから止めてくれと言ってきたが、県は聞く耳持たずで工事を強行してきた。春先は稚魚や稚貝にとって大切な時期。せっかく生まれたものの上に大量の海砂を投入すれば、死んでしまうのはあたり前だろう。子どもでも分かる理屈だ。おまけに海底はヘドロ状態。規格外の砂を入れた結果としか思えない。県は一部の利権のために覆砂を続けているだけだ。こうなったら実力で工事を阻止する」(柳川市在住・30代漁業者)。

 平成17年以来、年間約20億円の税金を投入して実施されてきた覆砂事業。「水域環境保全創造工事」などと格調高い事業名とは裏腹に、海の生き物を殺し、環境悪化を招いていたことになる。

 有明海沿岸の他の漁業者や工事関係者などからも、覆砂事業が必ずしも海域の環境を改善しているわけではないとの証言がある。
「覆砂で得しているのは海苔を育てている人たちだけじゃないか。砂を撒けば、一時的に海底が盛り上がり、海苔の網を固定する支柱を突き刺すのが楽になるんだ。水質や低質がよくなるとは思えない。第一、撒いてる海砂の質が、必ずしも良いとは限らない。HUNTERで書いてた平成22年の工事の不正なんて氷山の一角よ。撒き砂の量も不正、砂の産地も不正、なんでもありの工事なんだから。県は知ってて黙認。偉い先生が覆砂の後ろ盾なんだから」(元工事関係者)。

問われる県の姿勢
 元工事関係者が言うHUNTERの記事とは、4月24日に配信した「福岡県がひた隠す覆砂事業不正の実態― 有明海再生事業の闇(2) ―」)。県は昨年3月、不正行為が確認された工事の施工業者に対し“厳重注意”を行なっていたが、HUNTERが福岡県への情報公開請求で入手した資料によって、その対象工事が9件で、12社が関与していたことが明らかとなっている。業界ぐるみの不正と言っても過言ではあるまい。
 大半のケースで、施工状況を報告するための書類を偽造しており、計画通りの海砂搬入が疑われる事態。しかし、県は形ばかりの調査に終始し正式な“処分”を回避、不正事案の発生について公表もしていなかった。

 県の不可解な姿勢はこれだけではない。厳重注意の対象となった工事に関し、柳川市の魚業者らが県の監査委員に提出した監査請求は、支出行為があった日から1年が経過しているため、地方自治法の定めた監査要件を満たさないとして門前払いされている。

 地方自治法は、住民監査請求について定めた第242条の中で、『請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない』としているが、そのあとに『ただし、正当な理由があるときは、この限りでない』として例外規定を設けている。工事の不正、底質の悪化―これだけ材料が揃えば「正当な理由がある」、と判断するのが普通だ。問われているのは県の姿勢である。



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