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福岡県がひた隠す覆砂事業不正の実態
― 有明海再生事業の闇(2) ―

2013年4月24日 09:35

 福岡県が、柳川市沖など有明海の水質を改善する目的で実施している、海中に砂を撒く―いわゆる覆砂(ふくさ)と呼ばれる事業をめぐって、数々の不正行為が行われていた。
 県は昨年3月、不正行為が確認された工事の施工業者に対し“厳重注意”を行なっていたが、HUNTERが福岡県への情報公開請求で入手した資料によって、その対象工事が9件で、12社が関与していたことが明らかとなった。
 大半のケースで、施工状況を報告するための書類を偽造しており、計画通りの海砂搬入が疑われる事態。しかし県は、形ばかりの調査に終始し正式な“処分”を回避、不正事案の発生について公表もしていなかった。
(写真は、施工記録に添付された作業船)

9件の工事で不正 12社に厳重注意
 この問題は、FBS福岡放送の報道で、有明海に撒かれた海砂の量と長崎県内で採取・搬出されたはずの砂の量が合致していないことや、工事の施工記録に添付された写真にあった海砂運搬船が、じつは当日長崎県内に停泊していたという事実が暴かれたことから表面化した。

 報道を受けた県が関係業者に対し調査を行った結果、9件の工事で不正が存在することが発覚し、受注企業12社を“厳重注意”としていた。「厳重注意」は処分ではなく、「措置」と呼ばれる形だけのもの。不正の内容は公表されることもなく、一部の関係者だけが知る事実となっていた。

 県が厳重注意を行った企業と不正が確認された工事名、当該工事の最終契約金額は次の通りだ。

① 新開建設㈱
  【工事名】平成22年度 水域環境保全創造工事 大和東部4工区
  【最終契約額】63,331,800円

② 若松港湾工業㈱・㈱池間組(JV) 
  【工事名】平成22年度 福岡有明海地区水域環境保全創造工事 大牟田中部漁場第2工区    
  【最終契約額】165,861,150円

③ ㈱池間組・若松港湾工業㈱(JV)
  【工事名】平成23年度 福岡有明海地区覆砂工事(31第1工区)
  【最終契約額】162,063,300円

④ 博多湾環境整備㈱・宮川建設㈱(JV)
  【工事名】平成22年度 福岡有明海地区水域環境保全創造工事 14(2)第3工区
  【最終契約額】190,023,750円

⑤ 青州建設㈱・㈱黒瀬建設(JV)
  【工事名】平成22年度 有明海地区水域環境保全創造工事 14(2)第4工区
  【最終契約額】188,845,650円

⑥ ㈱田中俊工務店
  【工事名】平成22年度 福岡有明海地区水域環境保全創造工事 18(1)第2工区
  【最終契約額】98,833,350円

⑦ ㈱原田建設
  【工事名】平成23年度 覆砂工事(31第4工区)
  【最終契約額】102,724,650円

⑧ ㈱三工建設
  【工事名】平成23年度 福岡有明地区 覆砂工事(31第5工区)
  【最終契約額】73,301,550円

⑨ 松鶴建設㈱・㈱河建(JV)
  【工事名】平成23年度 覆砂工事(14(2)第2工区)
  【最終契約額】157,923,150円

業者側の「言い訳」
偽造されたと見られる施工記録の数々 不正の手口はいずれも同様。県に報告するための工事の施工記録を、実際の工事では使用されていない船舶の写真を添付する形で偽造、工事計画を提出した県や海上保安庁を欺いていた。(右は、偽造されたと見られる施工記録の数々)

 それぞれの工事を施工した業者が、県に提出した不正についての報告書には、次のような「言い訳」や偽造手法が記されている。上記の番号に従ってその概要をまとめた。

① ⇒海上保安庁に届け出ていない船舶を使用。
    発覚を恐れ別の写真を使って工事記録を偽造。

② ⇒カメラを海中に落としたため、別の写真を使って工事記録を偽造。

③ ⇒カメラ不調で写真データを紛失したため、別の写真を使って工事記録を偽造。

④ ⇒実際に使用すべきものとは違う海砂を、これまた計画とは違う船を使って運搬。
    発覚を恐れ別の船舶の写真を使って工事記録を偽造。

⑤ ⇒デジタルカメラの日付設定を間違えて写真が撮れなかったため、翌日の工事写真を使用する形で
    工事記録を偽造。

⑥ ⇒工期の遅れを回避するため、海上保安庁に届け出ていない船舶を使用し海砂を搬入。
    発覚を隠すため別の船舶の写真を使って工事記録を偽造。

⑦ ⇒海砂搬入船の手配がつかず、作業船を使用。発覚を恐れ別の船舶の写真を使って工事記録を偽造。

⑧ ⇒工期の遅れを回避するため、異なる船舶を使用。工事計画にあった平戸で採取された海砂ではなく、
    上五島の海砂を搬入したため、別の船舶の写真を使って工事記録を偽造。

⑨ ⇒配船に手違いがあったため届出をしていない船舶を使用。
    発覚を恐れ別の船舶の写真を使って工事記録を偽造。

 工期の遅れを回避するという理由はまだしも、「カメラを落とした」、「カメラが不調」、「カメラの日付設定を間違えた」などという子どもじみた言い訳が通用するとは思えない。とくに②および③の工事を施工した若松港湾工業と池間組については、いずれもカメラのデータ紛失を工事記録偽造の理由としてあげており、不自然極まりない状況だ。

隠蔽
 一連の不正について県は、関係者への聞き取りや、残された工事関係書類の調査を実施、その結果、元請12社を極めて軽い対応である“厳重注意”としていた。

 厳重注意に先立って県内部で作成された「有明海覆砂工事における海砂搬入実績報告調査の結果報告について」には、海砂搬出側の長崎県の資料との照合結果、業者へのヒアリング結果、海砂が集積されているストックヤードへの調査結果が記されたあと、県の業者への対応を決定付けた弁護士の意見が述べられている。

《明確な証拠がなく、動機もしっくりとこないが、(契約書、仕様書に搬入方法について縛りがない事等。)竣工検査を通っていることや証明資料等から総合的に判断して現状では、業者の言分通り別の船で海砂の搬入があったと判断するのが適当である。明確に不備を証明する新たな事実が出てこない限り、瑕疵を問うことは難しい。報告書を偽造して虚偽の報告を行ったことについて減点などの処理を行うことが妥当である》。

 “証拠不十分”ということらしいが、これはおかしい。そもそも、弁護士が《通っている》という《竣工検査》自体が、業者側に欺かれた結果なのだ。また、不正が発覚した以上、関係者が口裏を合わせていると考えるのが普通で、提示された書類や業者の言い分を頭から信用するのは早計だろう。それでも詳細な調査を実施せず、あえて重い「処分」を見送ったということだ。意図的に軽い処置に止めようとした県の思惑が透けて見える結果であり、公表しなったことで事件そのものを隠蔽したと言われてもおかしくはあるまい。

 問われていたのは、本当に工事計画通りの海砂が有明海に撒かれたのかという点なのだが、その真相はいずれ明らかになる。



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